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2017.1.3

『 僕らのごはんは明日で待ってる 』『 ダーティ・グランパ 』『 ネオン・デーモン 』『 愛を歌う花 』『 エゴン・シーレ 』 試写室便りNo.129 【 大高博幸さん連載 Vol.376 】

最高に恋した。
ある日、君は いなくなった――。
今、僕は この恋を 永遠にする。

僕らのごはんは明日 ( あした ) で待ってる
日本/ 110 分
1.7 公開/配給:アスミック・エース
bokugoha.com

【 STORY 】 高校生の時 出会って、付き合い始めた亮太( 中島裕翔 ) と小春 ( 新木優子 ) 。性格は正反対だけど、運命の恋だった。しかし、ある日 突然、小春は亮太に別れを切り出す。実は、小春は 亮太に言えない秘密を抱えていた。出会いから 7 年、亮太が 小春の隠す真実を知った時、亮太は 彼女の元へ走り出す――。 ( 試写招待状より )

若い女性の間で人気の同名ロングセラー小説 ( 瀬尾まいこ 著、幻冬舎 刊 ) を、『 箱入り息子の恋 』 ( Vol.158 ) の市井昌秀が 脚色・監督。せつなくて、でも前向きで、観る者の胸を熱くし、温かい涙を滲ませる「 この冬、最強の〝 うるキュン・ムービー 〟 」。
特に主演ふたりの健気 ( けなげ ) な演技と、押しつけがましさのない演出によって、真実味あふれる映画となっています。

亮太は、無口で ネガティブで、自分の殻に閉じこもっているような性格。小春は、明るくて ポジティブで、開放的かつ個性的な性格。しかし、ふたりとも 心の内側に喪失感を抱えていて、そのせいなのか どうか、互いに惹かれあい 恋人同士に……。そして後半、好きだからこそ言えない小春の秘密と、別れの理由が分からず、苦しみながらも小春を想い続ける亮太の心情が、せつせつと描かれていきます。そこに もどかしさと いとおしさを感じて、僕は物語の展開に引き込まれてしまいました。

亮太を演ずる中島裕翔は、昨年公開された初主演映画『 ピンクとグレー 』とは比較にならないほどの本気の好演。陰のある or ありそうな 彼の持ち味も役にピッタリで、亮太が困難を乗り越えて突き進もうとする場面に 説得力があります。小春役の新木優子は、場面によって 顔が 相当 変わって見えるところが独得で、特に 口を横に大きく広げての笑顔が最高にチャーミング。
脇を固めるのは、岡山天音 ( ぶっきらぼうだが 思いやりのある、亮太の友人役 ) 、美山加恋 ( かなり可哀想な役どころ。こういう女子って、昔、僕の周囲にも いました ) 、片桐はいり ( 亮太に気づきの機会を与える中年の女性役。やゝ演技過剰 ) 、そして 松原智恵子 ( 小春の美しい祖母役 ) 。加えて、ケンタッキー・フライドチキンの カーネル・サンダース人形が、重要な ひと役を演じています。

 

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© 2016 DG Licensing, LLC. All Rights Reserved.

年齢も性格も全く違う二人が旅に出る、
抱腹絶倒の バディ・コメディ!!!

ダーティ・グランパ
アメリカ/ 102 分/ R 15 +
1.6 公開/配給:REGENTS、日活
dirtygrandpa.jp

【 STORY 】 1 週間後に結婚を控えた 真面目過ぎる弁護士 ジェイソンは、突然の祖母の訃報を受け 葬式に駆け付けるが、妻に先立たれ 意気消沈した祖父 ディックから 半ば強引に誘われ、祖母の思い出の地であるフロリダへの傷心旅行に 渋々お供することに。ところが、40 年ぶりの独身生活を満喫するディックは、朝から 酒を がぶ飲みしながら 葉巻を吹かし、ゴルフ場でのナンパに始まり、挙句の果てには デイトビーチで羽目を外して大暴れ。年齢も性格も全く違う 二人の珍道中の行く末は……? ( 試写招待状より。一部省略 )

