健康・ボディケア・リフレッシュニュース
2017.3.7

『 ラビング 』『 エイミー、エイミー、エイミー! 』『 汚れたミルク 』『 牯嶺街少年殺人事件 』 試写室便り 【 大高博幸さん連載 Vol.385 】

黒人と白人の結婚が違法だった州で、なぜ彼らの愛が 法律を変えたのか?実話から生まれた、アメリカ史上 最も純粋なラブストーリー。レンガ職人の リチャード・ラビング ( ジョエル・エドガートン ) は、恋人のミルドレッド ( ルース・ネッガ ) から妊娠したと告げられ、大喜びで結婚を申し込む。時は 1958 年、ここバージニア州では、異人種間の結婚は 法律で禁止されていた。だが、子供の頃に出会って育んだ友情が、愛情へと変わっていったリチャードとミルドレッドにとって、別れるなど あり得ないことだった。二人は 法律で許されるワシントン D.C. で結婚し、地元に新居を構えて暮らし始めるが、夜中に突然現れた保安官に逮捕されてしまう。二人は、離婚か 生まれ故郷を捨てるか、二つに一つの選択を迫られる――。

%e3%83%a9%e3%83%93%e3%83%b3%e3%82%b0
(C)2016 Big Beach, LLC. All Rights Reserved.

黒人と白人の結婚が違法だった州で、
なぜ彼らの愛が 法律を変えたのか?

実話から生まれた、アメリカ史上 最も純粋なラブストーリー。

ラビング
愛という名前のふたり
イギリス、アメリカ/ 123 分
3.3 より公開中/配給:ギャガ
gaga.ne.jp/loving/

【 STORY 】 レンガ職人の リチャード・ラビング ( ジョエル・エドガートン ) は、恋人のミルドレッド ( ルース・ネッガ ) から妊娠したと告げられ、大喜びで結婚を申し込む。時は 1958 年、ここバージニア州では、異人種間の結婚は 法律で禁止されていた。だが、子供の頃に出会って育んだ友情が、愛情へと変わっていったリチャードとミルドレッドにとって、別れるなど あり得ないことだった。二人は 法律で許されるワシントン D.C. で結婚し、地元に新居を構えて暮らし始めるが、夜中に突然現れた保安官に逮捕されてしまう。二人は、離婚か 生まれ故郷を捨てるか、二つに一つの選択を迫られる――。 ( チラシより )

ワシントン D.C. で婚姻届けを正式に受理されながら、故郷のバージニア州では法令違反の犯罪者として扱われるという、約半世紀前の米国の 無法とも言える真実のドラマ。しかし ラビング夫妻の愛情が人権協会を動かし、異人種間の結婚が完全に合法化 ( ’67 年 ) されるという、安堵の結末に至る構成……。

その事実上の第一歩となったのが、司法長官 ロバート・F・ケネディ宛に ミルドレッドが書いた一通の手紙だったコトに、僕はとても驚かされました。R・F・ケネディ ( ’63 年に暗殺された米国第 35 代大統領 ジョン・F・ケネディの実弟。彼がミルドレッドの手紙を受け取ったのは、暗殺事件発生の数ヶ月前? ) はスクリーン上に登場しませんが、彼は このケースを米国自由人権協会に委ねます。さらに その協会所属の 弁護士 コーエンは 公民権専門弁護士 ハーシュコプとコンビを組み、「 州裁での敗訴というステップを踏んで、最高裁への上訴に持ち込もう 」と作戦を立て、それを遂行していくのですが、そのプロセスが脇筋として描かれている点にも 興味を そゝられました ( たゞし、最高裁での勝利の瞬間の場面がなかったコトは、少々不満 ) 。

