健康・ボディケア・リフレッシュニュース
2016.2.16

大高博幸の美的.com通信(328) 『これが私の人生設計』『人生は小説よりも奇なり』『クーパー家の晩餐会』『偉大なるマルグリット』 試写室便り Vol.109

korewata
(C)2014 italian international film s.r.l

勝ち組から一転。
仕事も恋も全くウマくいかないんですが、
問題発生中?

アラサー & アラフォー独身女子必見!

これが私の人生設計
イタリア/103分/PG12
3.5 公開
korewata.com

【STORY】 建築家として世界各国で華々しいキャリアを積んできたセレーナは、ふと自分を見つめ直し「新たなステップ」を踏み出そうと 故郷のローマに帰ってきた。しかし、イタリアの建築業界は男性中心の社会で、ろくな仕事にも就けず 貯金も底をつく。しかたなくレストランでウエイトレスとして働き出すと、超イケメンのオーナー、フランチェスコが何かと優しくて、ついつい彼に恋してしまう。しかし、クラブで男たちに囲まれて超絶に踊り狂うフランチェスコを見て〝ゲイ〟だと気付き、あえなく失恋。結局、2人は友情で結ばれる。そんな時、公営住宅のリフォーム建築案の公募を知ったセレーナは、自分はアシスタントだと偽って面接に臨む。すると企画が採用され、困ったセレーナは…。(プレスブックより。一部省略)

この半年間ほど 割と深刻な映画を続けて観てきたせいもあるとは思うけれど、コレは とても面白くて好感度大、明るい開放的な気持ちを満喫しました。ほんの少しだけモタつきを感じた部分があったにしても テンポが良くて、単純に陽気なだけじゃないイタリア人気質を、じんわりと感じさせてくれたところも良かったです。
全篇にわたってテンション高めのコメディドラマで、メインタイトルの段階で 既に笑ってしまう あなたなら、最後まで100%楽しめます(But、どちらかと言えば 暗い or ノリの悪いタイプの方は、「マンボ・イタリアーノ」(かなり古いヒット曲だけど)でも聴いて エンジンをかけてから、映画館へ入るほうがいゝかも)。

本作は、自分以外の人間に なりすます必要に迫られた セレーナとフランチェスコの行動に第一の面白さがあるのですが、それが社会の風潮や問題と絡んでいるところに 映画としての強さが感じられます。しかも 彼ら(主にセレーナ)は、自己犠牲や人々への貢献を惜しむコトなく 前進しようとガンバっているので、観ていて気持ちがいいのです。
リッカルド・ミラーニ監督は「自分の人生の主人公や作り手に 完全には なりきれない人たちを描きたいというのが、私の思い」だと語り、さらに本作では「イタリア人を自嘲気味に描きたいという誘惑を、初めて実行に移した」とのコトでした。

セレーナ役の パオラ・コルテッレージ(1973年生まれ。イタリアで大人気の美人マルチタレント)は、顔の角度によって 目の下に凹みの影が出るものの、肌はクリーミィで とびきり綺麗。とても40を過ぎているようには見えません。本来 コメディエンヌという雰囲気ではないにも拘らず、頭がきれる割に 余計な ひとことを発して 損してしまうタイプのセレーナを 好・熱演。
フランチェスコ役は、マッチョな役柄を得意とする元水泳選手の ラウル・ボヴァで、今回は 甘くて粘っこくもある目つきに 独特なセックスアピールを漂わせています。
ふたりのコンビネーションは文句なし。たゞ ひとつだけ気になったのは、ツヤやかな肌のセレーナと並んで映ると、フランチェスコの肌が 2トーンはマットに見えたコト。撮影のために、テカリ防止のパウダーで抑えすぎてしまった感じ…。もう少しツヤを残せば、もっと精悍に見えたはず。