ハメを外しすぎの グランパ・ディック役を ロバート・デ・ニーロ、真面目で従順すぎる孫のジェイソン役を ザック・エフロンが演ずる ハチャメチャ・コメディ。キワどい台詞 満載・ワイセツ度 全開で、これは主役ふたりのキャリアの中でも突出した作品。セックス・シンボルの代表的スターであるエフロンは、自慢のお尻の割れ目までバッチリ披露、その向こう側にいる デ・ニーロから「 oh、立派だ! 」と絶賛されるシーンがあるほどです ( もっと露骨なシーンもあったのですが、ここは「 美的.com 」なので、自主的に削除! ) 。

But、本作は 単なるオフザケではなく、可愛い孫の一生のために 身を乗り出したグランパと、その真意に気づくに至るジェイソンとの〝 ヒューマン・ドラマ 〟を骨子としているところがミソ。何かとジェイソンに指示を与える 決めたがり屋の婚約者との結婚は、ジェイソンが〝 支配的な父親が決めた人生 〟から〝 支配的な婚約者が決めた人生 〟へと乗り換えるだけだという、グランパの視点が重要なポイントになっているのです。若い読者の皆さんは 大いに笑いながらも、そこのところを ( 美人の婚約者 メレディスの良くないところも含めて ) 、しっかりと観届けてください。
監督は、コメディに定評のある ダン・メイザー。

 

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© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

16 歳の少女 ジェシーは、無垢な夢を抱いて、ファッション界のドアを開けた――。

覗くな、危険。
美と官能と裏切りの女たちの世界。

ネオン・デーモン
フランス、デンマーク、アメリカ 合作/ 118 分/ R 15+
1.13 公開/配給:ギャガ
gaga.ne.jp/neondemon

【 STORY 】 誰もが目を奪われる特別な美しさに恵まれた 16 歳のジェシーは、トップモデルになる夢を叶えるために 田舎町からロスへとやって来る。すぐに一流デザイナーやカメラマンの心をとらえ チャンスをつかむジェシーを、ライバルたちが異常な嫉妬で引きずりおろそうとする。やがて、ジェシーの中に眠る激しい野心もまた、美のためなら悪魔に魂も売り渡すファッション界の 邪魔な毒に染まっていく――。 ( チラシより。一部省略 )

薄気味の悪いファーストシーンからカルト的な描写が続く、狂気じみた一種の寓話。
監督は『 ドライブ 』や『 オンリー・ゴッド 』( Vol.199 ) で国際的な評価を得た ニコラス・W・レフン。今回は カンヌ国際映画祭で賛否両論、絶賛の拍手喝采とブーイングの嵐で「 上映会場は真っぷたつに割れた 」とか。僕自身は フラッシィな映像に眼が眩んだ上、多くの場面で「 これは何かの伏線? 」と気を張りながら観ていたので、エンドロールが映し出されると同時に、ほゞグッタリの態でした。

ジェシーを演ずるのは『 マレフィセント 』 ( 2014 ) でオーロラ姫を、『 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 』 (Vol.346 ) でトランボの長女役を好演した エル・ファニング ( 1998年生まれ ) 。自信なさげにモデル事務所を訪れた少女が、トップモデルの座へ駆け上がっていくプロセスを熱演しています。特に、ラスト近くで 吐き出すように つぶやく「 みんな、私になろうとして必死。削って 詰めて 注射して、断食までして願うのよ。私の二流版でいゝから、この私に なりたいって 」という台詞がショッキング。But、これは或る意味、何かを言い当てゝいて妙でした。

主役に次ぐ適役好演は、オーディション会場でデザイナーから完全に無視されて 打ちのめされるモデル役の アビー・リー。他に、駆け出しのカメラマン役で カール・グルスマン ( 『 ストーンウォール 』でジョー役を好演した成長株 ) 、モーテルの怪しげなオーナー役で キアヌ・リーヴスらが出演しています。

 

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© 2016 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

悲運の 1943 年、激動の時代に翻弄されながらも、歌と愛に生涯を捧げた妓生 ( キーセン ) の物語。

愛する人の曲を歌いたい。純粋な情熱が、狂気の嫉妬に変わっていく――。

愛を歌う花
韓国/ 120 分
1.7 公開/配給:クロックワークス
aiuta-movie.com

【 STORY 】 時は 1943 年、京城 唯一の妓生養成学校。ずば抜けた美貌と歌唱力で最高の歌姫と称されるソユルと、心に響く天性の歌声を持つヨニは、作曲家 ユヌから一目置かれ、同期の羨望を受ける かけがえのない親友同士だった。ユヌは 民衆の心を癒す「 朝鮮の心 」という歌を作曲する矢先、ヨニの歌声に いつしか魅了されていく。ユヌの曲を自分のものとし、歌手になることを夢見るソユルは、次第に嫉妬心を芽生えさせていく――。 ( 試写招待状より。一部省略 )

