健康・ヘルスケア
2020.4.22

アレルギー症状がつらい…完治または軽減させる方法はある?【女医に訊く#104】

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アレルギー性疾患には、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギーなどさまざまな種類があり、我が国全人口の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹患していると言われています(平成23年リウマチ・アレルギー対策委員会報告書より)。これらのアレルギー性疾患を完治または軽減させる方法はあるのでしょうか? アレルギー専門医の岸本久美子先生に教えていただきました。

幼少期のケア次第でアレルギーは軽減する!?

「アレルギー性疾患を有する人のうち、3分の1ぐらいはそのまま継続して、3分の1ぐらいは軽快して、3分の1ぐらいは悪くなると思います」と語るのは、アレルギー専門医の岸本久美子先生。その分かれ道は、環境や遺伝要因のほか、幼い頃の対処にあると言います。

「アレルギー性疾患が見つかったら、そのケアを早めにしてあげることで、将来悪化する確率が少し減るのではないかと言われているのです。例えば、アトピー性皮膚炎なら保湿をしっかりして炎症を放っておかないことが大切ですし、喘息ならお薬を早めに始めて充分な期間、治療してあげる必要があります」(岸本先生)

中高年になると、稀に「花粉症がなくなった」という人もいますが、これは加齢による体質の変化が考えられるそう。

「年齢を重ねると体質が変化します。花粉へのアレルギー反応の強さの変化はもちろんあり得ますが、お薬の効き方、生活環境の変化などもありますので、ライフステージによって治療の調整が必要ですね」(岸本先生)

「舌下免疫療法」って何? 今すぐ始められる?

「舌下免疫療法」はアレルギーの原因となる物質であるアレルゲンを微量ずつ長期間にわたり摂取し、体を慣らしていくアレルギー免疫療法(減感作療法)のひとつ。スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と確定診断された人が治療を受けることができます。

1日1回、錠剤の治療薬を舌の下に置き、1分間キープしたあと、飲み込むだけ。少量の治療薬から服用をはじめ、その後決められた一定量を数年間にわたり継続して服用します。通院は月1回。アレルギーが出るとわかっているものを飲むため、初めての服用は医療機関で医師の監督のもと行い、2日目からは自宅で服用します。

ダニアレルギー性鼻炎の場合、治療はいつでもスタートできますが、スギ花粉症は別。スギ花粉が飛んでいる時期は治療を新たに開始することはできないため、スギ花粉が飛んでいない6月から11月末までの間に治療を開始します。

「お勧めは花粉が飛び終わった6月頃。治療期間は3~5年ですが、効いてくる時期は人によって異なりますね。その次のシーズンから、『楽になったよ』とか『薬減らせたよ』と言う人も結構いらっしゃいます」(岸本先生)

「舌下免疫療法」で花粉症は完治するの?

舌下免疫療法はアレルギーの原因物質に対する免疫反応そのものを改善する治療法。くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった鼻炎の症状だけではなく、眼の症状や皮膚のかゆみにも効果があると言われています。

「治療を受けた患者さんのうち、8割ぐらいの人が症状が軽減すると言われています。ただし、同時に複数のアレルギーをお持ちの場合、舌下免疫療法によって、そのほかの花粉に酷く反応してしまう人も多くいます。スギやダニ以外にも強いアレルギーをお持ちの方は、舌下免疫療法の適応かどうか慎重に主治医と相談する必要があります」(岸本先生)

次世代のアレルギー治療薬「ゾレア」とは?

最近は、アレルギーのときに出てくる抗体を叩くことでアレルギー反応=炎症を、その元から抑える「ゾレア」という新薬も登場。既存治療によってコントロールできない気管支喘息・季節性アレルギー性鼻炎・特発性の慢性蕁麻疹の重症患者の希望の光となっているそう。

「ゾレアは通常、2週間または4週間ごとに医療機関を受診して、皮下に注射していただくお薬です。ただし、この薬はみなさんに適用になるわけではありません。どうしてもコントロールがつかない重症のアレルギー患者さんで他に有効な手段がないと考えられる患者さんのみ適応になります。また採血でIgEという数値が適応基準範囲内ではないと適応外になります。それだけ特別な治療ですので、治療を受けられる医療機関も限られているのが現状です」(岸本先生)

ゾレアによる治療を受けるには、さまざまな条件を満たしている必要がありますし、費用も高額です。気になる方は、主治医に相談してみましょう。

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アレルギー専門医
岸本 久美子先生
ハピコワクリニック五反田院長。東邦大学医療センター大橋病院呼吸器内科非常勤医師。日本呼吸器学会専門医。日本アレルギー学会専門医。東邦大学医学部卒業後、東邦大学医療センター大橋病院等を経て、2018年、開業。風邪や生活習慣病のコントロールなど一般内科的な診療はもちろん、アレルギー疾患や喘息の専門的な治療を行っている。■ハピコワクリニック五反田

文/清瀧流美 撮影/黒石あみ(小学館)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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