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2017.3.21

『 ジャッキー 』『 未来よ こんにちは 』『 サラエヴォの銃声 』『 世界でいちばん美しい村 』『 娘よ 』 試写室便り 【 大高博幸さん連載 Vol.387 】

大高博幸さんによる映画試写会便り。今回は『 ジャッキー 』『 未来よ こんにちは 』『 サラエヴォの銃声 』『 世界でいちばん美しい村 』『 娘よ 』 をご紹介します。

© 2016 Jackie Productions Limited
© 2016 Jackie Productions Limited

24 歳で 未来の大統領と結婚、
31 歳で ホワイトハウスに入り、
34 歳で 未亡人となったジャッキーの
< 最後の使命 > とは?

ジャッキー
ファーストレディ 最後の使命
アメリカ、チリ、フランス/ 99 分
3.31 公開/配給:キノフィルムズ
jackie-movie.jp

【 STORY 】 1963 年 11 月 22 日、ジョン・F・ケネディ大統領は、テキサス州 ダラスでのパレードの最中に 銃撃される。目の前で愛する夫を暗殺されたジャッキー ( ナタリー・ポートマン ) は 怒りと衝撃に震えていたが、悲しんでいる時間はなかった。すぐに副大統領が新たな大統領に就任して激務を引き継ぎ、刻一刻と夫が過去の人になっていくのを目の当たりにし、彼の名と功績が後世に残るかどうかは、この数日間の自分の行動にかかっていると気付いたのだ。< ケネディ伝説 > を永遠にするために、ジャッキーは命の危険さえも顧みず、最後の使命に身を投じる――。 ( プレス資料より。一部省略 )

ケネディ大統領 暗殺の瞬間の映像は、たしか 世界初の宇宙中継によって 日本の TV にも映し出されました。当時 15 歳だった僕が見たのは、映像に乱れのある VTR での放送だと記憶していますが、① ジャクリーン夫人 ( 愛称、ジャッキー ) が、座席に倒れ込んだ大統領の後部車体に 身を大きく乗り出して、何か 小さなモノを必死で摑み取ろうとしている動きと、② 走り続ける車の後部に しがみつくだけで精一杯という様子の護衛の男性の姿とが 目に焼き付いています。さらに その後のニュース映像で、大勢の警官に取り囲まれていた狙撃犯 オズワルドが、何者かに突然射殺されるという瞬間を見たコトも、記憶に鮮明です。

本作は、ケネディ大統領 ( キャスパー・フィリップソン ) が射殺される少し前の場面から始まり、ジャッキー ( N・ポートマン ) が幼い子供たちを気丈に励ましながら、毅然とした態度で 危険な事態が予測される荘厳な国葬を、自らの意志で完逐するまでを描いています。
彼女が動揺や不安を露わにできた相手と言えば、秘書のナンシー ( グレタ・ガーウィグ ) と夫の実弟 ロバート・F・ケネディ司法長官 ( ピーター・サースガード ) のふたりだけ。
映画には、ジャッキーが LIFE 誌記者 ( ビリー・クラダップ。非常にデリケート かつ線の太い好演 ) のインタビュー ( ケネディ大統領の死に関する取材 ) を受けるシーンと、彼女がホワイトハウス内を案内した ’62 年の TV 番組出演風景が組み込まれており、そのいずれもが興味深い上、映画全体に変化と奥行きを与えていました。

N・ポートマンは、今回はオスカーを逸したものの、オスカーを受賞した『 ブラック・スワン 』 ( Vol.57 ) に勝るとも劣らない最高の演技を観せています。今までの彼女とは違う顔に見える点にも感心させられましたが ( ヘアスタイリストの腕によるところも大きい ) 、特に印象的だったのは、秘書 ナンシーとのやり取り、副大統領だったジョンソンと その夫人に対する微妙な反応、LIFE誌記者を徹底的にコントロールしようとする姿勢、馬車に先導されながら セント・マシューズ大聖堂に続く長い大通りを ゆっくりと歩いて進む葬列の場面 等々……。