こゝで、ふたりの会話を ひとつ 御紹介しておきます。
「教えて。なぜ 私に 優しくするの?」
「子供みたいで 世話を焼きたくなるんだ。君は いつも なりふり構わない慌てん坊で、ドジばかりしてる。そこが いいからだ」(フランチェスコがゲイだと知って 口ゲンカした後、ふたりが仲直りする場面での会話。しかし セレーナは、ウエイトレスとしては ドジどころか、拍手したいほど素晴らしい。お客様が注文したくなるコツを心得ているし、なんと 日本人の団体客には、日本語でメニューの説明を上手にしてしまうんです)。

主役のふたりの他に 意外なほど魅力的だったのは、ルネッタ・サヴィーノ演ずるミケーラ(建築会社のボスの秘書)でした。彼女の登場々面には 最初から注目していてほしいのですが、ボスの息子の誕生日プレゼントを用意していたミケーラが、会社の玄関先で見せる表情の微妙な変化に、僕は 突然、涙をポロポロとコボしました。彼女のような女性が、現実に 少なからずいるというコトを、皆さんも大人なら、ぜひ知っていてほしいです。
その他〝ちょっと目にイヤな奴〟と思わせる複数の人物も、全員が大切な人に思えてくる心優しい映画。こんなの、滅多に お目に かゝれません。アラサー & アラフォーの皆さんには、独身・既婚に関係なく、心からオススメしたい一篇です。

 

©2015 CBS FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.
©2015 CBS FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

最悪の晩餐会の 最高に美味しい結末とは?

ハッピーもハプニングも人生をまるごと味わう術を教えてくれる、
愛とユーモアの感動作!

クーパー家の晩餐会
アメリカ/107分
2.19 公開
gaga.ne.jp/coopers

【STORY】 イヴの朝、母 シャーロットは 一大決心を固めていた。4世代11人の一族が集まる今日の夜を「完璧なクリスマス」にするのだ。夫のサムとの離婚が決まり、一家全員の団らんは これが最後になるからだ。しかし、秘密を抱えているのは 彼女だけではなかった。娘のエレノアは 不倫の恋を隠すため 空港で出会った青年に恋人役を演じてくれと頼み、息子のハンクは 失業を隠し、妹のエマに至っては 万引きで逮捕!? 始まる前から波乱いっぱいの晩餐会が、いよいよ幕を開ける――。(チラシより)

予定調和的ではあるけれど展開が面白く、十中八九は好まれる ハートフル かつスマートなコメディ。離婚寸前の シャーロット(ダイアン・キートン)と サム(ジョン・グッドマン)の夫婦仲、ハンク(エド・ヘルムズ)のキャリアと人生の危機、エレノア(オリヴィア・ワイルド)の恋愛騒動、シャーロットの妹 エマ(マリサ・トメイ)のブローチ万引き事件、祖父 バッキー(アラン・アーキン)と ダイナーで働くルビー(アマンダ・セイフライド)との 友情 or 恋のゆらぎ……、それぞれが観客の興味を惹きつけるに十分です。
特に良かったのは、エマを捕える ロボット的でいて実は繊細なポリスマン(アンソニー・マッキー)、家族に不倫を知られたくないエレノア(O・ワイルド。『サード・パーソン』や『her 世界にひとつの彼女』(通信(232))辺りと比べて、カドが取れてきた感じ)、彼女にナンパされる軍人 ジョー(ジェイク・レイシー。『キャロル』(通信(326))で テレーズの恋人役を演じた新人。本作では パーソナリティが前面に押し出されている)、そして ウエイトレスのルビー(A・セイフライド。『ラヴレース』(通信(205))や『パパが遺した物語』での主役よりも、この脇役のほうが はるかにいい)。さらに ナレーター(!)も務めている愛犬のラグス(オーストラリアンシェパード、大阪生まれのボルト)が、物語を まとめ上げているところもチャーミング。

画面はトップシーンからラストまで色彩効果が抜群。料理も全て美味しそうで、この映画は特に女子受け確実です。唯一 首をひねりたくなったのは 公開スケジュール。クリスマスもヴァレンタインデーも外しているのは なぜだろう……。