J・エドガートンは 口下手で無器用だが 実直なリチャード役を、R・ネッガ ( アカデミー賞®主演女優賞にノミネート ) は 物静かで控えめな性格でいて、断固たる行動力の持ち主でもあるミルドレッド役を 揃って好演。
脇役として印象的だったのは、ふたりの弁護士、コーエン役の ニック・クロールと ハーシュコプ役の ジョン・ベース。N・クロールが その初登場シーン ( スティル、上から 2 枚め ) で、観客に多少の不信感を抱かせる 演技・演出も巧みでした。
また、前半に登場する弁護士 ビーズリー ( ビル・キャンプ ) が、ラビング夫妻のピンチを救おうと、身を挺して裁判官に嘘を言う場面も感動的。あのような嘘ならば、時に応じて つくべきだと、僕は改めて確信しました。

この実話をベツの角度から捉えて、コーエンとハーシュコプを第一主役に、ビーズリーや LIFE 誌のカメラマン ( マイケル・シャノン ) を重要な脇役に配した映画が作られてもいゝのでは……? 本作は、そんな想像を膨らませもする、幅と奥行きを備えています。
監督は『 MUD -マッド - 』 ( Vol.199 ) で注目された若手の ジェフ・ニコルズ。プロデューサーのひとりとして『 英国王のスピーチ 』 ( Vol.47 ) でアカデミー賞®主演男優賞に輝いた コリン・ファースが名を連ねています。 ( 2.20 記 )

 

%e3%82%a8%e3%82%a4%e3%83%9f%e3%83%bc
(C)2015 UNIVERSAL STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

オンナを楽しむマイルール
1. 絶対に電話番号は教えない!
2. 決して お泊りはしない!
…でも、ここらで一度、立ち止まってみようかな?

エイミー、エイミー、エイミー!
こじらせシングルライフの抜け出し方
アメリカ/ 125 分/ R 15+
3.4 より公開中/配給:インターフィルム
www.interfilm.co.jp/amyamyamy/

【 STORY 】 幼い頃に離婚した父親から「 一夫一婦なんて悪だ! 」と教えられたエイミー ( エイミー・シューマー ) 。その影響で恋愛はせず、男性とは一夜限りの関係と割り切り 自由奔放に生きていた。そんな生活にマンネリ感を持ち始めた頃、仕事でスポーツ外科医のアーロン ( ビル・ヘイダー ) の記事を執筆することに。彼との出会いをきっかけに、エイミーは自身の人生を見つめ直し 生きていこうと決心するが、今までの自分が邪魔をして アーロンとの関係にも亀裂が……。今さら自分を変えることも出来ず 諦めかけたエイミーだったが、ある行動に出る。 ( プレス資料より。一部省略 )

2015 年の TIME 誌で「 世界で最も影響力のある 100 人 」に選ばれた全米人気 No.1 コメディエンヌの A・シューマーと、『 40歳の童貞男 』の ジャド・アパトー監督がタッグを組んだロマンティックコメディ。幼い頃に叩き込まれた父の言葉が呪文のように作用して、行きずりのセックスには積極的だが、恋愛経験はゼロのまゝというエイミーのキャラが 現代女性たちの共感を呼び、全米で大ヒットを記録した作品です。

舞台はニューヨーク。エイミーは出版社に勤務する雑誌記者。映画のジャンルとしては 前途のとうりのロマンティックコメディ。But、前半はコメディ調のポルノのようで ( 爆笑を誘いながらも インパクトの強いセックスシーンが、確か 3 回、出てきました ) 、中盤から正統的なタッチに変わるという展開。後半には しんみりとさせられる場面も用意されています。

エイミー役の A・シューマー ( 30 代の中端 )は、少女と熟女の魅力が共存しているような個性がユニーク。彼女とアーロン役の B・ヘイダーとのコンビネーションも面白い上に、ゲスト出演者を含めて 脇役陣も 相当 充実しています。
これは仲よしの友だちと気楽に観るのにピッタリの映画。たゞし、生真面目すぎない友だちと が正解でしょう。

 