こちらは 同じ嫉妬でも、ひとりの男性を愛してしまった親友同士の物語。ちょっとした成り行きが ユヌを含め、三人の運命を大きく狂わせていくというドラマティックな悲劇です。日本軍による圧政の時代を背景としているため、日本軍人 ( おそらくですが、韓国人俳優が演じている ) を絡めた展開の中で、ソユルが ユヌへの愛情と ヨニへの嫉妬心を募らせていく姿が せつなく哀れ。But、彼女の嫉妬心には 多くの正直な観客が、共感 or 共感に近い感情を覚えるのではと、僕は思いました。

ソユルを演ずるのは『 ビューティー・インサイド 』 ( Vol.323 ) で好演した ハン・ヒョジュで、少女から大人の女へと変身する姿を熱演。特に後半、ユヌに向かって「 私のもとに戻って来て。女を乗り換えることぐらい、簡単でしょう 」と迫る台詞に凄味があります。
ヨニ役の チョン・ウヒは、ファニー・フェース風の顔立ちが愛らしい演技派の若手。本作によって、日本でもファンが急増しそうです。
監督は『 メモリーズ 追憶の剣 』の パク・フンシク。

 

エロスとパッションを描き、
28 年の生涯を駆け抜けた天才画家。

スキャンダルとエゴイズム、そして シーレをめぐる女たち。

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© Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH

エゴン・シーレ / 死と乙女
オーストリア、ルクセンブルグ 合作/ 109 分/ R 15 +
1.28 公開/配給:アルバトロス・フィルム
egonschiele-movie.com

【 STORY 】 20 世紀の幕開けとともに彗星のごとく現れ、スキャンダラスな逸話と名画の数々を残し、わずか 28 歳で早逝した異端の天才画家 エゴン・シーレ。数多くのモデルと浮名を流したシーレにとって、とりわけ大きな存在となった 2 人の女性――。 16 歳でヌードモデルを務め、敬愛する兄を献身的に支え続けた 妹 ゲルティ、そして クリムトのモデルを経て、シーレとは 公私にわたるパートナーとなって 彼の美のミューズであり続けたヴァリ。彼女たちとの濃密な愛の日々を通じて 芸術を追求し続けるシーレの姿。最高傑作「 死と乙女 」に秘められた愛の伝説が 今、明らかになる――。 ( 試写招待状より。一部省略 )

E・シーレの画家としてのキャリアよりも、彼をめぐる女性たちとの関係に 重点を置いた内容です。
プロローグは、梅毒で脳を犯されたシーレの父親が、全財産の証券類を 火にくべて狂い死にする 1904 年の場面。次いで スペイン風邪で重態となったシーレと その妻 エディットを、シーレの妹 ゲルティが看病する ’18 年の場面が映し出され、ゲルティが回想する形で、彼女が兄のヌードモデルを務めた ’10 年の場面へと移行……。さらに、ウィーンの場末の演芸場でシーレが出会う〝 タヒチの部族長の娘 〟という振れ込みのモア、クリムトに引き合わされる 赤毛と青い瞳を持つモデルのヴァリ、近隣の 13 歳の美少女 タチアナ、アデーレとエディット姉妹との関係に続く という展開。
タチアナに対する〝 未成年者への性犯罪容疑事件 〟を含め、演出 ( ディーター・ベルナー ) は かなり淡々としていて、劇的な高揚感は希薄……。
当時の風俗として興味深かったのは、日本で昭和 20 年代前中期に流行した「 額縁ショー 」の原型とも言える「 タブロー・ヴィーボ 」というエロティックな演芸場の出し物。

シーレ役は、モデル出身の ノア・サーベトラ ( 1991 年生まれ )。シャープな頬、大きく美しい澄んだ眼が印象的で、ジェラール・フィリップの後裔のような雰囲気。女優陣では、ヴァリ役の フェレリエ・ペヒナーが巧みで、シーレを愛してしまった女としての葛藤が、とても よく出ていました。

 

 

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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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