【専門家に聞いた】「情緒不安定」の原因は?「不安」や「ストレス」を軽減する対策法
「情緒不安定」とは精神的に不安定で、すぐに泣いてしまったり怒ってしまったりと、上手く感情をコントロールできない状況のこと。「なんだかイライラする」「気持ちが落ち込む」というときは、生活習慣を見直して、感じている「不安」や「ストレス」を軽減してみましょう。2週間以上続くようなら、専門機関へ相談してみてくださいね。
「不安」を感じやすくなる4つの原因
【1】運動不足
運動不足に陥ると、セロトニンという脳内物質が生成できなくなり、自律神経のバランスが乱れて不安を感じやすくなるため注意が必要です。
「東京で通勤していると、1日8,000~10,000歩くらいは歩きますが、コロナ禍の今は3,000歩以下の人が3割。ひどい場合だと1,000歩いかない状態で、運動不足が危機的な状態なのです」(松島先生)
【2】PMS(月経前症候群)
生理の前に起こるイライラ、落ち込み、むくみ、体重増加などは 「PMS(月経前症候群)」 の典型
「生理の3~10日前に決まってメンタルや体の調子が悪くなる、いわゆる PMS の症状や程度には、個人差があります。いずれにしても、黄体期に起こる プロゲステロンの急激な変動 が影響していると考えられます。」(泉先生)
【3】デジタル機器の長時間使用
デジタル機器を長時間使用することで、睡眠の質が悪くなったり偏頭痛が悪化したりなど体への影響や、不安になりやすいなど心に対しても影響もあります。
【4】睡眠不足
睡眠不足が続くと、行動や感情をコントロールする脳の最前部“前頭前野”の働きが低下。普段は気にならないことにイライラしたり、必要以上に落ち込むことが増えてしまいます。
脳は眠ることでエネルギーチャージをするので、睡眠不足が続くと脳の働きが衰え、ネガティブ感情が優位に。楽しい出来事やいい出会いのチャンスを自ら遠ざけてしまう結果に!
精神科医
織戸 宜子先生
精神科専門医、精神保健指定医。兵庫医大卒業後、神戸大学病院にて研修。内科診療を行いつつ、パルモア病院・神戸海星病院にて女性心療内科外来を立ち上げ、女性のメンタルヘルスに長年携わる。その後、東京慈恵会医大、総武病院を経て、2018年5月より代々木の森診療所で女性メンタルヘルス専門外来を担当。
「睡眠の目的は、体と脳を休息させること。睡眠中は、眠りの浅いレム睡眠と眠りの深いノンレム睡眠を繰り返していて、レム睡眠は体を休ませ、ノンレム睡眠は脳を休ませる働きがあります。睡眠がしっかりとれないと心身に疲労が溜まり、ストレスにも弱くなります。必要な睡眠時間には個人差がありますが、十分な睡眠がとれないと、うつ病や糖尿病、心疾患などさまざまな病気を引き起こす原因にもなるので注意しましょう」(織戸先生)
「不安やストレス」を軽減する6つの対策法
【1】心も体もほぐすケア
生理前の脚のむくみは、マッサージや足浴などで血液やリンパの流れを促して緩和。好みの香りで部屋を満たすなど、リラックスできる空間作りも心掛けて。
【2】デジタルデトックス
デジタルデトックスとは、デジタルデバイスを一定期間手放し、心身の疲労やストレスを「解毒する」というアメリカ発祥の取り組み。
「とはいえ、現代社会ではネットやスマホは不可欠ですから、社会生活や体調に問題ない範囲で使うようにすればいいのではないでしょうか? ゼロにするわけではなく、無理のない範囲で徐々に行います。
デジタルデトックスで大切なのは継続。すぐに挫折しそうなやり方はNG!無理なく生活に取り入れましょう」(松島先生)
- SNSやメールの受信通知をOFF
- スマホアプリのタイマー機能で使用時間を制限
- 使っていないアプリを削除
- 食事中など人と一緒にいるときは見ない
【3】誰かに話を聞いてもらう
「電話でも手紙でもよく、誰かと『繋がっている』ということが重要なんです。特に女性は誰かに話を聞いてもらうことがストレスを溜めないポイントなので、社会的距離はとるけど、心の距離はとらないようにしましょう」(織戸先生・以下「」内同)
【4】楽しいことをして気分を変える
不安やストレスを感じた時は、楽しいことをして気分を変えましょう。楽しいことをするのが好きな人は、不安やストレスを乗り越えやすい、と織戸先生も話します。
【5】ぐっすり眠る
「睡眠の目的は、体と脳を休息させること。睡眠中は、眠りの浅いレム睡眠と眠りの深いノンレム睡眠を繰り返していて、レム睡眠は体を休ませ、ノンレム睡眠は脳を休ませる働きがあります。睡眠がしっかりとれないと心身に疲労が溜まり、ストレスにも弱くなります。必要な睡眠時間には個人差がありますが、十分な睡眠がとれないと、うつ病や糖尿病、心疾患などさまざまな病気を引き起こす原因にもなるので注意しましょう」
【6】専門機関に相談
「憂うつな気分や何をやっても楽しくないという症状が2週間以上続く場合は、専門医の診察を受けてみましょう。他にも疲れやすい、気力や意欲がわかない、眠れない、食欲がない、肩こり、頭痛、めまいなどの身体症状が続くこともうつのサインかもしれません。女性はストレスで便秘になる人が多いのですが、内科や消化器科を受診しても治らないというケースはストレスが原因ということも多いんですよ」
あなたは大丈夫?「情緒不安定」の状態をチェック!