%e6%b1%9a%e3%82%8c%e3%81%9f%e3%83%9f%e3%83%ab%e3%82%af
© Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014

巨大グローバル企業が販売する「 世界最高の粉ミルク 」。
その裏側で奪われる小さき命たち――。

子どもたちを守るため、男は世界最大企業を敵にまわした。

汚れたミルク
あるセールスマンの告発

インド、フランス、イギリス/ 90分
3.4 より公開中/配給:ビターズ・エンド
www.bitters.co.jp/tanovic

【 STORY 】 1997年。あるグローバル企業が、パキスタンで粉ミルクを販売したことによって、不衛生な水で溶かした粉ミルクを飲んだ乳幼児が死亡する事件が発生。セールスマンのアヤン ( イムラン・ハシュミ ) は、自らが販売した商品が子どもたちの命を奪っていることに気づき、世界最大企業を訴えようとする。アヤンの前に立ちはだかる、途方もなく巨大な権力の壁。しかし、男は 人生の全てを投げうって立ち向かう。子どもたちを守るため、そして愛する家族のために――。 ( プレス資料より。一部省略 )

アカデミー賞®外国語映画賞 etc、数々の賞に輝いた『 ノー・マンズ・ランド 』 ( ’01 ) 、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を含め三冠を手にした『 鉄くず拾いの物語 』 ( Vol.193 ) の ダニス・タノヴィッチの監督作品。’14 年に完成していた問題作で、なんと 今回が 世界初の公開とのコト。内容からして 映画化に困難を極めた上、公開に こぎつけるのも 大変な話だったようです。

まず 観賞前に、予め知っておいてほしいコトが幾つかあります。
① 問題の粉ミルクですが、製品自体に 子供たちの命を奪う 不純物 or 毒性物質が含まれていたワケではないコト。
② 粉ミルクには 母乳のような 新生児の免疫力を育む力がないコトと、それ以上に 購入者たちが 不衛生な水で粉ミルクを溶かして子供に与えたコトが要因となり、下痢から脱水症状を引き起こした子供たちが多数死亡したという事実 ( パキスタンでは 水道が整備されていないため、貧困層の人々は 清潔な水の入手が極めて難しいという 社会的背景があります ) 。
③ パキスタン人の多くは 外国製品に対する信頼や憧れが強い一方で、親が粉ミルクを水に薄く溶かして ( 検約して ) 子供たちに与えていたため、子供が栄養不足に陥った末に亡くなるケースもあったという事実。
しかし 一番の問題は、パキスタンが 清潔な水の入手が困難な地域であるコトを十分に知りながら、粉ミルクの販売を企業が強行した or 押し進めた点にあります。それがなければ、事件は発生しなかったと考えられるのです。これは 企業姿勢、マーケティング戦略の 重大な問題に他なりません。

本作は 実話に基づき、その経緯を濃密に追った一種の告発モノですが、アヤンの無謀とも言える奮闘を力強く描写している点で、告発モノのジャンルを超えている感があります。
タノヴィッチ監督らしいと感じたのは、第一に 真面目で真摯な語り口。第二に、アヤンが就職試験に出向くという最初のほうのシーンで、近隣の人々が 彼にジャケットや靴を自発的に貸す、及び 採用を家族同然に祝うという描写が盛り込まれていた点です。また、企業側から脅迫されて 心が揺らいだアヤンを、彼の美しい妻が叱り励ますという場面にも、タノヴィッチ作品ならではの味わいがありました。

僕自身は、一本の映画としては『 鉄くず拾いの物語 』のほうが好き。But、本作には 考えさせられる点、思い当たる点、憤りを感じる点が多々あり、この種の映画に少しでも惹かれるところのある方々には、ぜひ観てほしいと思っています。
なお、インディワイヤー紙は「 ( これは ) 報道されてこなかった、今もなお 解決され ( てい ) ない事件。社会から引き裂かれた状況下にある人々に、真摯な声を届けた D・タノヴィッチ監督の勇気に 拍手を送りたい 」と書いています。

