「温泉できれいになる」が化学的に証明されたってホント?真相を専門家に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日常生活で生まれる美容や女性のライフスタイルの疑問を医師や専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は「温泉の美容効果」について。「温泉できれいになる」が化学的に証明されたってホント? マンダムの齋藤香織さんにお話を伺いました。
Q:「温泉できれいになる」が化学的に証明されたってホント?
「温泉に入って肌がつるつるになった」という経験がある人もいるのではないでしょうか。「美肌の湯」と言われる温泉があったり、温泉が肌に良いというイメージをもっている人は多いと思います。しかし、何が肌に良い影響を与えるのか? 化学的に証明された美肌成分が入っているのでしょうか。さっそく、この疑問についてマンダムの齋藤香織さんに聞いてみました。
A:ホント
「大分県の別府にある硫黄泉で有名な“明礬(みょうばん)温泉”の成分として知られるミョウバンがそのひとつです」(齋藤香織さん・以下「」内同)
温泉ならどれでも肌がキレイになる?
「日本には多くの温泉があり、泉質や含有成分によって効能もさまざまです。“美肌の湯”と言われる温泉も全国に数え切れないほど存在し、例えば、炭酸水素塩泉は重曹に皮膚の角質を軟化させる作用があり、肌がつるつるになります。また、硫黄泉は殺菌効果が高いため、皮膚病に効果があるといわれています。鎌倉時代に開かれた湯治場、明礬温泉も硫黄泉。強酸性で殺菌力が高く、神経痛や皮膚病に効くとされていて、古くから“美肌湯”として知られていました。その温泉成分として知られるミョウバンに美肌効果があることが、最近の研究によって認められました。ミョウバンの化粧品表示名称は“アルムK”。明礬温泉の”湯の花”は温泉ガスと青粘土を反応させ、結晶化させる、江戸中期から現代でも変わらぬ製法で作られており、医薬部外品の入浴剤としても販売されています」
科学的に証明されたミョウバンの美肌効果
「ミョウバンが肌に与える美肌効果はふたつあります。ひとつめは肌細胞の増殖を促進すること、ふたつめは肌細胞の炎症シグナルを抑制することです」
美肌効果1:肌細胞の増殖を促進させる
「もう少し具体的に説明していきましょう。ひとつめの“肌細胞の増殖を促進させる効果”というのは、肌の細胞のなかでも表皮角化細胞で起こります。表皮角化細胞にはTRPM4(エムフォー)という感覚センサーが存在し、アルムKが表面に届くことでTRPM4が活性化します。そこからナトリウムイオンが細胞内に流入して表皮角化細胞の増殖が促進されます。簡単に言うと、肌を構成する細胞が元気になって、肌がふっくらするという感じですね」
美肌効果2:炎症シグナルの抑制
「表皮角化細胞は刺激を受けたときに“ダメージを受けたよ”というシグナルを出します。このシグナルが蓄積することで炎症反応が起こりますが炎症反応は目で見て肌荒れだとわかるものもあれば、自覚のない炎症反応も起きています。例えば花粉や紫外線などの外的ストレスなども“自覚のない炎症反応”が起こる原因で、こういった小さな炎症が続くことでハリの低下、毛穴目立ち、肌の水分量の低下といった気になる肌トラブルが発生します。こちらもアルムKによりTRPM4が活性化することで、表皮角化細胞が産生する炎症シグナルを抑制することがわかっています」
Point
・表皮角化細胞の増殖を促進・炎症物質の産生を抑制する
湯の花や発泡入浴剤などはたくさん入れたほうが効果は高まる?
「一般的には適量を使えば効果は得られると思うので、多く使えばその分効果が高まるということはないと思います。目安とされる量を入れれば十分です」
美肌のためにはぬるめのお湯に浸かるほうがいい?
「TRPM4は30~38℃くらいの温度帯でも活性化するということが分かっています。そのため、お風呂の温度でぬるめと言われる38~40℃の湯船に浸かることも肌にとって良い効果が期待できると思います。反対に、肌を組成しているタンパク質はある程度の温度を超えると有害になってしまいます。熱過ぎるお湯は逆に刺激になるので、適温を心がけましょう」
文/土屋美緒
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
毛髪や頭皮の基礎研究を経て、現在は、肌細胞の環境や刺激への応答メカニズムを研究。
■マンダム