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2011.10.14

大高博幸の美的.com通信(73) ニコール・キッドマンのベスト、『ラビット・ホール』 試写室便りNo.18

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大きな岩のような悲しみは やがてポケットの中の小石に変わる。
愛する者を亡くした悲しみは消えない。それでも その悲しみを抱きながら 歩み出すことはできる。
喪失からの再出発を描く夫婦の愛の物語。
『ラビット・ホール』 (原題=Rabbit Hole)
★詳細は、rabbit-hole.jpへ。
<11月5日(土)から、TOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル梅田ほかにて全国ロードショー>

最愛の息子の想い出をすべて忘れてしまいたい妻(ニコール・キッドマン)、いつまでも留めておきたい夫(アーロン・エッカート)。ふたりの絆は幾度となくほつれ、切れかけるが…。
可愛い盛りの子供を交通事故で失った夫婦の絶望と愛情の危機、そして再生の糸口をやっとつかむまでを描いた93分の優秀作。この映画は決して派手ではないけれどとても充実していて、観る者を完全に味方にしてしまうような確固たるパワーを備えています。
題名の『ラビット・ホール』は『不思議の国のアリス』に由来していて、夫婦を襲った突然の悲劇を、白ウサギを追って穴に落ちたアリスの体験になぞらえているとのコト。

僕はニコール・キッドマンにはデビュー当時から一種の好感を抱いていて、何作かは試写ではなく劇場で観ましたが、『記憶の棘』あたりから駄作のオン・パレードで、『NINE』やシャネルの劇場用CMフィルムに“美しい顔”を披露したのが救いという状態が続いていました。なので、この新作の“映画としての充実度”と、この役に於ける彼女の“演技のレベル”とに切れそうな期待の糸をつないで観たのです。が、結果はそれ以上のモノでした。

彼女が本気で演じるだけの中味のある内容でしたし、この映画に出演できて本当に良かったなぁと感じたほどです。この新作で、僕はついに彼女のファンになったという気もしています(アカデミー賞(R)主演女優賞に輝いた『めぐりあう時間たち』での演技には感服しましたが、あの役では特殊メークで別人の顔になっていたので、ニコールでありながらニコールではなかったという感覚が僕にはあるのです。)

日常的な些細な出来事にも痛々しいほど神経をとがらせ、所かまわず相手かまわず、怒りを爆発させたり八ツ当たりしたりのニコール演ずるベッカ。そんな彼女が、あの事故の加害者である少年を偶然目にして跡を追い、やがて公園のベンチで言葉を交わすようになるのですが、その場面での彼女の演技にはまず驚かされ、そして感動させられました。

素直で正直で誠実な少年の言葉に胸を詰まらせ涙を流し、それでも「分かるわよ」と微笑する彼女の顔の素晴らしさ。そして母親に初めて感じるシンパシー、夫との穏やかな和解…。その表情、心の機微の表現、放つニュアンスが真に見事でした。アカデミー賞(R)とゴールデン・グローブ賞にダブル・ノミネートされた彼女、惜しくも賞は逃しましたが、この演技は彼女のキャリアを通じてのベストだと僕は思っています。

P.S.1 交通事故のシーンは回想の形でスクリーンに表われます。事故を目の当たりにするニコールの表情のみで表現され、事故現場の惨状そのものは映し出されません。

P.S.2 夫婦ゲンカのシーンは真実そのもので、映画や芝居のワン・シーンとは思えませんでした。言葉尻を突いてエスカレートしていく夫婦ゲンカ。しかし「こんな状態にはもう耐えられない!」と口走りながらも、「別れよう」、「ええ、そうしましょう!」とまでは言わなかったところは、この映画の中の重要なポイントのひとつという気がします。誰にも、しっかりと観て、学んでほしいとも思いました。

P.S.3 ニコールのことばかり書きましたが、夫役のアーロン・エッカートも、ベッカ(ニコール)の母親役のダイアン・ウィーストも好演。そして、少年役の新人マイルズ・テラーが素晴らしい。彼が適役・好演でなかったとしたら、ニコールの演技はカラまわりしたかも知れません。

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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