20代、30代でも難聴リスクがあるってホント?真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日々の生活で生まれる美容や健康の疑問を専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は“若年層の難聴リスク”について。20代、30代でも難聴リスクがあるって…ホント? 伝統医学や統合医療の観点を踏まえて根本からの治療を提案する、きたにし耳鼻咽喉科の院長・北西 剛先生にお話を伺いました。
Q:20代、30代でも難聴リスクがあるってホント?
疲労には肉体的、精神的といった種類がある中で、デジタル化が進んだ現代では目や手のなどパーツごとの疲労が注目されています。あまり意識されていないだけで、実は耳にもかなりの疲労が蓄積。これにより若い世代にも難聴リスクがあるのだとか! 実際のところはどうなのでしょうか? さっそく、この疑問を北西先生にぶつけてみました。
A:ホント
「iPhoneのヘルスケアアプリに騒音対策の項目が入っていることからも分かるように、音による健康被害は社会的な問題となっています。WHO(世界保健機関)の世界聴覚報告書によれば、2050年には世界人口の4人に1人が難聴を抱えて生活すると予測されているほど。
日本では超高齢社会を迎え、認知症人口増加が問題になっています。難聴が認知症のリスク要因のひとつでもあることから、“耳疲労”のケアや対策はかなり重要と考えられています。大手電気機器メーカーが働く中高年に向けてデザイン性の高い補聴器を開発するなど、難聴や耳疲労に対するマーケティングが広まりつつあるのです」(北西先生・以下「」内同)
現代人に“耳疲労”が起こる原因って?
「耳の疲労の主な要因は、日常生活における騒音です。代表的なものとしてはスマホやゲームから流れる音楽、地下鉄やバスなど公共機関の音、ドライヤー、トレーニングジムの機器など。大きな音を聴く時間や機会が増えるほど、難聴のリスクは高まります。
また耳の疲れは“五感疲労”に分類されます。視覚、嗅覚、聴覚といった五感は常にはたらいており、活動中も睡眠中も休むことを知りません。知らないうちに負担がかかり、疲労が溜まっていくのです。そのため、自分で耳の疲れに気づくことが難しいのが厄介ですね。
聴覚や視覚を過度に使うことは、やがて脳の疲労、自律神経バランスの乱れ、精神の疲労、身体の疲労に繋がります。
WHOでは音の種類によって1日の許容基準が設けられています。まずはご自身が日常生活でどれほどの騒音に囲まれているか知っておくと良いかもしれませんね」
\音の種類による1日の許容基準/
音圧レベル (デシベル) |
一日あたりの許容基準 | 音の種類 |
130 | 1秒未満 | 航空機の離陸の音 |
125 | 3秒 | 雷 |
120 | 9秒 | 救急車や消防車のサイレン |
110 | 28秒 | コンサート会場 |
105 | 4分 | 工事用の重機 |
100 | 15分 | ドライヤー、地下鉄車内の騒音 |
95 | 47分 | オートバイ |
90 | 2時間30分 | 芝刈り機 |
85 | 8時間 | 街頭騒音 |
耳疲労が起こるとどうなるの?
「疲労が溜まっているサインとしては、寝つきが悪い、頭が思い、ふらつく、耳の響き(音のこもり、ホールで音が反響しているような感覚)などがあります。これらは病院で検査をしても数値に異常が出にくく、無自覚な場合も多いです。
しかし音による影響は“外傷”に匹敵し、難聴、耳鳴り、めまいといった症状が現れることがあります。
症状が継続したり、悪化するようならば病院にかかることをおすすめします。耳鳴りを感じて初めて病院にかかったという人も、元を辿ると耳への負担が原因となっていることが多いです」
耳疲労の増大にコロナ禍の生活が関係している
「コロナ禍になってからは耳への負担がさらに大きくなっていますね。これはマスクによって声が遮られて聞こえにくい、リモート会議でイヤホンをして話す機会の増えたことが主な原因です。電車や店内でも換気のために窓を開放しており、今まで以上に騒音が耳に入りやすい環境となっています。
それに加えて、今までは聞き取りにくい言葉も口元の動きを見て補完できていたものがマスクによって困難に。複数人での会話においても、誰が話しているのか声だけで判断せざるを得ない状況が増えましたよね。このように耳を酷使する生活となってしまったことが、耳疲労の増大に深く関係しています」
耳疲労を回避する方法は?
「疲労を溜めない対策として、すぐに実践できるのは以下のとおり。
とくに都心部では地下鉄、街頭の映像広告、エアコン室外機の音といった人工的な騒音が多いので、せめて家にいる時間は静かに過ごすといった工夫をしてみるのも良いでしょう。必要に応じて耳栓をすることも有効ですね。
何気なく過ごしていても耳に負担かけているという、自己認識をもつだけでも意識は変わると思いますよ」
- イヤホンの音量を上げすぎない
- スマホの健康管理アプリと連動させて耳への負担を可視化
- 音にさらされる時間を減らす
文/井上ハナエ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
日本耳鼻咽喉科学会の専門医であるほか、アーユルヴェーダやアロマテラピー、ホメオパシーといった様々な医療分野に精通。根本からの治療に役立てるために数々の資格を保有し、医師の診断や薬で病気を治すことだけでなく、患者自身の体が自ら治ることが大切という考えを元にあらゆる角度から治療を提案。著書に『慢性副鼻腔炎を自分で治す!』(マキノ出版)、『図解 自力で治す!慢性副鼻腔炎 アレルギー性鼻炎』(河出書房新社)などがある。
■きたにし耳鼻咽喉科