大高博幸さんの 肌・心 塾
2017.10.3

『 エタニティ 』『 愛を綴る女 』『 静かなふたり 』 試写室便り 【 大高博幸さんの 肌・心塾 Vol.415 】

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© Nord-Ouest

生まれて、会って、愛して、別れて――

時に運命に揺れながらも日々の暮らしを慈しみ、あふれる愛を未来へとつないでゆく、3 世代の女性たちの命の輝きを描く感動の物語。

エタニティ
永遠の花たちへ
フランス、ベルギー/ 115 分
9.30 より公開中/配給:キノフィルムズ
Eternity-Movie.Jp

【 STORY 】 ヴァランティーヌが ジュールと結婚した理由は、19 世紀末フランスの上流階級においては 少し変わっていた。親が決めた婚約を自分で破棄し、それでも諦めない彼に初めて心を動かされたのだ。夫婦の愛は日に日に深まっていったが、病や戦争で子供たちを失ってしまう。そんなヴァランティーヌに再び喜びをくれたのは、無事に成長した息子のアンリと幼なじみのマチルドの結婚だった。マチルドの従姉妹のガブリエルと夫のシャルルとも頻繁に交流するようになり、大家族のような 賑やかで幸せな日々が続く。だが、運命は意外な形で動き始める――。( プレス資料より。一部省略 )

圧倒されるほど優雅で流麗、審美性の極めて高い第一級の女性映画。映像は絵画のように美しく、穏やかな音楽と共に緩やかに流れていく…。全篇をナレーションが物語り、登場人物たちの台詞は非常に少なく、感情表現も 相当 控えめ…。それでいて、彼女らの人間味と存在感が 密度濃く表現されています。

監督は『 青いパパイヤの香り 』『 シクロ 』『 夏至 』『 アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン 』『 ノルウェイの森 』の トラン・アン・ユン ( ベトナム出身。カンヌとヴェネチアの国際映画祭や フランスのセザール賞等で 受賞しています ) 。
主演は、ヴァランティーヌに『 アメリ 』『 ココ・アヴァン・シャネル 』『 グッバイ、サマー 』( Vol.358 ) の オドレイ・トトゥ、マチルドに『 イングロリアス・バスターズ 』『 黄色い星の子供たち 』( Vol.60 ) 『 白い帽子の女 』の メラニー・ロラン、ガブリエルに『 アーティスト 』( Vol.95 ) 『 タイピスト! 』( Vol.168 ) 『 ある過去の行方 』( Vol.215 ) の ベレニス・ベジョ。その他、アンリに『 サンローラン 』( ’14。Vol.317 ) の ジェレミー・レニエ、シャルルには『 万能鑑定士 Q ― モナ・リザの瞳 ― 』で日本でも知られている ピエール・ドゥラドンシャンら。

本作のひとつの観どころは、ヴァランティーヌ役の A・トトゥが、芳紀 17 歳の娘時代から 老衰で亡くなるまでを演じているコト。孫の洗礼場面に繋げて 彼女自身の子供の洗礼場面 ( 回想 ) が映し出される部分等々、時の流れを如実かつ自然に表現して巧みでした。
また、前述のように 台詞は非常に少なく、しかも とても短いのですが、成長した息子 アンリとの居間の場面が、特に素晴らしく感動的…。それは 以下のように描写されています。
「 ママ 」と呼ばれ、なにかしら? と無言のまゝ、アンリに顔を向けるヴァランティーヌ。
「 孫がほしい? 」と尋ねるアンリに、少しの間の後、
「 好きな人が いるの? 」。アンリは頷きながら、
「 ( ママも ) 知っている人だよ 」。やゝ間があって、ヴァランティーヌは微笑しながら、
「 マチルドね? 」。晴れやかな顔で、
「 ああ 」と応じるアンリ。

