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2014.1.16

大高博幸の美的.com通信(199) 『ソウルガールズ』『MUD‐マッド‐』『オンリー・ゴッド』 試写室便り Vol.59

soulgiels
© 2012 The Sapphires Film Holdings Pty Ltd, Screen Australia,
Goalpost Pictures Australia Pty Ltd, A.P. Facilities Pty Ltd and Screen NSW.

コネもない、お金もない、才能だって わからない。あるのは歌への情熱だけ。
実在したアボリジニ初の女性ボーカルグループの奇跡。
ソウルガールズ』 (オーストラリア映画。98分)
1.11より公開中。 soulgirls.jp

【STORY】  1968年、オーストラリア。ゲイル、シンシア、ジュリーの三姉妹は、幼い頃よりアボリジニの居留地でカントリー・ミュージックを歌ってきた。歌手になることを夢見ていた彼女たちは、町でのタレント・コンテストに出場が決まり大喜び。しかし観客は白人ばかりで、悪意に満ちたコメントで迎えられる。ただ司会者のデイヴだけが彼女たちの才能を評価してくれた。三姉妹に対する観客の冷遇を非難したためクビになったデイヴは、ジュリーに引き止められる。ベトナムにいるアメリカ軍のために 慰問にいく歌手のオーディションに参加したい、というのだ。三姉妹はベトナム戦争について よく知らないが、それでもチャンスには かわりない。嫌々ながらもデイヴは 音楽ディレクター兼マネージャーを引き受ける。ただし、条件をつけて。それはカントリーをやめてソウル・ミュージックの歌い方を学ぶこと。そのほうがアメリカ軍兵士に受ける可能性が高い。しかもソウルはデイヴが愛してやまない音楽なのだ。アボリジニとしての立場を放棄し、オーストラリア社会で白人として生きている従姉妹のケイも加わり、「サファイアズ」を結成。四人はデイヴの熱い指導のもと、ソウル・ミュージックの いろはを叩きこまれる。 (プレス資料より。一部省略)

試写招待状を受け取った時、「コレは観に行こう」とは全く思わなかった作品です(招待状は右上のチラシと ほゞ同一のデザインで、正直に言うと“安っぽそうな映画”という気がしたから)。でも、時間的に好都合だったため一応観るコトにしたのですが、コレは“儲けモノ”でした。意外にも最初から画面に引き込まれ、最後まで興味深く観たのです。ストーリー展開がダイレクトで、わざとらしい強調も押しつけがましさもなく、ひと言で言って、かなりの好感を抱きました。
それは、四人組の一所懸命さ、真剣さ、そして人種的偏見とチャンスの少なさに どう立ち向かったか、その姿に惹きつけられたためです。そして もうひとり、負け犬的な心の傷に苦しみながら生きているらしいデイヴ(クリス・オダウド、好演)に、真の人間味を感じたからだと思います。
スリリングだったのは、後半、アメリカ軍基地が空襲に遭う場面。比較的短かめながら、予想もしていなかった突然の展開に、相当緊張させられました。

本作は、たとえ人種差別問題やベトナム戦争に詳しくなくても、それが鑑賞の妨げとなるコトは少しもなく、“勇気を持って進む”という生き方そのものに“信念”を与えてくれるような一編です。
カンヌやトロントの国際映画祭では賞を得るコトはできませんでしたが、デンバーとパームスプリングスの国際映画祭では、ピープルズ・チョイス賞と観客賞を それぞれ受賞。それが本作の価値を代弁しています。親友or大切な人と一緒に、ぜひ観てください。

 

mud
© 2012 , Neckbone Productions, LLC.