以下、印象に残った台詞×3。
1) 「その日だけ幸せになろうとしてもムリ」。
2) 「自分の心にフタをすると、結果的に孤独になってしまうよ」。
3) 「嘘は嘘でも、思いやりの嘘というのもあるの!」。

監督は、『グッドナイト・ムーン』『I am Sam アイ・アム・サム』『ブラザーサンタ』の ジェシー・ネルソン。
P.S. D・キートンは『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』(通信(323))の時よりも、肌に柔らかさと透明感があって綺麗でした。肌の色と質感は、やはり とても大切。

 

marglit
(c)2015 – FIDELITE FILMS – FRANCE 3 CINÉMA – SIRENA FILM – SCOPE PICTURES – JOUROR CINÉMA – CN5 PRODUCTIONS – GABRIEL INC.

リサイタルを開くというマルグリットの夢を
なぜか応援するひと、全力で止めるひと。
もし、彼女が真実を知ったら――?

音楽への壮大で残酷な片想い。

偉大なるマルグリット
フランス/129分/PG12
2.27 公開
www.grandemarguerite.com

【STORY】 1920年、パリから そう遠くない貴族の邸宅で、恒例のサロン音楽会が開かれていた。初めて参加した新聞記者は、主催者で主役の マルグリット・デュモン男爵夫人の歌声に唖然とする。彼女は 絶望的なほど 音痴だったのだ。儀礼的な貴族と 金銭目当ての客から拍手喝采が贈られ、本人は 全く そのことに気づいていないようだった。野心家の記者は マルグリットに近付こうと 翌日の新聞で絶賛、彼女を出演者の一人として パリの音楽会に招待する。
前衛的な舞台は大失敗するが、本物の観客の前で歌う喜びに目覚めたマルグリットは リサイタルを開くと決意、真実を告げられない夫のジョルジュが止めるのも聞かず、有名歌手から特訓を受ける――。(プレスブックより。一部省略)

カーネギーホールの舞台に立ったコトもある米国のソプラノ歌手、フローレンス・F・ジェンキンスという 実在の人物にインスピレーションを得て作られたオリジナルストーリー。主演は ヒット作『大統領の料理人』(通信(171))で好演した カトリーヌ・フロ。監督・脚本は『ある朝 突然、スーパースター』の グザヴィエ・ジャノリ。「喜劇と悲劇の境界線上にある」という ハリウッド・レポーター紙の評が 言い当てゝ妙。

マルグリットの音痴ぶりは想像した以上で、鵞鳥のような金切り声を張り上げ、しかも音程は完全に外れている…。映画は 彼女の一途な愛と孤独と情熱を描くと同時に、いかに裕福であっても 愛情と才能は手に入るとは限らないという 苦い事実を浮かび上がらせます。しかし、必要不可欠とは思えない脇筋を整理して、マルグリットと夫との関係を 別の角度からも描いていたなら、本作は より感動的な一篇となったはず。脇役たちの扱いが中途半端に終っているのも、脚本の練り不足と言えそうです。

以下、印象に残った 台詞・場面・出演者。
1) 「あなた、何を怖れているの?」
「君が心配なんだ。歌うのは自尊心のためなのか? それとも喝采を浴びたいからなのか?」
「分かっていないのね、妻の気持ちを。音楽は私の全て。それしかないの。あなたが聴いてくださらなくても歌うつもりよ。じゃないと 私、気がヘンになる」(マルグリットと夫との会話)。
2) 「妻が舞台で本当に歌ったら、どうなる?」
「誰に批判する権利があると おっしゃるのですか?」(夫と執事のマデルボスとの会話。実は マルグリットの本当の気持ちを、この誠実な執事は見抜いている)。
3) 「人生には ふたつの道がある。夢を見るか、達成するか」(トランプ占い師の台詞)。
4) マルグリットの前座を務めるために邸を訪れる、新人歌手 アデル役の クリスタ・テレ(24歳前後)。『ルノワール 陽だまりの裸婦』(通信(178))から約3年、とても美しい大人の女優に成長しつゝあります。
5) 新聞記者のボーモンが、美しい影絵の装置とコロマンデルの屏風のある阿片窟で、阿片を吸うユニークな場面。
6) マルグリットの扮装写真のカメラマンでもある執事が、ラスト近くで撮影する夫婦の写真。それは扮装写真ではないにも拘わらず、まるで『ラ・ボエーム』(1926年のMGM映画)の ミミとロドルフ(リリアン・ギッシュと ジョン・ギルバート)のパブリシティスティル そのもののようでした。

