健康・ヘルスケア
2020.5.13

新型コロナウイルスなどの感染症から身を守るために、日常で気をつけたいことは?【女医に訊く#107】

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現在、猛威を振るう新型コロナウイルスをはじめとする感染症。感染予防のためには、正しい知識を持って臨むことが大切です。今回は、様々な感染症から身を守るために日常生活で気をつけるべきことを、公衆衛生専門医の伊藤明子先生に教えていただきました。

石けんの手洗いで接触感染を防ごう

前回の記事で伊藤先生も触れていましたが、感染症は人と接触しないことがいちばんの予防法。とはいえ、食料品の買い出しや、やむを得ない事情で外出する機会はどうしてもあります。そこで、大切なのが「手洗い」と伊藤先生は言います。

「外出で人と接触したり物に触れると、自分の手や粘膜に病原体が付くので、感染のリスクが高まります。自分が感染するだけでなく、他人に感染させますから、外出先ではつり革やエレベーターのボタン、ドアノブなど大勢の人が触っているところを触らざるをえない時は必要最小限にしましょう。そして、帰宅したら必ず石けんと水で20秒以上手洗いをすることが感染を抑えるいちばんの方法です。
うがいは、新型コロナが乾燥に強いか弱いかまだ解明されていませんが、一般にウイルスは乾いたところで活性化するので喉を潤すという目的、また病原体を洗い流す目的で私はおすすめしています」(伊藤先生)

マスクをすることに意味はあるの?

つばや咳、くしゃみだけでなく、普通に会話をしているだけでも目に見えない飛沫が1mも飛んでいるため、マスクをつけることも重要です。

「飛沫の中にウイルスが存在しているので、マスクをすることで一定の効果があると考えられています。一般の方が使うマスクではウイルスは防げないと言う意見もあります。確かにウイルスの大きさは不織布マスクの穴の500分の1ほどの大きさですが、ウイルスは大きさが5μ以上ある飛沫に付着して移動しているので、マスクによって人にうつさない効果は、ある一定程度はあると思います」(伊藤先生)

マスクをしていても鼻が出ている人を見かけることもありますが、マスクをつける時の注意点は?

「鼻と口をしっかり覆っていないと意味がありません。また、マスクの外側を無意識のうちに触る人が多いのですが、外側にはウイルスが付着しているので、その手で目や鼻を触ったりすると感染予防になりません。人間は1日に数千回も無意識に顔を触っているというデータがあります。鼻や口、目を触るとウイルスが粘膜に入って感染してしまうので、意識して顔を触らないようにしましょう」(伊藤先生)。

こまめに換気をする意味は?

新型コロナウイルスは空気感染しない、と現時点では言われていますが、空気感染をする病原体は感染力がとても高く、感染している人のそば1m以内を通るだけでうつります。空気感染をする代表的な感染症は結核や、はしかです。

「空間の中のウイルスや細菌などの病原体の密度・濃度が薄いほど感染リスクが下がるので、感染リスクを下げるには窓を開けて換気することが重要です。そのため電車や地下鉄などは注意が必要。不特定多数の人がいるところでは、窓や扉を開けっぱなしにしておく方がよいでしょう」(伊藤先生)

家の中のドアノブの消毒で注意すべき点は?

ドアノブなどよく触れる場所や物の消毒では、スプレー式の消毒を使うことが多いですが、布やキッチンペーパーにスプレーをしてから拭くのが正しい方法、と伊藤先生。直接スプレーすると、そこに付着していたウイルスなどが飛び散ってしまうのだそうです。

消毒用エタノールなどのアルコール類以外でも、物の消毒に活用できるのが塩素系消毒液(次亜塩素酸ナトリウム)。こちらも新型コロナウイルスの影響で品薄になってきていますが、使うときは少し注意が必要です。

「アルコール消毒だけでなく、次亜塩素酸ナトリウムも新型コロナウイルスは弱毒化できることがわかっています。ただし、次亜塩素酸ナトリウムは使いすぎると、私たちの腸内の善玉菌を減らしてアレルギーリスクが高まる、という研究論文が複数あります。新型コロナウイルスが流行中の今は仕方ないですが、普段から消毒をしすぎるのは少し心配です」(伊藤先生)

どの消毒薬も使用方法を間違うと有害になることもあります。用途や使用方法を確認して正しく使いましょう。

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公衆衛生専門医
伊藤 明子先生
公衆衛生専門医、小児科医。東京大学医学部附属病院小児科医。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。赤坂ファミリークリニック院長、NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。有限会社アクエリアス代表取締役社長(同時通訳・国際会議運営)、同時通訳者でもあり、医学系学会での会議通訳、米国大統領をはじめ多々の国賓の通訳に従事。近著に「医師がすすめる抗酸化ごま生活」(アスコム)。2児の母。■赤坂ファミリークリニック

文/青山貴子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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