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2013.8.22

大高博幸の美的.com通信(171)信念と使命感に貫かれた女性シェフの美しさ。『大統領の料理人』 試写室便り Vol.47

 Les Saveurs du Palais (C)2012-Armoda Films-Vendome Production-Wild Bunch-France 2 Cinema
Les Saveurs du Palais (C)2012-Armoda Films-Vendome Production-Wild Bunch-France 2 Cinema

「大統領、<美味しい>とは こういうことです。」
ミッテラン大統領のプライベート・シェフ、真実の物語。
大統領の料理人』(フランス映画、95分)
9.7 ロードショー。
詳しくは、www.daitouryo-chef.gaga.ne.jpへ。

【STORY】 南極基地に女性が!? オーストラリアのTVクルーが遭遇したのは一人の女性シェフ。彼女は何者で、どこから来たのか。

田園風景が広がるフランスの片田舎。小さなレストランを営む女性オルタンス・ラボリを、フランス政府の公用車が迎えに来た。オルタンスが連れて行かれたのはパリのエリゼ宮。なんとミッテラン大統領のプライベートシェフに抜擢されたのだ。
しかし官邸は規律の世界。厨房も料理も美味しくつくることを二の次にした 細かい約束事で縛られていた。その上、男たちだけで営まれてきたシェフたちのヒエラルキーの中で、オルタンスは完全に“招かれざる客”だった。それでもオルタンスは料理のこと以外は目もくれない。嫉妬や専横に構わず、美味しい料理をつくることに 真摯に豪快に突き進んでいく。
彼女が気にしているのは、自分の料理が大統領をハッピーにしているか どうかだけ。オルタンスには大統領の声が聞こえてこないし、厚い組織の前で彼女は いくつもの壁にぶつかる。今まで官邸には、食べる人の気持ちを確かめながら料理をつくる料理人は いなかったのだ。それでもオルタンスは挫けない。食事の後の皿の観察、そして いくつものメモを書き、あらゆる方法で大統領の気持ちを確かめようとする。当初は値踏みするような目で眺めていた同僚たちも、いつしか彼女の熱意と腕前に刺激され、厨房に新風が吹き始める。
実はオルタンスの料理は、大統領の心の中に確かな絆をつくっていた。お皿に食べ残しがなくなってきた ある日、彼女に直接 声をかけてきたミッテランの口から、意外な話が飛び出す――。(プレスブックより抜粋、一部省略)

1988年の南極の場面に始まり、その4年前のパリに遡って、再び南極の場面に戻るという、回想形式によって描かれる映画です。
主人公のオルタンスは、好きで得意な料理を一所懸命に作る料理人で、それを食べる人が心から満足してくれるコトだけを願っている職人気質の女性。“出るクイは打たれる”は世の常で、古株のシェフ達に意地悪をされながらも、ひたすら信念を貫く姿が感動的でした。結局は、どうにもならない事態のためにエリゼ宮を去るコトになるのですが、彼女の信念と使命感の強さには、誰もが尊敬の念を抱くでしょう。
特に印象深かったのは、映画の後半、オルタンスの厨房に大統領が突然ひとりで姿を現す場面・・・。静かな やり取りを とうして、ふたりの人間味が純粋に あふれ出てくるプロセスが最高でした。

以下、心に残った台詞を3つだけ。
「(嫉妬心から仕事を妨害するシェフ長に、オルタンスが浴びせた台詞) あなたは私のコト 大嫌いでしょうけど、私も あなたが大嫌いよ!」 そう言ったからといって何がどうなるというワケでもないのですが、シェフ長と彼の部下達の耳と心に響いたコトだけは確かです。
「(ある日 突然、ふらりと厨房へ下りて来た大統領が、オルタンスに言う台詞) 君は随分いじめられているようだね。実は私も いじめられているんだ。でも、逆境は人生のトウガラシだよ。違うかい?」
「(大統領が、子供の頃に読んで暗記していた料理本の一節を つぶやきながら、オルタンスに言う台詞) 残念ながら、この世から もう失われてしまった風流な書き出しでね。私は今でも憶えているんだ。」 このひと言で、僕はミッテラン大統領を大好きになりました。

オルタンス役のカトリーヌ・フロ(50代後半のキュートな女優)と、大統領役のジャン・ドルメッソン(80代後半の高名な文化人で、本作が映画初出演)は適役好演。また、アルチュール・デュポン演ずるオルタンスの若い助手と、イポリット・ジラルド演ずる給仕責任者の人柄の良さは、観る者の心を和ませてくれます。
脚本・監督のクリスチャン・ヴァンサンは、上記の四人には愛情を、嫉妬深い男達と管領的な人物に対しては怒りの感情を込めて描いているような雰囲気があり、僕はそこに共感を覚えました。ただしTVクルーの登場は、意味がありそうに見せながら それ程でもなく、騒々しさを感じさせただけという気が・・・。その点に関しては、より しっくりと収まるベツの表現方法があったはずと、僕は僕なりに思っています。

この映画は、“仕事”というモノを真剣に考えようとしている皆さん、自分の“存在価値”について考えるコトが よくあるという皆さんには、特に特にオススメです。

 

 

ビューティ エキスパート
大高 博幸1948年生まれ、美容業界歴46年。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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