監督は『 NO 』でアカデミー賞Ⓡ外国語映画賞にノミネートされ、『 The Club 』で ベルリン国際映画祭 審査員グランプリを受賞した パブロ・ラライン ( ’76年、チリ生まれ ) 。プロデューサーには『 ブラック・スワン 』の監督、ダーレン・アロノフスキーが名を連ねています。マデリーン・フォンテーヌによる衣裳も、一見の価値が充分にあります。

 

©2016 CG Cinéma • Arte France Cinéma • DetailFilm • Rhône-Alpes Cinéma
©2016 CG Cinéma • Arte France Cinéma • DetailFilm • Rhône-Alpes Cinéma

歳を重ね、潔く人生と向き合う主人公から学ぶ、反アンチエイジングな生き方。

凛として生きる。
自分のために花を買う。

未来よ こんにちは
フランス、ドイツ/ 102 分/ PG 12
3.25 公開/配給:クレストインターナショナル
crest-inter.co.jp/mirai/

【 STORY 】 パリの高校で哲学を教えているナタリー ( イザベル・ユペール ) には、教師の夫と 独立している二人の子供がいる。年老いた母親の面倒をみながらも 充実していた日々。ところが バカンスシーズンを前にして 突然、夫から離婚を告げられ、母は他界、仕事も時代の波に乗りきれずと、気づけば おひとり様となっていたナタリー。果たして 彼女の未来は どうなっていくのだろう? ( 試写招待状より )

ベルリン国際映画祭で、弱冠 35 歳の ミア・ハンセン=ラブ監督が銀熊賞を受賞。続いて、ニューヨーク、ロサンゼルス、ボストン、全米、及び ロンドンの 各映画批評家協会賞で、I・ユペールが主演女優賞を独占するという快挙を成し遂げたヒューマンドラマ。

今回、 I・ユペール ( ’53 年生まれ、63 歳 ) が演ずるのは、50 代後半の哲学教師。予想もしなかった離婚話の後、まさかというほど次々と起こる出来事に、怒り、うろたえ、涙する彼女が、まだまだ輝く未来が必ずあると信じるに至る 心の軌跡を描いています。最終的に彼女は、未来に希望を見い出した自分自身に 幸福と喜びを感じるという、決して暗くも明るすぎもしないエンディングに 僕は好感と共感を抱きました。
自分自身を いつか確立したいと願っている皆さん、そして 今までの自分の生きかたに ふと疑問を感じたコトがあるという皆さんには、年齢に関係なくオススメします。

I・ユペールは、数年前の『 愛、アムール 』や『 3 人のアンヌ 』 ( Vol.158 ) の頃と比較すると、自身の加齢を前面に押し出すようになってきています。前作『 母の残像 』 ( Vol.369 ) に続き、本作でも ファンデーションを使わずに カメラの前に立っているシーンがありました。それは スター女優のひとりとして 覚悟と勇気の要るコトで、僕は心から立派だと思いますが、「 憧れの女優には、そんなコトは してほしくない 」というファンも少なからずいるはずで……。まあ、あまり極端に走らずにいてほしいというのが、僕の本音ではあります。
本作では 花柄の服を着ているシーンが多かったようですが、どちらかと言うと彼女には、無地のデザインのほうが似合うと感じました。しかし、驚くほど堂々と太っていく往年の女優たちの中で、すっきりとした中性的な体型を保っている姿には、彼女の使命感のようなモノさえ感じられます。

ナタリーの夫を演ずるのは『 不機嫌なママにメルシィ! 』 ( Vol.247 ) や『 偉大なるマルグリット 』 ( Vol.328 ) での好演が記憶に新しい アンドレ・マルコンですが、今回は 持ち味として ミスキャストという印象。ナタリーの かつての教え子を演ずる ロマン・コリンカ ( ’86年生まれ ) は 或る種のセックスアピールの持ち主で、日本でも人気を集めそう。