 

© Love is Strange, LLC
© Love is Strange, LLC

思いやりが溢れる、心優しい傑作。―― Firstshowing.net
切なく、そして究極に美しい、今年の ベスト・フィルム。―― Paper Magazine
とてつもなく感動的。―― Vanity Fair

ぼくらは結婚して、家もお金も仕事も失った。
それでも まるごと愛おしい、我らが人生!

人生は小説よりも奇なり
アメリカ/95分
3.5 公開
jinseiha.com

【STORY】 ニューヨーク、マンハッタン。39年来 連れ添ってきた画家のベンと音楽教師のジョージは 念願かなって結婚した。周囲の あたたかな祝福を受けて、二人の新たな生活は順調に始まるはずだったが……。同性同士の入籍が理由で ジョージは勤務先をクビになり、絶妙なバランスで保たれていた生活は いとも簡単に崩れてしまう。保険、年金、不動産…… 現実問題が次々と押し寄せ、二人は 長年暮らしたアパートメントを離れ、別居を余儀なくされる。ベンは ブルックリンに住む甥のもとへ、ジョージは アパートの隣人で警官のゲイカップルのもとへ。社会からの根強い差別と肩身の狭い居候生活に心が押しつぶされそうになりながら、ベンとジョージは 互いの存在の大切さ、自分を理解してくれる人がいることの幸せに 改めて気づくのだった。(試写招待状 & プレスブックより。一部省略)

2011年に同性婚が合法化されて 2年めのNYを舞台とした、質の高い大人の悲喜劇。監督・脚本は『ミシシッピの夜』『あぁ、結婚生活』の アイラ・サックス。ベン(71歳)役は『愛と追憶の日々』『インターステラー』の ジョン・リスゴー。ジョージ(50代後半ぐらい)役は『スパイダーマン 2』『ダヴィンチ・コード』の アルフレッド・モリーナ。

本作は 長年にわたって育んできたベンとジョージの愛情の中身、お互いを どれだけ大切にしてきたかという生活の中身に光を当てゝいます。上映時間95分を ムダや受け狙いのない洗練された作風で紡いでいて、僕は見終えてからジーンときて泣けました。そして、バーブラ・ストレイザンドの代表曲のひとつである『ピープル』の歌詞を想い出していました(「世界中で最も幸運なのは、愛を求めあう人たち……」という意味の歌詞に始まる名曲です)。
詳しくは書きませんが、この映画は 人生の大切なところで臆病になってしまう人々、真の自分を隠したり スリ替えたりしてしまうような弱さを 少しでも自覚自認している人々には、ぜひとも観てほしいと思っています。

特に印象に残ったのは(ストーリーの展開を予め知りたくない方は、読まないでください)……、
1) 学校を解雇されたジョージが、生徒の保護者たちに向けて書いた お別れの挨拶文(小さな女の子のピアノレッスンの場面に、オーバーラップする形で読み上げられる)。
2) 別居に耐えかねたジョージが、ベンの居候先を訪れて、子供のように泣きじゃくる場面(ベンは 黙ってジョージを抱きしめ、甥夫婦は 遠慮して 彼らをふたりだけにしてあげる)。
3) ベンが 居候先の少年 ジョーイに「誰かに愛を感じたコトはあるかい?」と聞く中盤の場面。
4) ジョーイが ベンのアドバイスを実行に移すラストシーン(ジョーイは 愛を感じていた女の子と、明るい光の中をスケートボードで走って行く。その直前の ふたつの場面も忘れがたい)。

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
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info@biteki.com
(個別回答はできかねますのでご了承ください。)  

ビューティ エキスパート 大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

 

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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