子宮頸がんってどんな病気？性交渉でうつるって本当？【女医に訊く#192】
子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス（HPV）の感染を防ぐワクチンの接種を対象者（小学校6年から高校1年：2022年度現在2006年度～2010年度生まれの女子）にすすめる「積極的勧奨」が始まりました。子宮頸がんとはどのような病気なのでしょうか？ 産婦人科専門医の吉形玲美先生に教えていただきました。
子宮頸がんってどんな病気？
「子宮頸がん」は、子宮下部にある筒状の「子宮頸部」と呼ばれる部分から発生する腫瘍。子宮頸がんと診断される女性は、20歳代後半から増加し、40 歳代でピークを迎えます。
「子宮頸がんは性交経験あれば、どの世代でもなる可能性がありますが、相当進行しないと出血などの自覚症状が出ないのが特徴です」と話すのは、産婦人科専門医の吉形玲美先生。
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」によると、2018年に子宮頸がんと診断された女性は10,978人（全国がん登録）。亡くなった女性は2,871人（厚生労働省人口動態統計）に登ります。
子宮頸がんは進行すると治療が難しくなります。早期発見できるよう、定期的に検診を受けましょう。
子宮頸がんは性交渉でうつる？
「子宮頸がんはヒトパピローマウイルス（HPV）というウイルスのうち、一部の発がんに関与するハイリスク型HPVといわれるウイルスの感染が関係していることがわかっています。このウイルスの伝染ルートのほとんどは、性交渉によるものです。つまり、一度も性交の経験がない方については、子宮頸がんのリスクはないとうことになります」と吉形先生。
HPVは人の皮膚や粘膜に常在し、男性にも女性にも感染するごくありふれたウイルスですが、感染してもおよそ90％の人においては免疫の力でウイルスが自然に排除されるといわれています。
一方、自然治癒せずにHPV感染が長期間持続してしまった人のなかには、異形成とよばれる前がん病変を経て、数年以上かけて子宮頸がんになることもあるのです。
子宮頸がんは予防できる？
「子宮頸がんは原因も予防法もわかっている“撲滅できるがん”です」と吉形先生。
子宮頸がん予防には性交経験がないうちに、HPVの感染を防ぐワクチンを接種することが大切です。
「HPVワクチンは、希望すれば積極的接種推奨の対象以降の年齢でも、自費で打つことができます。 性交経験後の方も、7割くらいの予防効果があるといわれています」（吉形先生）
HPV感染で男性もがんになる？
HPV感染が引き起こすのは、子宮頸がんだけではありません。オーラルセックスなどの性交渉により、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなど、男性にもがんを引き起こすことがあります。
「オーストラリアやアメリカでは、男女共にワクチンを打つことでがんを予防しています」（吉形先生）
日本の場合、自費になりますが男性もHPVワクチンを接種できます。パートナーのためにも自身の健康のためにも、男女ともに接種を考えてみるのもいいでしょう。
子宮頸がんの治療法は？
子宮頸がんは初期症状がなく、不正出血に気づく頃には、かなり進行しているケースも。治療は手術、放射線治療、化学療法（抗がん剤による治療）の3つを単独、もしくは組み合わせて行います。
「基本的に、初期は子宮の入り口付近のみを切除する子宮頸部円錐切除術を行います。この手術は腟からレーザーメスを入れて15分くらいで終わる手術ですが、子宮の入り口が短くなるため、流産や早産のリスクが上がりますし、手術の影響で子宮の入り口が癒着する場合もあり、月経痛や性交痛が強くなることもあります」（吉形先生）
進行期になると、広汎子宮全摘出術を行います。この手術は、子宮に加えて子宮周辺の組織やリンパ節など広範囲に摘出するため、術後は排尿の感覚が悪くなってしまうことも。腟も短くなるため、性交渉が充分にできなくなる可能性もあります。
「広汎子宮全摘出術は、術前に化学療法と放射線を組み合わせて、腫瘍を小さくしてから手術を行うこともあります。また、がんがかなり進行している場合は、手術を行うこともできないため、放射線や化学療法の治療から始めます」（吉形先生）
子宮頸がんはワクチン接種により予防することも、定期的な子宮頸がん検診（子宮頸部細胞診）により早期発見することもできるがんです。積極的勧奨が止まっていたために、接種の機会を逃した1997～2005年度生まれの女性は、公費で接種することもできます。詳しくは、市町村や医療機関に相談してみましょう。
文／清瀧流美 撮影／黒石あみ
※価格表記に関して：2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
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浜松町ハマサイトクリニック 婦人科医。医学博士、日本産科婦人科学会 産婦人科専門医、日本女性医学学会専門医ほか。東京女子医科大学医学部卒業後、同大学産婦人科学教室入局、准講師を経て、現在非常勤講師に。2010年7月より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科診療のほか、多施設で女性予防医療研究に従事している。更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。