思春期の少年たちの成長物語。
現代版『スタンド・バイ・ミー』
MUD‐マッド‐』 (アメリカ映画。130分)
1.18 公開。 HP:mudmovie.net

【STORY】  舞台はアメリカ南部、ミシシッピ川中州にある小さな島。14歳の少年エリスとネックボーンは、その島に潜伏する奇妙な男マッドに出会う。マッドは嘘か本当か、テキサスで殺人を犯し 賞金稼ぎに追われているが、町で自分を待つ恋人ジェニパーに会うため 助けを借りたいと話す。興味をもった少年たちは、マッドに協力することを決めるが…。 (試写招待状より)

本作は、日本ではマスコミ試写が僅か3回(フツーは8~15回前後)と極端に少なく、僕が観た時はプレス資料は仮の状態、チラシの見本も刷り上がっていなかったので、「何か事情があるのかも」と感じたのですが、アメリカでは昨年4月に限定公開され、6週連続トップ10入りを果たし、Rotten Tomatoでは98% Freshを叩き出しています。
監督は『テイク・シェルター』で映画賞を多数受賞したジェフ・ニコルズ。タイトルロールを演ずるのは『ダラス・バイヤーズ・クラブ(日本未公開)』の演技で“アカデミー賞最優力”と噂されているマシュー・マコノヒー、真の主役とも言うべきエリス役は『ツリー・オブ・ライフ』で ブラッド・ピットとジェシカ・チャステインの繊細な息子役を好演した美少年:タイ・シェリダン、ネックボーン役は新人:ジェイコブ・ロフランドが演じています。

サスペンスの要素が強い内容なので、上記の短い略筋以外は予備知識を余り持たずに観るほうが良さそうですが、①両親の不和に心を痛め、初恋に傷つきもするエリス少年の“マッドを助けずにはいられない心理”が物語の核になっているコトと、②マッドと彼に関わる数人の登場人物の性格等を 故意に不明瞭にする演出によって、サスペンスの要素が高められているコトぐらいは予め知っていてもいいでしょう。
ロケーション、特に海辺のシーンは、太陽が最適な位置にくるタイミングを しっかりと選びながら、ワンカットごとを非常に丁寧に撮影していて、それには感服させられました。
ひとつ、読者の皆さんに聞き流して欲しくないのは…、離婚の危機にあるエリスの父が、エリスに向かって つぶやく台詞、「歩み寄りというモノが女には不足しているんだ」。コレは、とてもとても意味深(イミシン)な言葉です。
マシュー・マコノヒーは、ある決意を胸に秘めて恋人に会いに行く場面で、非常に穏やかな、信じられないほど美しい表情を見せます。その顔つきの変化には誰もが驚かされるはずですが、ほんの一瞬のカットなので(しかもクロースアップではないので)、決して見逃さずにいてください。

 

(C)2012 : Space Rocket Nation, Gaumont & Wild Bunch
(C)2012 : Space Rocket Nation, Gaumont & Wild Bunch

『ドライヴ』コンビの熱狂再び――
その復讐は 神への挑戦
オンリー・ゴッド』 (デンマーク、フランス合作映画。90分)
1.25 公開。 onlygod-movie.com

【STORY】  タイのバンコクでボクシング・クラブを経営しているジュリアン(ライアン・ゴズリング)の兄ビリーが、ある日、何者かに惨殺される。母のクリスタル(クリスティン・スコット・トーマス)は 溺愛する息子の死を聞き アメリカから駆け付けると、怒りのあまり ジュリアンに復讐を命じるのだった。しかし、ジュリアンたちの前には 元警官だと名乗る謎の男チャンが立ちはだかる。そして、壮絶な日々が幕を開けるのだった――。 (試写招待状より)

昨年、カンヌ国際映画祭等で上映され、賛否両論を巻き起こしたという、かなりサディスティックな衝撃作。赤と青と闇の黒とのコントラストに魔術or呪術的な雰囲気が漂い、独得なテンポとサイレント映画風の間(ま)は、夢遊病的な気分に誘います。「好きか嫌いか、明らかに分かれる映画」とはライアンのコメントですが、僕は その中間といったところ。彼の演技は ふてぶてしく、母親役のS・トーマスは“女装した年配の男”のようにも見えます。一番いい味を出していたのは、不可解な人物:チャン役のヴィタヤ・パンスリンガム。
「観終えて外へ出たら まだ明るい」では雰囲気が たちまち壊れるので、夜の回orミッドナイト・ショーで観るのがオススメ。たゞし気の弱い女の子は、「ひとりで帰るの、怖い」と感じるかも…。

 

 

 

ビューティ エキスパート
大高 博幸1948年生まれ、美容業界歴46年。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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