健康・ヘルスケア
2020.12.30

インフルエンザや子宮頸がん…「ワクチン」ってなんで必要なの? 効果や副反応、費用は?|「ワクチン」について学ぶ

インフルエンザのワクチン接種ひとつとっても、受けた人、受ける予定の人、受けないという人…どれが正解?? 今、何かと話題のワクチン。北里大学大村智記念研究所特任教授である中山哲夫先生に教えていただきました。

そもそも「ワクチン」って何?

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ワクチンの仕組み

自然感染と同じように、でもはるかに安全に免疫を作り出す
「ウイルスや細菌など、感染症の病原体が体内に入って発症(自然感染)すると、体の中でウイルスに結合して感染力を失わせる抗体が作られ、新たに外から侵入する病原体を阻止する態勢“免疫”ができます。ワクチンはこの仕組みを利用したもの。病原体の毒性を弱めたり、無毒化した安全性の高い薬液=ワクチンを接種して、その病原体を中和する免疫応答システムを体内にあらかじめ作り出しておくのです。万一、病原体が体内に侵入しても、発症を防いだり、重症化を抑えられます」(中山先生)

 

ワクチンの種類

生ワクチン・不活化ワクチン・トキソイドの違いは?
「ワクチンは成分の違いから3種類に分けられます。生ワクチンはウイルスや細菌の病原性を弱めたものが原料で、体内で増えて免疫を高めます(麻疹・風疹ワクチンなど)。不活化ワクチンは病原体の感染能力を失わせたもの(インフルエンザワクチンなど)。トキソイドは無毒化したもの(破傷風ワクチンなど)。不活化ワクチンとトキソイドは免疫力が弱く、何回かの追加接種が必要です」(中山先生)

 

ワクチンの役割

(1)自分が病気にかかるのを防ぐ
(2)かかっても重症化を抑える
(3)他人への感染を防ぐ

「ワクチン接種の目的は、ウイルスや細菌の感染を防ぐことですが、感染を完全にブロックできるわけではありません。もし感染したとしても、症状を軽く抑えられ、自分が接種することで、身近な人に病気をうつさずにすむというメリットも。地域の多くの人がワクチン接種で免疫をもっていると、集団感染を防ぎ、ウイルスの感染が止まり、社会を守ることにつながるのです」(中山先生)

 

予防接種

法律で定められた定期接種と自己負担の任意接種がある
「予防接種には、子供や高齢者などを対象に法律に基づいて実施される定期接種と、希望者が各自で受ける任意接種があります。定期接種に分類されるワクチンは、感染力が強く健康被害の大きな感染症に対するもので、費用の全額(または一部)を国や自治体が負担します。任意接種は全額自己負担。ただし、定期接種のワクチンであっても、予防接種法で定められた期間を外れてしまうと、任意接種扱いになります」(中山先生)

 

日本のワクチン事情

日本はワクチン後進国。成人が重症化する理由のひとつ!
「他国では無料で接種できるのに、日本では自己負担のワクチンが多くあります。その背景には、接種後まれに起こる重い副反応を恐れ、ワクチン認可が後回しにされている実情が。日本のワクチン認可は、先進国に10年以上も遅れをとっているのです。例えば海外では無料化されているおたふくかぜのワクチンも日本では任意。未接種のまま大人になって感染し、重症化するケースを増やす一因です」(中山先生)

 

美的世代とワクチン接種

インフルエンザやHPVに加えて、妊娠前に受けておくべきワクチンも!
「感染症は、免疫がなければ年齢に関係なく罹患します。高熱や体のだるさなど、発症すると仕事や日常生活に支障を来すインフルエンザは、多忙な美的世代こそ予防接種が必要なワクチン。過去にかかったことがあっても、毎年ウイルスの型が変化するので、毎年ピーク前に接種する必要があります。また、子宮頸がんの発症を予防するHPVワクチンも女性にとって大切なワクチン。推奨期(小学6年〜高校1年)は過ぎても、接種しておく価値は大きいといえます。さらに、風疹、麻疹、おたふくかぜなど、妊娠中にかかると自身だけでなく胎児にも影響が出る疾病のワクチンはぜひ接種しておくべきです。また、海外に長期滞在する予定のある人は、事前にB型肝炎・A型肝炎や破傷風のワクチン接種をおすすめします。B型肝炎ワクチンが乳児の定期接種になったのは2016年からなので、多くの成人は未接種のはず。破傷風ワクチンも10年ごとに接種する必要があるので、最後の定期接種(小6) から10年以上がたった20代以降は要接種対象です」(中山先生)

 

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上の表でわかるように、定期接種の対象はほとんどが小児期。美的世代の場合、任意のインフルエンザワクチン以外にも、成人女性の今こそ必要なワクチンがあることを知らなかった人が多いのでは?小児期に定期接種を受けたワクチンの種類や、受けたかどうかわからない場合は母子手帳で確認できます。成人期(65歳未満)はすべて任意接種になるものの、自分や自分の周囲を感染から守るために接種しておくことは大切!

 

1990年4月以前に生まれた人は、風疹や麻疹など2回接種が必要なワクチンの接種回数に注意!

「麻疹や風疹が定期接種として2回のワクチン接種を受けられるようになったのは’06年から。それまで(’78〜’05年)は定期接種として1回しか認められていなかったため、’90年以前に生まれた人は、2回目を接種する機会がなかった可能性があります。水痘の2回接種が定期接種に導入されたのも’14年10月からと最近のこと。美的世代は接種していない人の方が多いでしょう。小児期の接種歴は母子手帳で確認できます。また、麻疹、風疹、水痘、B型肝炎感染などは抗体検査が可能。妊娠前や渡航前で、接種歴が曖昧な場合は、医療機関で検査を受けてみることをおすすめします」

 

北里大学 大村智記念研究所 特任教授

中山哲夫先生

 

『美的』2021年1月号掲載
イラスト/どいまき 構成/つつみゆかり、有田智子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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