耳のマッサージは全身マッサージと同じ効果があるってホント?真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日々の生活で生まれる美容や健康の疑問を専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は“耳のマッサージ”について。耳のマッサージは全身マッサージと同じ効果があるって…ホント? 伝統医学や統合医療の観点を踏まえて根本からの治療を提案する、きたにし耳鼻咽喉科の院長・北西 剛先生にお話を伺いました。
Q:耳のマッサージは全身マッサージと同じ効果があるってホント?
毎日忙しく過ごす人にとって癒しは必要不可欠! 体の疲れを取るためにマッサージに通いたくてもなかなか続かない…という人に朗報です。なんと、耳をマッサージするだけで全身にもリラックス効果があるのだとか! 実際のところはどうなのでしょうか? さっそく、この疑問を北西先生にぶつけてみました。
A:ホント
「耳には体をリラックスへ導く迷走神経と、体温調節をするためのAVA血管が存在します。末梢部位ということもあって反応が出現しやすく、耳のマッサージだけで全身へ素早い温熱効果や緊張をほぐす効果が期待できるのです。
また、耳を温めることもおすすめです。耳の温めによって得られる全身への効果は、私と小林製薬との共同研究で明らかになりました。
実際に被験者を集めて検証してみたところ、耳の温めにより副交感神経が優勢になり、5分後には体温が0.4〜0.6度上昇したというデータが。それに加えてリラックス時に分泌される唾液IgA数値の上昇も見られました。
つまり全身をくまなくマッサージしなくても、耳への皮膚・温熱刺激だけでもリラックス効果を高めるのに有効であると考えられます」(北西先生・以下「」内同)
耳ツボを刺激すると全身にも良い作用が
「耳が全身に作用する理由として、臓器に働きかけるツボが多く存在することも関係あります。一説では耳の形は赤ちゃんがお腹の中にいる時の体勢に似ており、耳介への施術で全身の治療ができると考えられているほど。見比べてみると胎児の形がツボの位置と一致しますよね。
鍼灸治療ではツボの刺激によって症状の改善を促すこともあり、耳のマッサージが全身に効果的であるのは実証されています。当院でも難聴に対して耳介の鍼治療を並行しておこなった際に、聴力レベルが回復した例がありました」
耳のマッサージはどうやるの?
「ふと時間が空いた時に手で軽く揉んだり、人差し指と親指で耳のつけ根をつかんでグルグル回したり、深く考えずに耳全体をマッサージするだけで全身的に良い影響が期待できます。
より的確に効果を高めたいならば耳ツボを意識してマッサージしてみるのも良いと思います。以下の図を参考に、不調を感じる部位を人差し指と親指でつまんで数秒刺激→離すのを繰り返してみましょう。
“腎(じん)”、“心(しん)”、“枕”(まくら)は睡眠障害に良いとされているので、寝つきが悪い、眠りが浅い、途中で起きてしまうといった悩みがある人におすすめ。
また“神門(しんもん)”は自律神経を整える作用があるため、どなたも重点的に刺激すると良いと思います」
皮膚に触れるだけでもリラックス効果が!
「耳に限らず、皮膚に触れる行為には体感的な安らぎや安心感があります。これは触れている最中に、愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌されるから。オキシトシンは相手と自身の双方に分泌し、お互いに癒される=リラックス効果が得られます。わかりやすい例を挙げるなら、ペットを撫でている時や好きな対象に触れている時の感情ですね。
心地よく癒される最中は、副交感神経が働いて筋肉の緊張がゆるみます。このようなタッチケアはがん患者への緩和ケアなど医療でも用いられています」
文・イラスト/井上ハナエ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
日本耳鼻咽喉科学会の専門医であるほか、アーユルヴェーダやアロマテラピー、ホメオパシーといった様々な医療分野に精通。根本からの治療に役立てるために数々の資格を保有し、医師の診断や薬で病気を治すことだけでなく、患者自身の体が自ら治ることが大切という考えを元にあらゆる角度から治療を提案。著書に『慢性副鼻腔炎を自分で治す!』(マキノ出版)、『図解 自力で治す!慢性副鼻腔炎 アレルギー性鼻炎』(河出書房新社)などがある。
■きたにし耳鼻咽喉科