 

© Margo Cinema, SCCA/pro.ba 2016
© Margo Cinema, SCCA/pro.ba 2016

サラエヴォ事件から 100 年の式典。
〝 ホテル・ヨーロッパ 〟の緊迫は、
ふたたび 一発の銃声で破られる――。

ダニス・タノヴィッチ監督 最新作

サラエヴォの銃声
フランス、ボスニア・ヘルツェゴビナ/ 85 分
3.25 公開/配給:ビターズ・エンド
www.bitters.co.jp/tanovic

【 STORY 】 〝 ホテル・ヨーロッパ 〟は、第一次世界大戦のきっかけとなったサラエヴォ事件から 100 年の記念式典を行うための準備に追われていた。屋上で戦争と結果についてインタビューするジャーナリスト、演説の練習をする VIP 、ストライキを企てる従業員と それを阻止しようとする支配人。人びとの思惑が複雑に絡み合い、やがて 高まる緊張のなか、一発の銃声が鳴り響く――。 ( プレス資料より抜粋 )

『 鉄くず拾いの物語 』 ( Vol.193 ) や『 汚れたミルク 』 ( Vol.385 ) の監督、D・タノヴィッチの最新作です。社会性の濃い内容で、サラエヴォ事件 ( 1914 年 6 月、オーストリアとハンガリーという二重帝国の皇太子と皇太子妃が、19 歳のボスニア系セルビア人に射殺された大事件。それが引き金となり、第一次世界大戦が勃発した。ボスニア・ヘルツェゴビナ国内では、現在も その暗殺者を テロリストとみなす意見と 英雄とみなす意見が混在しており、それが本作の重要なテーマとなっている ) について無知な僕にとっては、ピンと来ない部分が多い内容……。
しかし 16 時 40 分に始まる物語が、上映時間と全く同じ 85 分後に終るという展開に緊張感が漲り、全篇を興味深く観ました。

群像劇のスタイルを採用した構成で、カメラは フロントの主任 ラミヤ ( スネジャナ・ヴィドヴィッチ ) が ホールからホテルの裏側 ( クリーニング作業場や調理室等 ) までを 忙しく歩き回る姿を追いながら、名優 ジャック・ウェバー扮する VIP のスイートルーム、支配人室、屋上のシーン等を挟み込むように映し出していきます。
ビューティの世界とは全く無縁と言える内容ですが、前述の 2 作品等でタノヴィッチ監督を敬愛している皆さんには、ぜひ一見をオススメします ( 血生臭い映画では 全くありません ) 。僕にとっては サラエヴォ事件について、これから少しづつでも勉強しようと思わせてくれた作品です。

P.S. 本作は、ベルリン国際映画祭で銀熊賞 ( 審査員グランプリ ) と国際批評家連盟賞を W 受賞しました。また、本年度アカデミー賞®外国語映画賞 ボスニア・ヘルツェゴビナ代表作品に選出されています。 ( 2.21 記 )

 

(C)Bon Ishikawa
(C)Bon Ishikawa

大地震を乗り越えて、強く生きる。
家族と人々の絆を感じる あたたかな日常。
そこには、忘れていた人間本来の生き方があった。

世界でいちばん美しい村
日本/ 108 分
3.25 公開/配給:太秦
himalaya-lapark.com

【 INTRODUCTION 】 2015 年 4 月、約 9000 人の犠牲者を出した ネパール大地震。写真家・石川梵は 震災直後、ジャーナリストとして初めて現地へ入り、ヒマラヤ奥地の震源地・ラプラック村に たどり着いた。
雄大なヒマラヤの大自然、その懐で慎ましく暮らす人々。こどもたちの輝く眼差しと明るい笑顔。貧しくも助け合って生きる家族、そして祈り。
大地震で壊滅した村が、悪戦苦闘しながら復興を果たそうとする 叙事詩的物語。 ( プレス資料より抜粋 )

