健康・ヘルスケア
2019.1.9

女医に訊く#44|花粉症の治療法にはどんなものがありますか?

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花粉症の治療には、医療機関で行う薬物療法、手術治療、抗原特異的免疫療法があります。それぞれの特徴と治療開始時期について、皮膚科専門医の慶田朋子先生にうかがいました。

抗アレルギー薬はお正月が明けたら飲みましょう

花粉症治療の基本は、薬を使った対症療法で、主に「抗ヒスタミン薬」「抗ロイコトリエン薬」「鼻噴霧用ステロイド薬」などが使われます。抗ヒスタミン薬は作用が強いものだと、口が渇いたり、眠気が生じたりするものあります。

薬物療法のポイントは、花粉が飛ぶ前、飛散前から内服するということです。スギ花粉の場合、1月の半ばくらいから飛んできますから、お正月が明けたら飲み始める必要があります。

「みなさん、薬を症状が出てから飲みますが、それでは遅い! 薬を飲む期間を少しでも短くしたいというお気持ちはわかりますが、あらかじめ飲んで、体を抗原抗体反応が起きにくい状態にしておかないと、花粉がきた瞬間、戦闘態勢に入って抗体をつくってしまうんです。そのスイッチが入ってからでは、後でいくら薬の量を増やしても、もう止めようがありません」(慶田先生)

飛散前から服用すると、花粉症の症状の出現を遅らせたり、症状を軽減したりすることもできるうえ、服用する薬の種類も量も少なくて済みます。毎年、スギ花粉症に苦しんでいる人は、お正月が明けて第1週目くらいに薬を処方してもらえるように計画を立てましょう。

レーザーを希望する場合は年末までに手術を

抗アレルギー剤の内服や点鼻薬によっても症状が軽快しない方や、妊娠などのために薬を飲みたくないという方には、レーザーを用いた下甲介粘膜焼灼術(かこうかいねんまくしょうしゃくじゅつ)もあります。これはホクロやイボを削るのにも使うCO2レーザーで、鼻の中の粘膜をジーッと焼き焦がす手術療法。所要時間は30〜40分。粘膜の感受性が低下するため症状は大きく改善します。

「ただし、粘膜は元に戻りますから、1〜2年もすると症状が再発します。根治ではない対症療法なんですね。しかも、決してラクではない。麻酔をするので傷みは術後ヒリヒリする程度ですが、大量の血のかさぶたが鼻の中からドワーッと出てきます」(慶田先生)

また、症状が出始めてからの手術は効果が低いばかりでなく、場合によっては症状がひどくなることもあります。レーザーを希望する場合は、少なくとも年末までには施行しましょう。

抗原特異的免疫療法は花粉が飛んでいない時期に始めて

抗原特異的免疫療法は、アレルギーの原因物質であるアレルゲン(スギ花粉症ならスギ花粉)をほんの少しずつ、ゆっくり体内に入れることで、体をアレルゲンに慣らし、過敏な反応を減らそうという治療法。長期間に渡って投薬し続ける必要がありますが、うまくいけば根治する可能性があります。

抗原特異的免疫療法は、以前はアレルゲンを含んだ薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」が主流でした。しかし、アナフィラキシーショックを起こすこともあり、近年は治療薬を舌下に投与する舌下免疫療法にシフトしています。

舌下免疫療法は自宅で毎日行う治療法で、「シダトレン」という液剤を毎日舌の下側に滴下し、2分間保持して飲み込みます。薬は少量から開始して、2週間かけて量を徐々に増やし、3週間目からは同じ量に。通院の頻度は、初期は毎週、安定すれば月に1回。2014年10月からは、スギ花粉症に対しての舌下免疫療法が保険診療で賄えるようになりました。

「抗原特異的免疫療法の場合、毎日継続できれば、8割弱の方が根治できます。難点は、治療期間が3〜5年と長いことと、改善率が100%ではないこと。また、『抗原特異的』のためスギは大丈夫になっても、ブタクサがダメな人はブタクサ花粉症の症状は残ります」(慶田先生)

2018年6月には、「シダトレン」に比べ保管方法が簡便で、使用年齢に制限がないスギ花粉の舌下免疫療法薬の錠剤「シダキュア」が発売されました。抗原特異的免疫療法は花粉が飛んでいない時期に始める必要があります。興味のある方は、治療を受けられる医療機関を探して受診してみましょう。

新しい花粉症の治療法にも注目!

近年、乳酸菌を用いて花粉症を改善しようという食品やサプリメントが注目されています。

「乳酸菌で花粉症がピタリと止まるかというと、そこまでは期待できないと思いますが、腸は大きな免疫器官ともいえます。ヨーグルトや発酵食品など、乳酸菌が多く含まれている食品を食べて腸内環境を良くするというのは、健康のためにも悪くないですよ」と慶田先生。

腸の環境が悪くなると、角層の水分量も下がって、肌が乾燥してしまいます。肌が乾燥すると「花粉症皮膚炎」などの肌トラブルが起こりやすくなりますから、保湿+乳酸菌によるインナーケアで、肌のうるおいを保っておくのはおすすめです。

ほかにも、毎日食べることで花粉を異物認定しなくなる「スギ花粉の遺伝子を含んだお米」や、スギ花粉症の根本治療を目的とした「次世代ワクチン」、妊娠中に接種することで赤ちゃんがアレルギー体質にならないようにする「予防接種」など、さまざまな花粉症対策が研究開発されています。一般的な実用化には、しばらく時間がかかりそうですが、これまでにない効果が期待できるでしょう。

皮膚科専門医
慶田朋子先生
銀座ケイスキンクリニック院長。医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。日本レーザー医学会認定レーザー専門医。東京女子医科大学医学部医学科卒業後、東京女子医科大学病院、聖母会聖母病院などを経て、2006年、有楽町西武ケイスキンクリニック開設。2011年、西武有楽町店閉店に伴い、銀座ケイスキンクリニックとしてリニューアルオープン。最新マシンと高い注射注入技術で叶える、切らないリバースエイジングに好評を博している。著書に『365日のスキンケア』(池田書店)など。
■銀座ケイスキンクリニック

文/清瀧流美 撮影/黒石あみ

 

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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