ジェーン・スーさんと語る「フリーランスと会社員、どっちがいいのか問題」|作家LiLy対談連載「生きるセンス Season.7」第2話

「年齢を重ねるって、どういうことですか?」作家・LiLyさんが人生の先輩を訪ねて歩いた人気連載『生きるセンス』がwebへとお引越し。より楽しく、より自由に、より心地よく生きるべく、人生のヒントをさらに深掘りしていきます。Season.7のゲストは、ジェーン・スーさんをお迎えします。
第1話▶▶ジェーン・スーさんと語る「32才がオバサンだった時代」
若い人が夢をもてないそんな社会にはしたくない――ジェーン・スーさん
LiLyさん(以下、L) 今、政治経済含めてなかなか厳しい世の中だけど、スーさんはこの時世をどう見ていますか?
スーさん(以下、S) 確かに世の中のムードはよくはないけど、私の周りを見渡したとき、芯を喰った頑張りができている人は結果を出してる。間違ってない努力をしている人がちゃんと報われる姿を見ると、その点では悪くないのかなと思ってる。
L ふむふむ。私は子供の頃から「花咲か爺さん」の話が好きで。善人が報われる世界であって欲しい、じゃなきゃ嫌だってすごく思っていて。もし今、頑張っていても結果が出ていないとしたら、それなりに理由があるのかもしれないですね。
S うん、ある。ただ本人がその理由に気づけないのが、すごく辛いところ。
L おそらく人からズバリ忠告されているのに、受け入れていないのが大きいのではと思っていて。すると、引き寄せの法則の逆バージョンで指摘してくれる客観視が上手な人が離れてしまって、負のループにハマるのではないかな、と。
S ただ、今は理由があって頑張れない人、というのもいて、彼ら彼女らが放置されてしまう世の中にはしたくないよね。さらに若い人たちが希望をもてない社会も嫌だなあ。次の世代が明るく一歩踏み出せる世の中になってほしいとは、強く思う。
L それは本当にそうです。あと、夢がないと、カルチャーもエンタメもなくなっちゃうもんね。
S 保守的になるほうが損をしない世の中なんて、つまらなすぎるでしょ?
フリーランスを選ばずに就職していたらどうなった?――LiLy
L 私自身は、たくさんの夢を見ながら育ってきたと自負しているの。ただこの年齢になって、自分の起業や子供の教育資金などなど、「あーお金!」って思うことがすごく増えて。
S お金の問題はシビアだからね。
L 昔は大手企業に就職するよりもフリーのほうが稼げる気がしたし、決まった時間に起きなくていいし、「こっちのほうが夢がある!」って思ってたの。ただ年齢重ねて体力が落ちてきて、「おや、大手企業ってすごい手厚いやん」って今更思う瞬間も増えてきて。今私は43歳で、「あのとき就職してたらそれなりに年棒も上がってて、そろそろチルできたりしたのかな」って思った時に、大学の同級生はこの未来を見越して就職したの? え、すごくない? て本当に今さらなんだけど思ったりする。まぁ、入っても辞めてた気はするから、自分の協調性のなさを自覚して、就活せずにフリーランスを選んだ20歳の自分のジャッジも正しいわけなんだけど(笑)。
S 定年がないから、この先いつまで馬車馬のように働くのか、って思うもんね。
L だから夢見ることは大切だけど、40代まで生きて「人生は長距離マラソンだな」ってあらためて感じている今、「老後とか大丈夫かな、不安だな」って初めて思ったりしています。
この道を選んだからこそ見える宝物のような風景がある――ジェーン・スーさん
S 言ってることはよくわかる。ただどっちがいい、悪いの話ではなくて、どこでリスクを背負うかの話だと思うんだよね。先に背負うのか、あとで背負うのか。
L え〜、あとで背負うのやだよ〜(笑)。
S ひとつ言えるのは、この道を選ばなかったら、LiLyさんがあれだけたくさんの本を出すことはなかったし、それらの本を愛してくれる読者に出会うこともなかったということ。
L それは本当にそう。それって要はキャリアってやつで、今までの自分ががむしゃらに頑張ってコツコツ積み上げた何者にも代え難い財産だからなぁ…。
S でしょう? 人生が長くなってしまった今、いつどこでどんなリスクを背負うのか、それは誰にとっても不透明だと思うよ。
L さっきはマラソンにたとえたけれど、人が生まれてから死ぬまでを長編小説とするならば、人生の節目節目にカラーの違う短編小説も挟まってくるわけで、そこが苦しかったとしても、そのアップダウン自体を楽しんでいかないと、ってことかな。
S そういうこと!

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次回は5月4日公開予定!
第3話「『That’s life』は魔法の言葉」
お楽しみに!
イラスト/ekore 構成・文/本庄真穂
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