健康・ヘルスケア
2020.5.30

睡眠時間は長い方が免疫力が上がるってホント? 真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】

A:半分ホント

「確かに、睡眠不足は免疫ダウンの要因となります。ごく最近の研究で、睡眠不足が全身の遺伝子のはたらきに大きく影響することがわかりました。毎晩6時間以下の睡眠で1週間を過ごした場合、免疫力はもちろん、体内時計、炎症、新陳代謝、ストレス反応などに関係する711個もの遺伝子に影響が出るとの結果が。ですが、寝溜めをしたり、多く睡眠をとることを優先して生活リズムを崩すことは本末転倒。心がけてほしいのは、生活リズムを整えて、睡眠もできるだけ同じ時間に起きること。では、なぜ生活リズムを整えないといけないのか説明していきます」(根来秀行先生・以下「」内同)

 

免疫力のカギ「メラトニン」は時計遺伝子に連動する

「睡眠が免疫力に関わると言われているカギとなる“メラトニン”と呼ばれるホルモンは、時計遺伝子に連動します。以前、人間の1日の生体リズムは24時感11分で、朝日を浴びることによって11分の誤差に帳尻を合わせるようリセットされるとお話ししました(→朝食を抜くと太りやすいってホント? 真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】)。

このリセットは脳の松果体(しょうかたい)にシグナルを送り、睡眠を促すメラトニンの分泌をストップさせるというもの。実は、この時同時に約15時間後にメラトニンが増えるスイッチも同時に押されています。朝6時に起きて朝日を浴びた場合は、21時にはメラトニンが増えていくという仕組み。つまり、メラトニンが適切に働くためには、朝日をきちんと浴びることが必要不可欠です」

メラトニンは「病気を防ぐホルモン」

「メラトニンの主なはたらきは、睡眠の促進、抗酸化、免疫力強化の3つ。睡眠を促進する作用で、人間の体は眠りにつきますが、メラトニンはさらにその後もはたらきます。中でも最近注目されているのが、免疫力を強化するはたらきです。

免疫とは体の中の異物を見つけら攻撃する、言わば警備員のようなもの。さまざまな細胞が関わって異物を撃退していますが、ウイルスと戦うのはリンパ球。リンパ球は、骨髄で作られるNK細胞とB細胞、胸腺で作られるT細胞で編成されています。そして、このT細胞を作らせる力があると言われているのが、メラトニン。

メラトニンの分泌量が多ければ胸腺が十分に刺激されて、T細胞の数もアップ。ゆえに、免疫力が高まるという仕組み。このメラトニンは、眠っている間に分泌されるため、免疫力アップには睡眠が重要というわけです。ちなみに、胸腺は10代で最も大きくなり、加齢と共に小さくなっていきます

メラトニンの分泌には21時以降は「ブルーライト」をシャットアウト

「メラトニンの分泌量が少なくても、生活習慣で持っているポテンシャルを最大限に引き出すことができます。日中に働いている人をターゲットにした話になりますが、睡眠時間のほかに、睡眠の質を作用する夜の過ごし方も重要になってきます。理想は、21時までに夕食を済ませ、21時以降はブルーライトを遮断すること。

実は、人は自分の意思で眠ることはできません。眠る時は“眠るぞ”と念じて寝るのではなく、いつのまにか眠り落ちているものです。そして、スムーズに眠りに落ちるためにも必要なのが、夜の副交感神経優位のバランスを崩さないこと。そのためのひとつがブルーライトです。

メラトニンは光に反応しやすく、明るい光をキャッチすると、すぐに分泌が抑えられます。特に携帯やスマホ、パソコンの画面から出る目に見えない電磁波もメラトニンを壊してしまうと言われています。ブルーライトや電磁波の影響はまだまだ研究途上ですが、遅くても22時以降は遮断しておくことをおすすめします。薄明かりの照明は副交感神経を優位に保って、リラックス効果もあるので、夜になったら光を抑えめにしましょう」

23時までに寝て6時に起きるのが理想

「ブルーライトを遮断したら、22時頃から入浴を。41度以上のお湯は交感神経が優位になるので、ぬるめのお湯で入浴をしてから23時頃に布団に入るのがおすすめです。23時〜24時はリンパ球のはたらきも高まってきます。“リンパ球”は、副交感神経が優位の夜に、風邪やインフルエンザなどのウイルスやがん細胞と戦うために、より活性化します。24時前後に眠りに落ちると、午前1時〜2ぐらいが最も眠りが深い状態で、成長ホルモンの分泌も最も多いとされています。成長ホルモンは時計遺伝子には支配されておらず、寝入りばなの最も眠りが深いノンレム睡眠の時間帯に分泌されるメカニズム。メラトニンにも成長ホルモンを増やす効果があるので、まさにこの時間が美容のゴールデンタイム。

先ほどお伝えしたように、6時間以内の睡眠は免疫力にも影響を及ぼすので、7時間が理想と言えるでしょう。皆さん、それぞれの生活があると思うので、起きる時間に合わせて計算して、寝るベストな時間を見つけてみてください。ただし、気温や光、気圧の変動も影響するので、夜勤の方の体内時計や体の防御システムは、残念ながら通常の人に比べたらかなり低下するのをお忘れなく」

 

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医師・医学博士
根来秀行先生

ハーバード大学医学部客員教授、ソルボンヌ大学医学部客員教授、奈良県立医科大学医学部客員教授、杏林大学医学部客員教授、信州大学特任教授、事業構想大学院大学理事・教授。近著の『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』(集英社)ほか、ベストセラー多数

 

文/むらなかさちこ

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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