一ヶ所、かなり暗いと感じたせいもあって 印象に残ったのは、戦争や病気等で 8 人のうち 4 人の子供に、そして夫に先立たれたヴァランティーヌが、「 人生とは 死者を見送ることなのだと悟った 」というナレーション ( あるいは台詞だったかも ) があったコト。本作には その他にも、出産後に命を落とす女性や 海で溺死する男性が存在します。そう、この映画は 時の移ろい、生と死の繰り返し…。しかし その中に、脈々と受け継がれていく 家族の命と愛情の尊さが描き出されているのです。
この点に関して、プレス資料に記されていた B・ベジョの言葉が 最も適確に言い表わしていましたので、ここに要約して紹介します。
「 この作品は、死や悲しみや痛みがあっても、その流れは続いていくという、人生のサイクルを語っています。物語の要は愛であり、愛が如何に絶え間なく再生されるかを描いている…。完成した映画を観て、人が持つ永遠という感情は、小さな日常の些細なことから構成されているのだと気付かされました。これは、人生が差し出す 最も美しいものに対しての讃歌ですね。そして この映画が伝えるメッセージは、次の世代に物事を受け渡すことの重要性。家族の絆が失われている今、私たちを結びつけるのは、死ぬまで信頼できる 愛と友情なのだと思います 」。

本作が全出演者にとって、代表作のひとつとなるコトは絶対確実。観客の皆さんにとっては、一生 忘れられない映画のひとつとなるのでは?
P.S. 題名が やゝ弱く感じられますが、内容は しっかりしていますので、とにかく 是非 観てください。

 

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© (2016) Les Productions du Trésor – Studiocanal – France 3 Cinéma – Lunanime – Pauline’s Angel – My Unity Production

ラヴェンダーが揺れるプロヴァンス、
想い出を彩る < 四季 > の〝 舟歌 〟。
波乱に満ちた 17 年の歳月の果てに知る
真実の愛とは――。

愛を綴る女
フランス/ 120 分/ R 15 +
10.7 公開/配給:アルバトロス・フィルム
http://aiotsuzuru.com/

【 STORY 】 南仏の小さな村に暮らす若く美しいガブリエル。地元の教師との一方的な恋に破れ、不本意ながら両親の決めた スペイン人労働者 ジョゼの妻となる。「 あなたを絶対 愛さない 」「 俺も愛していない 」。そう誓いあったにもかかわらず、日々、近づいては離れる官能的な夫婦の営み。そんなとき、流産の原因が結石と診断され、アルプス山麓の療養所に滞在することになる。そこで、インドシナ戦争で負傷した 帰還兵 アンドレ・ソヴァージュと運命的な出逢いを果たす。それは彼女が綴る 清冽な愛の物語の始まりだった――。( 試写招待状より。一部省略 )

マリオン・コティヤール主演最新作。監督は、マリオンのスケジュール調整のために 5 年間も待ち続けたという『 ヴァンドーム広場 』の ニコール・ガルシア。助演は、ジョゼに アレックス・ブレンデミュール、アンドレに ルイ・ガレル。
原作は ミレーネ・アグスのベストセラー小説で、時代背景は 1950 年代からの 17 年間。物語の舞台となるのは、南仏 プロヴァンスの田舎町、アルプス山麓の療養所、そしてリヨンのコミーヌ通り。

ヒロインのガブリエルは ヒステリー症状の持ち主で、性愛に対する憧れと想い込みが激しい上に、辛辣で意地が悪いという性格設定。マリオンは役の 17 年間を演ずるに当たり、体重のコントロールによって 顔つき・体つきを変えている印象。ふっくらとしてはいるが立体感に乏しい垢抜けない顔から、いつもの彼女らしい引き締まった顔、そして緩み始めた中年の顔までを観せるという、今までにない役作りに挑戦しています。

