【レチノール】化粧品としての効果は？｜美容成分大全

レチノールは肌に対してさまざまな効果があり、化粧品には古くから、主に安定化させた誘導体が使われてきました。近年、表皮のヒアルロン酸の産生を促進する効果から「シワ改善」の有効成分として承認され、さらに注目を集めています。レチノールはビタミンAの一種で、ビタミンAは皮膚に対して働くビタミンの中で、ビタミンCやビタミンEとならんで「美肌効果が非常に高い」とされています。

プロフィール

どんな「効果・働き」があるの？

シワを改善する

表皮ヒアルロン酸の産生促進
ヒアルロン酸の多くは、真皮でコラーゲン線維の間を埋める基質を構成しており、肌の柔軟性や弾力を担っています。しかし、ヒアルロン酸は真皮だけに存在するわけではなく表皮にも存在し、表皮の水分を保つ役割をしています。レチノールは、加齢にともない減少する表皮ヒアルロン酸の産生を促進することで、表皮の水分量を増加させて肌に柔軟性を与えます。これにより、シワが改善します。

真皮成分の産生促進
真皮内にある、肌の弾力を保つ成分であるコラーゲン線維・エラスチン線維の産生を促進することで、深いシワを改善します。

肌荒れを改善する

細胞の増殖促進
細胞を活性化して増殖を促し、ターンオーバーを促進して肌荒れを改善します。

くすみを改善する

メラニンの排出促進
ターンオーバーの促進により、メラニンの排出を促すこともできます。これにより、くすみを改善します。また、メラニンの蓄積によるシミに対する効果も期待できます。

ニキビや毛穴をケアする

皮脂分泌抑制
過剰な皮脂の分泌を抑制する働きで、ニキビを予防し、毛穴の開きを改善します。

美容賢者からの「アドバイス」

＼教えてくれたのは／

日本化粧品検定協会代表理事

小西 さやか

日本化粧品検定協会代表理事、日本薬科大学客員准教授、北海道文教大学客員教授、東京農業大学食香粧化学科客員准教授、各種協会の顧問、学会幹事を歴任。化粧品開発者として科学的視点から美容、コスメを評価できる専門家「コスメコンシェルジュ」。最短最適な美容で無駄を省く「時短美容家」としても活躍中。著書は『美容成分キャラ図鑑(西東社）』など13冊、累計56万部を超える。

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高配合製品は「皮剥けコスメ」として人気！ でも、その後のケアも必要

最近、美容クリニックで処方してもらえる“レチノール高濃度コスメ”が「皮剥けコスメ」として人気です。高濃度のレチノールによってターンオーバーが促進し、古い角層細胞が取り除かれて新しい角層細胞に入れ替わります。まさに見た目にも新しく生まれ変わったような肌になることが期待できます。

ただ、ターンオーバーがはやくおこなわれたために、未熟な角層細胞が肌のバリア機能を担っており、皮剥け後は肌が乾燥しやすく、紫外線の影響も受けやすくなります。使用前にパッチテストをし、記載された使用方法通りに使用しましょう。

また、使用の際はしっかりと保湿ケア・紫外線対策をしましょう。この期間は摩擦などにも弱く、色素沈着しやすい状態なので、お手入れも“やさしくそっと”おこなうことがおすすめです。

レチノールは熱や光に弱い…安定化させた誘導体（種類）がある！

レチノールは熱や光、酸素にとても弱い性質のため、化粧品では「パルミチン酸レチノール」や「酢酸レチノール」など安定化させた誘導体が使われています。

レチノール配合の「シワ改善」の医薬部外品は資生堂だけ

レチノールが配合されている化粧品は各社から販売されていますが、「シワ改善」効果のある医薬部外品の有効成分として承認されているのは資生堂のレチノールだけです。この目的で使用される場合は「純粋レチノール」の愛称で区別されています。

「レチノール」と「ビタミンA」の違い

ビタミンAは単一の成分ではなく、細かな構造が異なるいくつかの成分の総称です。一般的にレチノールやレチナール、レチノイン酸（トレチノイン）をまとめたもののことをさしますが、美容成分としては、レチノールおよびその誘導体のことをビタミンAと呼ぶことも多いです。レチノールは皮膚では、レチノール→レチナール→レチノイン酸に変化して作用するとされています。

「歴史・由来」その他の雑学

いくつかあるビタミンAの中で、“レチノール”は「アルコール型」、皮膚科などで使用される“トレチノイン（レチノイン酸）”は「カルボン酸型」と呼ばれ、構造の一部が異なります。

ビタミンAは「粘膜と目のビタミン」ともいわれ、摂取することで粘膜や皮膚を丈夫にする働きがあります。日本人はビタミンAが不足気味といわれているので、食事からも積極的に摂ることが望ましいです。食品では、うなぎ、レバー、卵などに多く含まれています。

しかし、“油溶性”であるビタミンAは体内に蓄積しやすく、多く摂取しすぎると過剰症の心配があり、厚生労働省では一日の摂取量の上限を年齢ごとに決めています。これに対して、ビタミンAの前駆体であるβ-カロチンは、摂取すると小腸上皮細胞でレチノールに変換されるので、β-カロチンが多く含まれる緑黄色野菜などで補うのもおすすめです。

歴史

1915年、E.V.McCollumにより、ネズミの成長増殖に不可欠である未知の栄養素として発見。1922年、J.C.Drummondがその中の脂溶性物質の一つを「ビタミンA（レチノール）」と呼びました。1931年、P.C.Karrerにより化学構造が明らかにされ、さらに1946～1947年にかけて、スイスのロシュ社が工業的に生産可能な合成法を開発しました。

ビタミンA（レチノール）は、健康な皮膚や粘膜を作る働きがあることが知られていましたが、シワ改善効果が発見されたのは、1971年頃です。ニキビ治療のためのレチンAクリームがFDA（アメリカ食品医薬品局）の承認を得た後、この治療を受けた患者が傷とともにシワも消えていたことから、シワ改善効果があるのではないかと研究が始まりました。そのため、古くからレチノールの誘導体やビタミンA油を配合した化粧品が販売されていましたが、「シワ改善」効果のある医薬部外品の有効成分として承認を得たのは、2017年の資生堂が初めてです。

主な原料の由来

合成

医薬品やサプリメントには？

ビタミンAは医薬品においては、ビタミンA欠乏症やその予防を目的に使用されます。ただし、レチノール自体ではなく誘導体が使われます。
食品においては、栄養補助を目的に栄養機能食品などに使用されます。栄養機能食品に配合した場合、「ビタミンAは、夜間の視力の維持を助ける栄養素です。」、「ビタミンAは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。」と表示することができます。

注意事項

油溶性のビタミンであるレチノールは体内に蓄積しやすいため、過剰に使用しないよう注意が必要です。栄養機能食品においては、「妊娠3か月以内又は妊娠を希望する女性は過剰摂取にならないよう注意してください。」と注意喚起表示がされています。 また、刺激を感じる人も多いため、サンプルなどで刺激を感じないか確認することもよいでしょう。

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