P.S. 本作公開の 3 週間後、タノヴィッチの最新作『 サラエヴォの銃声 』が公開されます。彼のファンの皆様は 乞う御期待 ( 本作の有料チケット半券を 手元にキープしておいてください。ちょっと いゝコトがあります ) 。

 

(c)1991 Kailidoscope
(c)1991 Kailidoscope

伝説の傑作が 25 年の時を経て、デジタルリマスター版で蘇る。
エドワード・ヤン監督作品

牯嶺街少年殺人事件
台湾/ 236 分/ PG 12
3.11 公開/配給:ビターズ・エンド
www.bitters.co.jp/abrightersummerday

【 STORY 】 1960 年代初頭の台北。夜間高校に通う小四 ( シャオスー ) は 不良グループ〝 小公園 〟に属する王茂 ( ワンマオ ) らと つるんでいた。小四は ある日、小明 ( シャオミン )という少女と知り合い、淡い恋心を抱く。小明は 小公園のボス、ハニーの女だった。姿を消していたハニーが突然戻ってきたことで グループ同士の対立は激しさを増し、小四たちを巻き込んでいく……。 ( 試写招待状より )

題名にある牯嶺街は〝 クーリンチェ 〟と読みます。英語題名は『 A Brighter Summer Day 』。
これは、 名匠 エドワード・ヤン監督が 1991 年に発表した作品で、BBC が ’95 年に選出した「 21 世紀に残したい映画 100 本 」に台湾映画として唯一選ばれ、2015 年の「 アジア映画ベスト 100 」では、小津安二郎の『 東京物語 』、黒澤明の『 七人の侍 』等と並んで ベスト 10 入りを果たすなど、映画史に残る最高傑作のひとつと評価されています。しかし、日本では 初上映以降 DVD 化されるコトもなく、観賞の機会がほとんどありませんでした。
その伝説の傑作が、E・ヤン監督の 生誕 70 年・没後 10 年、作品発表から 25 年という節目に当たり、オリジナル・ネガフィルムからの復元によって 再公開される運びとなりました。

上映時間は、3 時間 56 分。その長さを考えると、本気で観たいと願う方々だけにオススメできる作品です。描写は 全篇を通じて 淡々として緩やか。何気ない場面も劇的な場面も、カメラを据えて客観的に映像化している印象。そこに本作の第一の魅力があり、ヤン監督の高い芸術感覚が見て取れます。

題材は ’61年に台北で起きた、14 歳の少年によるガールフレンド殺人事件。青春期特有の輝き・せつなさ・残酷さと共に、その背景にある時代と社会、庶民の心情と生活環を 透徹した視線で描き上げています。
画面には独得な趣があり、特に夜のシーンの美しさは圧倒的。個人的には 小四が父親と並んで自転車を引きながら会話するニ場面と、小四が小明を刺してしまう場面の 非常にデリケートかつ過不足の全くない描写が目に焼き付きました。

1960 年代初頭の雰囲気・空気感が完璧に再現されていると同時に、将来の見透しがつきにくい現代の世相と 相通ずる要素を多々含んでいる作品です。第八芸術としての映画の価値を愛してやまない皆さんには、ぜひとも一見をオススメします。たとえ一日がかりになったとしても、観てよかったと感じていたゞけると信じています。
P.S. 上映スケジュールに関しては、角川シネマ有楽町 03-6268-0015、新宿武蔵野館 03-3354-5670へ。

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
質問がある方は、ペンネーム、年齢、スキンタイプ、職業を記載のうえ、こちらのメールアドレスへお願いいたします。
試写室便り等の感想や大高さんへのコメントもどうぞ!
info@biteki.com
(個別回答はできかねますのでご了承ください。)

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

この記事をシェアする

facebook Pinterest twitter

関連記事を読む

あなたにおすすめの記事