物語の重要な部分が 映画的なトリートメントによって展開し、それ故に興味をそゝる作品ですが、そこに強い真実味を与えているのが ジョゼ役の A・ブレンデミュール。彼は、朴訥、勤勉、かつ我慢強い役の性格を見事に好演。体つきからして説得力に満ちあふれ、ジョゼ役が彼でなければ、マリオンの熱演もカラ回りしたのでは と思えるほどの出来でした。
アンドレ役の L・ガレルは、いつものように 柄で勝負という印象。フランスでは デカダンスな美貌の男優として大人気だそうですが、僕には よく分からない存在…。
端役で素晴らしかったのは、療養所で働くシングルマザーのメイド、アゴスティーヌ役の アロイーズ・ソヴァージュ。彼女の演技には、内包的な奥行きがありました。

ストーリーに関しては、詳しく知らずに観てください。そうするほうが きっと楽しめます。
P.S. 本作の〝 テーマ 〟に感動した方には、ヴィクトール・シェーストレム監督、リリアン・ギュシュ主演、ラース・ハンソン共演、無声映画の名作『 風 』 ( ’28 ) を観るコトをオススメします。L・ギッシュが演じたのは、ヒステリー症状の女性ではなく、清教徒的なキャラクターですが…。

 

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©KinoEletron – Reborn Production – Mikino – 2016

不器用な彼女が出会ったのは、
パリで古書店を営む年老いた男。
風変わりな ふたりが紡ぐ、
愛と人生についての物語。

静かなふたり
フランス/ 73 分
10.14 公開/配給:コピアポア・フィルム
mermaidfilms.co.jp/shizukanafutari

【 STORY 】 27 歳のマヴィは パリへ引っ越してきたばかり。不器用な彼女は 都会生活に馴染めずにいるが、ある日、従業員募集の貼り紙を頼りに カルチェ・ラタンの小さな古書店を訪ねる。そこで出会ったのは、謎めいた店主 ジョルジュ。祖父と孫ほどの年齢差にもかかわらず、ふたりは徐々に惹かれあう。それは、風変わりで、静かで、けれど情熱的な愛。だがジョルジュには、闇に包まれた過去があった…。( 試写招待状より抜粋 )

監督は 期待の新鋭 エリーズ・ジラール。本作は『 ベルヴェル・トーキョー 』( ’11 ) に次ぐ彼女の 第 2 作。マヴィを演ずるのは イザベル・ユペールの娘で、『 マリー・アントワネットに別れをつげて 』( Vol.127 ) 等に出演した ロリータ・シャマ。ジョルジュ役は、特に ’60 年代に人気が高く、『 橋からの眺め 』『 輪舞 』『 熊座の淡き星影 』『 昼顔 』等々に出演した ジャン・ソレル ( ’34~ ) 。
本作は 淡々としたタッチで描かれる、適度に知的なラブストーリーであると同時に、ヒロインが自身の道を選択するまでの 一種の成長物語でもあります。

携帯電話が使われている現代劇ですが、映画のスタイルとしては ’60 年代風のイメージ。少々驚かされたのは、無声映画時代に多く用いられていた場面転換法 = アイリスアウトとアイリスインが全篇中に 6 回ほど使われていたコト。さらに スローモーションによるクロースアップが、少くとも 3 ヶ所に捜入されていたコトです。それが、名画座でマヴィが観る サタジット・レイ監督作品『 チャルラータ 』の一場面とリンク ( ? ) しているコトも含めて、僕は ジラール監督のセンスに好感を抱きました。

L・シャマは、I・ユペールには あまり似ていない容貌。J・ソレルは、非常にハンサムだった若かりし頃の面影を 場面によって彷彿とさせる上、笑顔になる瞬間に 愛すべき味を滲ませています。名画座の場面で マヴィにハンカチを貸す好青年 ロマンを演じているのは、日本ではスクリーン初登場となる パスカル・セルボ。

よく分からなかったのは、滑空中の鳥が 突然 落下してくるという謎の数シーン。あれは何を意味しているのでしょうか?
映像は ドキッとするほど美しい場面が、多くの外景と幾つかの室内シーンにありました。古書店内の場面は、実際に カルチェ・ラタンにある書店を借りて撮影されたそうです。

 

 

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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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