ストレスを感じやすいのはどんなタイプ?
<几帳面・完璧主義で頑張りすぎるタイプ>
「このタイプは、責任感が強く過剰に頑張りすぎてしまいます。仕事ができるので、次々に仕事を任されオーバーワークになりがちで、オン/オフの切り替えが難しくなってしまう人も多いですね」
<挫折に弱く精神的に未熟なタイプ>
「親など保護者が過干渉であることが多いのがこのタイプ。子供の頃から周囲が先回りして困難を回避してくれるので、困難に打ち勝つ力が弱くなってしまいます。挫折や失敗がなかった自己愛型と考えられます」
<人を頼らず自己解決をのぞむタイプ>
「もともと男性に多いのですが、最近は女性にも増えています。自分の体力や気力なら必ずやりこなせると思って、他人に相談もしないので、どんどんオーバーワークになってしまうタイプです」
<周囲に気を遣いすぎる過剰適応タイプ>
「デリケートで、くよくよ考えるのが特徴です。相手に合わせすぎたり、周りを過剰に心配してなかなか心が休まりません」
自分の性格を急に変えることはできませんが、自分がストレスを感じやすいタイプかどうかを知っておくだけでも、早めのストレスケアやうつ症状の予防に役立ちます。
「正常な不安」と「病的不安」は、どう違う?
「不安には『正常な不安』と『病的不安』の2つがあります。
例えば、大事な打ち合わせの時や趣味の発表会の時に「失敗したらどうしよう」と不安を感じても、終わってしまえば不安も自然に消えてしまいます。
・不安になる理由が明確
・他人がその不安に共感できる
・それほど長引かない、不安原因がなくなったり対処できたり、慣れてきたら消失する
・日常生活にそれほど差し障りがない
という不安は、『正常な不安』なのだそう。
『病的不安』は、理由がはっきりせず、他人にも理解されづらく、日常生活に妨げが出るものですが、自分の抱えている不安がどちらなのか知ることも大切です。
不安はとても不愉快なものですが、『正常な不安』は、意味のある次の行動を考えるのに役立ちます。しかし『正常な不安』も長引けばうつ病等の引き金にもなりますので、専門家の判断も場合によっては必要です」
2週間以上続くなら「うつ病」の可能性も
- 悲しい・憂うつな気分
- 興味が沸かない・好きなことが楽しめなくなった
- 疲れやすい
- 気力・意欲の低下・集中力の低下を自覚(おっくう)
- 睡眠障害:寝つきが悪く朝早く目覚める・過眠
- 食欲がなくなる
- 人に会いたくなくなる
- 朝の方が夕方より体調・気分が悪い
- 心配事が頭から抜けず、考えが堂々めぐりする
- 失敗や悲しみからなかなか立ち直れない
- 自分を責め、自分は価値がないと思う
「こうした症状が2週間以上続くと、うつ病の可能性もあります。真面目で頑張る人ほど、体の声を聞くのが難しいのですが、いつもと違う心身のサインに早めに気づくことはとても大切です。ストレスを感じた時は仕事や生活を少しペースダウンして、積極的に休憩や睡眠をとりましょう。自分だけで抱え込まず、家族や周囲にも相談したり、環境を調節して自分に自信を持つようにすることも必要です」
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
池袋オリーブメンタルクリニック院長。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。日本医師会認定健康スポーツ医。1999年、聖マリアンナ医科大学卒業後、都立松沢病院精神科研修医、都立府中病院精神科、山角病院精神科、錦糸町クボタクリニックなどを経て現職に。産業医として都内の企業でも勤務している。