写真家 兼 ノンフィクション作家の石川梵 ( いしかわ ぼん ) が、初めて手掛けたドキュメンタリー映画。時に どのような場所から どのように撮影したのかと思わせもする、ユニークかつ美しい映像に 目を奪われました。

ここに描かれているのは、生まれ、育ち、暮らしてきたラプラック村に愛着を抱き、家族や近隣の人々と助け合いながら、覚悟と希望を持って生きる村人たちの姿であり、震災被害の凄さではありません。さらに 14 歳の少年 アシュバドルを筆頭に、村の人々が 撮影者でもある石川監督に 親愛の情を抱いていると分かる人間的な関係性が、ほゞ全ての場面に溢れ出ていた点は ドキュメンタリー映画として稀有なものでした。

映画の最初と最後に映し出される、ヒマラヤ蜂 ( その巣は 切り立った崖の中腹にある ) の蜜を採取する男たちの姿が、この村の千年の営みを端的に伝えていたコトも、とても良かったと思います。

ナレーターは倍賞千恵子。その透き通った声と静かな口調が、耳に心地よく感じられました。
地味な一篇ながら、東銀座の東劇でロードショーされるとのコトです。

 

© 2014-2016 Dukhtar Productions, LLC
© 2014-2016 Dukhtar Productions, LLC

遥かなるカラコルム山脈の麓――。
婚礼の当日、花嫁となる 10 歳の娘を守るために、
命を賭けた 母と娘の脱出が始まる!

娘よ
パキスタン、アメリカ、ノルウェー/ 93 分
3.25 公開/配給:パンドラ
www.pan-dora.co.jp

【 STORY 】 遥か カラコルム山脈の麓、戦いと融和を繰り返しているパキスタンの山岳部族。部族間のトラブルを収めるため、相手の老部族長の花嫁に指名されたのは 10 歳になる娘。かつて同じように 若くして嫁がされた母親のアッララキは、部族の掟を破り、幼い娘を連れて 必死の逃亡を図るが……。 ( 試写招待状より )

実話を元に構想 10 年、日本で初めて公開されるパキスタン映画。
製作・脚本・監督は、これが 長編第一作となる 女性監督 アフィア・ナサニエル ( ’74 年生まれ ) 。
本作は アカデミー賞Ⓡ外国語映画部門に選出された後、フランスのクレテイユ国際女性映画祭をはじめ カナダ、アメリカ、イギリス、インドで開催された国際映画祭で 数多くの賞を獲得しました。
「 好きになった相手と見つめ合うと、赤ちゃんが生まれる 」と信じ込んでいる 幼い娘を救うために、死を覚悟の上で逃亡を決行する母の勇気を軸に、愛や友情、嫉妬を絡めた サスペンスフルなヒューマンドラマです。

女性をモノ同然に扱う部族間の 伝統・慣習・掟は、まるで大昔の話のように感じられますが、驚くべきコトに、これは携帯電話やカセットテープレコーダーも登場する現代の物語。
ラストに用意されている 喧噪のラホールでのクライマックスは、’31 年のアメリカ映画『 最後の偵察 』 ( ウィルヘルム・ディターレ監督、リチャード・バーセルメス主演作 ) に於ける デイヴィッド・マナースの最後の登場シーンを想い出させ、やゝ唐突な あっ気ない印象も僕は受けましたが、監督をはじめ クルーと出演者全員が 一丸となって完成させた作品であるコトは、映画全体から伝わってきます。

主役のアッララキを演ずるのは、美しくチャーミングな サミア・ムムターズ。幼い娘 ザイナブ役は サーレハ・アーレフ、母娘の逃避行を偶然のコトから助ける破目になる ワケありのトラック運転手役は モヒブ・ミルザーが演じています。また、アッララキが ラホールで再会を果たす 老いた母親役の女優が 実に実に素晴らしく、主題のインパクトを高めていたコトも特筆に価します。

 

 

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info@biteki.com
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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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