健康・ヘルスケア
2020.5.6

新型コロナウイルスで注目!感染症についてもっと知りたい!【女医に訊く#106】

%ef%bc%91%ef%bc%90%ef%bc%96%e5%a5%b3%e5%8c%bb

日本全国ですでに1万4000人以上が感染している(4月30日時点)新型コロナウイルス。47日に感染拡大を防ぐために緊急事態宣言が発令されましたが、新型コロナウイルスに限らず、感染が広がると恐ろしい事態を引き起こすのが感染症です。そもそも感染症とはどんなものなのか、公衆衛生専門医の伊藤明子先生に教えていただきました。

感染症って、いったいどういうもの?

感染症とは、病原性の微生物がわたしたちの体に侵入することで引き起こす病気のことです。感染症の病原体というと、ウイルスや細菌というイメージですが、実はそれだけではありません。

「感染症を起こす原因微生物は、大きく分けてプリオン(感染性を持ち病原性を示すたんぱく質の一種)、ウイルス、細菌、真菌、原虫、節足動物などです。それらが体内に侵入し、人間に対して有害な現象をもたらした時に感染症になります。ウイルスや細菌だけでなく、ダニや体長10mにもなるサナダ虫が感染症の原因となることもあるんですよ。しかし、わたしたち人間はそうした微生物とも共生しているので、それらがいることで健康が保たれたり、健康を増進していることも多々あります」と公衆衛生専門医の伊藤明子先生。

一般的に身近な感染症といえば風邪やインフルエンザですが、私たちが咳、鼻水、喉の痛み、熱、倦怠感、下痢、腹痛、頭痛、関節痛といったいわゆる風邪症状を起こす原因は、ウイルス? それとも細菌?

「私たちが風邪症状を起こす時の原因の9割がウイルスで、1割が細菌です。風邪症状をおこすウイルスの中でいちばん多いのがライノウイルス。次にコロナウイルスやアデノウイルスなどがあります。コロナウイルスにはいくつか種類があり、新型コロナウイルスは今まで私たちが曝露されていたコロナウイルスから変異していて、新たにヒトに感染することがわかったものなので新型と呼ばれています」(伊藤先生)。

「コロナウイルス」ってどんなウイルス?

コロナウイルスには、一般的な風邪症状を起こすものから以前流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、現在猛威を振っている新型コロナウイルスまでいくつかの種類がありますが、そもそもウイルスとはどんなものなのでしょうか。

「ウイルスは、種類によって大きさに違いがあるので一概には言えませんが、細菌の約1000分の1ととても小さい病原体です。エンベロープという袋の中にDNA(デオキシリボ核酸)かRNA(リボ核酸)のどちらかしか持たず、自力では増殖することができませんが、人間の細胞の中に侵入して増殖します」(伊藤先生)

もしも感染してしまった場合、どのような症状が現れるのでしょうか。一般的な風邪症状を起こすコロナウイルスと違い、新型コロナウイルスは感染すると呼吸器症状が悪化し肺炎になりやすいこと、そのスピードが早いことが知られています。とはいえ、初期症状ではインフルエンザとの違いもわかりづらいもの。

「インフルエンザの典型的なパターンは、最初に高熱が出て、頭痛や関節痛があります。その後、喉の痛みや鼻水、咳といった症状に進んでいきます。ただ最近は熱がなく、倦怠感だけでインフルエンザ陽性の方も結構います。
それに比べて、新型コロナウイルスは、症状が多彩です。今までの陽性患者さんの病状の進行で多いのは、熱が4日程度続き、ずっと倦怠感があり、その後呼吸器症状が悪化していくというのがひとつのパターンです。しかし、熱がなく、味覚障害や嗅覚障害、喉の痛みだけという人でも検査してみたら陽性ということもあります。新型コロナウイルスは発見されてから数か月ですから、わからないことが多いのです。ただ、世界中の臨床家・研究者がデータを集めて解析し論文をすばやく発表していて、毎日新しい研究データがでています。私はそれらをチェックして情報を整理し、患者さんにお伝えしています」(伊藤先生)。

感染症はどうやって感染していくの?

「一般的に、感染症の感染経路は、接触感染、飛沫感染、空気感染の3つです。新型コロナウイルスの場合は、空気感染が絶対にないとは今の時点では言えませんが、現在のところ接触感染と飛沫感染でうつると言われています」(伊藤先生)

接触感染は、既に感染している人の体液や血液、排泄物、無症状の保菌者(ウイルスをもっている人)が触れた物に触って、病原体が自分の鼻、口、目などの粘膜から体内に侵入して増殖すると感染が起こります。感染者への直接の接触に加え、ドアノブやエレベーターのボタン、電車のつり革など多くの人が触っているところに触れた場合、もし感染者がそこを触っていたら、病原体が付着してしまいます。

飛沫感染は、咳、くしゃみ、会話の唾(つば)で飛ぶ飛沫と一緒に病原体が放出されて、それを口や鼻から吸い込む、あるいは目に入ることで感染します。

空気感染は、病原体が空気中に浮遊し、それを吸い込むことで感染します。

「新型コロナウイルスに限りませんが、ヒト-ヒト感染の感染症の対策は、ヒトからヒトにうつるので、究極、人と接触しないことがいちばんの対策なのです」(伊藤先生)

sample-8404
公衆衛生専門医
伊藤 明子先生
公衆衛生専門医、小児科医。東京大学医学部附属病院小児科医。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。赤坂ファミリークリニック院長、NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。有限会社アクエリアス代表取締役社長(同時通訳・国際会議運営)、同時通訳者でもあり、医学系学会での会議通訳、米国大統領をはじめ多々の国賓の通訳に従事。近著に「医師がすすめる抗酸化ごま生活」(アスコム)。2児の母。■赤坂ファミリークリニック

文/青山貴子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

この記事をシェアする

facebook Pinterest twitter

関連記事を読む

あなたにおすすめの記事