ヒアルロン酸は種類によって何が違う?|美容成分大全
ヒアルロン酸は、たった1gで2~6Lの水をかかえこむ保湿成分。肌の内部にも存在し、水分をたっぷり含んでクッションのような働きをしていますが、化粧品に配合される保湿成分としても多く使われています。ヒアルロン酸にはいくつか種類があり、種類によって肌への働き方に違いがあります。日本化粧品検定協会が美容成分をくわしく解説する【美容成分大全】。成分を正しく理解して、コスメ選びの参考に!
プロフィール
ヒアルロン酸を肌につけると、たくさんの水分と結びついてかかえこみ保湿します。外気の湿度が下がっても影響を受けにくいのが特徴です。
化粧品原料としてのヒアルロン酸の多くが、ヒアルロン酸Na(ナトリウム)です。ヒアルロン酸Naは、水に溶けると無色透明なとろみのある状態になります。0.01%程度のごくわずかな量でも水分をかかえてふくらみ、とろっとしたテクスチャー(質感)が加わるため、使い心地を調整するのにも貢献しています。
ただし、ヒアルロン酸Naは分子が大きいため角層内には浸透しにくく、肌の表面でのみ働きます。そのため、分子を小さくしたり油にもなじみやすい性質を加えて肌への浸透性を高めたものや、電気的に肌に吸着しやすくして持続性を高めたものなど、さまざまな種類のヒアルロン酸が開発されています。
どんな「効果・働き」があるの?
- 分子の大きさや溶解性、電気的な性質の違いによって主に5種類に分けられる
- 種類によって、肌への浸透性や保湿力、持続力などが異なる
- 基本的な働き(水分をかかえこむ保湿作用)はどれも同じ!
さまざまな技術によって、ヒアルロン酸の分子の大きさや構造を変化させることにより、基本タイプのヒアルロン酸Naをはじめとして主に5つの種類があります。ヒアルロン酸の高い保湿力は維持しながら持続力を高めたり、保湿力は抑えられても肌へ浸透しやすくなっているものなどがあり、さまざまなアイテムに配合しやすくなっています。
ヒアルロン酸Na
【基本タイプ】
最も一般的なヒアルロン酸で、古くから使用されています。分子が大きいため、肌につけると角層内に浸透しにくく肌の表面にとどまり、たくさんの水分と結びついてかかえこみます。その結果、肌の水分量が高まり、乾燥を防ぎます。
カルボキシメチルヒアルロン酸Na
【高保湿タイプ】
基本タイプのヒアルロン酸Naにカルボキシメチル基を結合させることで、保水性を高めた成分です。同程度の分子の大きさのヒアルロン酸Naに比べてべたつきが少なく、さらさらとした感触が特徴です。
アセチルヒアルロン酸Na(愛称:スーパーヒアルロン酸)
【高保湿タイプ】
基本タイプのヒアルロン酸Naにアセチル基を結合させることで、両親媒性(親水性+親油性)にした成分です。ヒアルロン酸Naよりも少し親油性(油へのなじみやすさ)が高いため、ヒアルロン酸Naよりも肌の表面に対する吸着性や親和性が向上しています。
角質の表面に効率的にとどまることができるため、角層内部から蒸発してくる水分をより多くかかえこみ、その結果として高い保湿作用や角質をやわらかくする作用があるとされています。両親媒性でエタノールにも溶けるアセチルヒアルロン酸Naは、ぬめりがなく、さっぱりとした使用感のアイテムにも配合できます。
ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム
【吸着タイプ】
ヒアルロン酸にプラス(+)のイオンをもつ構造を結合させた成分です。皮膚や髪はマイナス(ー)イオンの性質を持っているため、プラス(+)イオンの性質をもつヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウムは皮膚や髪に吸着し、保湿作用が持続します。洗っても流れにくいため、シャンプーや洗顔料などに配合されることもあります。
加水分解ヒアルロン酸
【浸透タイプ】
ヒアルロン酸を酸や酵素などを使って加水分解し、百分の一以下の小さな分子サイズにしたものです。保湿作用は弱くなっていますが、角層への浸透性がアップしており肌になじみやすいです。肌につけると水分と結びついてかかえこみ、肌の角層内部に浸透します。その結果、肌の内側の水分量が高まり、乾燥を防ぎます。
加水分解ヒアルロン酸アルキル(C12-13)グリセリル
【修復タイプ】
ヒアルロン酸を百分の一以下の小さな分子サイズにし、さらにその一部に親油基を結合させて両親媒性(親水性+親油性)にした成分です。保湿作用は弱くなっていますが、親水性と親油性の両方の性質をもつため、細胞間脂質の構造と同じラメラ構造をつくり、皮膚のバリア機能を高めることが確認されています。
美容賢者からの「アドバイス」
組み合わせて配合されることも!お好みのアイテム・使用感で選びましょう
どのヒアルロン酸も、水をかかえこむという基本的な保湿作用は同じです。各社いくつかのタイプを組み合わせて使用しながら、肌表面と角層の内部にアプローチしたり、他の保湿剤と併用することで最適な保湿感や使用感をつくり出しています。取り入れやすいアイテムやお好みの使用感で選ぶとよいでしょう。
<引用元>
化学 と生物 Vol.26, No.5 308-315 (1988)
グルコサミン研究(5), 4-10 (2009)
キユーピー株式会社, カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩および/またはその製造方法, 再表2015-053280, 2015
キユーピー株式会社, 化粧品用機能性ヒアルロン酸 パンフレット
宇山侊男他, 化粧品成分ガイド 第7版, フレグランスジャーナル社, 2020, p.49
小西さやか, 知れば知るほどキレイになれる!美容成分キャラ図鑑, 西東社, 2019, p.34-37
キユーピー株式会社 Webサイト (ヒアルロン酸とは)
生化学工業株式会社 Webサイト (ヒアルロン酸のまめ知識)
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
日本化粧品検定協会代表理事、日本薬科大学客員准教授、北海道文教大学客員教授、東京農業大学食香粧化学科客員准教授、各種協会の顧問、学会幹事を歴任。化粧品開発者として科学的視点から美容、コスメを評価できる専門家「コスメコンシェルジュ」。最短最適な美容で無駄を省く「時短美容家」としても活躍中。著書は『美容成分キャラ図鑑(西東社)』など13冊、累計56万部を超える。