ホルモンバランスに着目!30代で感じる「更年期みたいな不調」の乗り越え方(2)【わたしにもできるフェムテックBeauty】プレ更年期編3

「わたしにもできるフェムテックBeauty」では、社会で活躍する女性の皆さんが、もっと生きやすく、美しい日常を送るために、選りすぐりの情報を発信。今回は、疲れやすい、イライラする、気分が落ち込む、頭痛がする…など、閉経にはまだ早い30代の「更年期みたいな不調」の乗り越え方を、前回に引き続き産婦人科医・善方裕美先生に伺います。
ホルモンバランスを整える生活習慣にリセット
30代で感じる「更年期みたいな不調」の原因には、①自律神経の乱れ ②卵巣機能の低下 ③エストロゲンの減少 ④PMS(月経前症候群)などが挙げられます。(【わたしにもできるフェムテックBeauty】プレ更年期編1をチェック)。
「いずれも女性ホルモンとの関わりが深いため、共通の対策は、良質な睡眠、バランスの良い食事、ストレスケア、適度な運動など、ホルモンバランスや自律神経を整える生活習慣へのリセットです。また、過度なダイエットや喫煙もホルモンバランスを乱すので避けるようにしましょう」(善方先生・以下同)
PMSが原因の不調は低用量ピルや漢方薬で治療
低用量ピルで排卵を止めれば、女性ホルモンの急激な変動も抑えられる
「不調が起こるのが排卵後から月経が始まるまでと決まっているPMS(月経前症候群)の場合、クリニックでは低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP)、いわゆる低用量ピルによる治療が選択肢。PMSは、排卵後の女性ホルモンの急激な変動が影響しています。低用量ピルには、排卵そのものを抑制して女性ホルモンの分泌量を安定させる作用があり、それによってPMSの諸症状も抑えられます」
「低用量ピルは、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)の両方を投与する治療ですが、エストロゲンが不足していない若い世代の月経不順に対しては、黄体ホルモンのみを投与する『ホルムストローム療法』を選ぶ場合も。それによりエストロゲンによる血栓や副作用のリスクを避けることができます」
疲れや頭痛に「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、イライラや落ち込みに「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」
「また、〝証(体質)〟に合わせて、漢方薬で不調を緩和させる方法もあります。例えば、疲れやすい、だるい、頭が痛い、めまいがする…などの症状によく処方するのは『当帰芍薬散』。イライラする、寝つけない、心が落ち着かない…など精神的な不調には『抑肝散加陳皮半夏』が有効です」
病院に行く程でもない、診察の時間が取れないという人は、市販の漢方薬を試してみるのも手!
「薬局で買える漢方薬は保険がきかないので高めですが、成分は病院で出される処方薬と同じです。自分に合いそうなものを試してみて、実際に効果が感じられたら、病院を受診した際に、その漢方薬の名前を担当医に伝えて相談すると良いでしょう」
(左)体力虚弱、冷え症で疲労しやすい人の、月経不順、めまい、頭重などの症状に。ツムラ漢方当帰芍薬散料エキス顆粒 [第2類医薬品] 20包(10日分)¥2,640 (右)体力は中等度で、神経がたかぶり、イライラしやすい人の、神経症、不眠症、精神不安などの症状に。クラシエ薬品 抑肝散加陳皮半夏エキス顆粒クラシエ [第2類医薬品] 24包(8日分) ¥2,420
更年期前の「貯骨」で、骨粗しょう症対策も!
「女性ホルモン、特にエストロゲンは、破骨細胞を抑制し、骨芽細胞を活性化して骨の新陳代謝を促す大切な役割を担っています。そのため、更年期を迎えてエストロゲンの分泌が急激に減少すると、骨の代謝バランスが乱れ、骨がスカスカの状態に。骨粗しょう症を発症しやすくなります。
実は、更年期前の若い女性でも、月経不順、栄養不足、過激なダイエット、運動不足などによって骨密度が低下してしまう可能性があるので要注意。しかも骨量が増えるのは成長期までで、20歳前後のピーク以降は、減少の一途をたどります」
骨に刺激を与える運動習慣で、骨量の激減を防いで
「閉経によるエストロゲンの激減に備え、30代の今から骨量をキープする〝貯骨〟を心がけましょう。骨は刺激を与えることで強化できます。ジョギングやウォーキング、ジャンプやかかと落としなど、荷重負荷(重さを加えた運動)や衝撃負荷(ドンという衝撃をかける運動)が有効です。
また、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質などを、3食バランスよくとることも大事です。カルシウムは、キノコ類や魚などビタミンDを多く含む食品と一緒に食べることで吸収率が高まります。さらに納豆や緑黄色野菜に多く含まれるビタミンKも、カルシウムの骨への沈着を助けるので、積極的にとることをおすすめします」
イラスト/リバー・リー(softdesign) 構成/つつみゆかり
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よしかたひろみ/医学博士。日本産婦人科学会専門医・女性ヘルスケア専門医・日本骨粗鬆症学会認定医。約30年来、更年期障害について、カウンセリング、ホルモン補充療法、漢方薬、食事、運動、代替医療など多角的なアプローチで治療を行う。著書に『女医が教える閉経の教科書』(秀和システム)、『子宮のきほん』(池田書店)など。