宮城県出身。1981～89年文化出版局装苑編集部でファッションと美容を担当。美容の面白さに目覚め89年に独立。以降、雑誌を中心に美容企画の取材・執筆を行なう。美容医療に関しては黎明期の99年から体験と取材を継続。50歳時に詳しい検査で身体の弱点が多数見つかり「還暦で健康」を目指し、クリア。「大人の身体は変えられる」を実感中。日本抗加齢医学会会員。
スキンケアニュース
2024.4.8
たるみ治療のHIFU（ハイフ）トラブル報道、その後どうなった？〈中編〉【美容医療の最新情報を深掘り！ Vol.7】
2023年3月、美容業界を揺るがす報道がありました。それは、“切らないたるみ治療”として人気の照射機器HIFU（ハイフ）のリスクです。消費者庁の消費者安全調査委員会から、「HIFU施術は人体に危害を及ぼすリスクが高く、エステ業界に注意喚起が必要」という「意見書」が提出されたのです。HIFUは美容クリニックでもエステサロンでも使われていましたが、そもそも何が問題で、その後どうなったのか？ 関係各所に取材を行いました。だって、「美容」は「安全性」があってこそ、ですから。今回は第2回（全3回）。【美容医療の最新情報を深掘り！海野由利子のおとなキレイ塾 Vol.7】
やけどなどのトラブル多発で消費者庁が事故調査
〈前編より続く〉その後、2015年から国民生活センターなどへ、HIFU施術の苦情が増加しました。
特にエステサロンやセルフエステでやけど、皮膚の感覚障害、急性白内障などが起きていることから、消費者庁の消費者安全調査委員会が動きました。調査は徹底していて、HIFU機器の照射実験を複数のエステ、セルフサロン、美容クリニックで行い、施術や機器の物流の実態を調査。照射による生体の温度変化の影響もシミュレーション解析を行うなど、詳細かつ膨大なデータが得られました。
その結果、エステサロンやセルフエステで行っているHIFU施術では、美容クリニックで使われているのと同等の照射出力の高い機器や、信頼性の低い機器が使われている実情が明らかになりました。また、施術を行うスタッフが機器を安全に扱う教育がされてなかったり、照射によるリスクの知識が薄いこともわかったそうです。
こうして、HIFUによる事故の増加原因がいくつも確認されました。調査結果の報告とともに、HIFU機器のスペックは医療機器レベルであり、その施術にはリスクがあり医療行為とすべき、つまりエステで行うには危険すぎる、という内容の「意見書」が関係各所に出されたのです。
消費者庁消費者安全調査委員会からの「意見書」を受けて、
厚労省、経産省、エステサロンの業界団体から出された通達。
消費者庁の「意見書」で何がどう変わった？
消費者庁消費者安全調査委員会の「意見書」の宛先は、医療や国民の健康に関わる厚生労働省、医療機器や美容、物流に関わる経済産業省、そして消費者の安全に変わる消費者庁の3省。「意見書」には何らかの強制力はなく、管轄のしかるべきところへ注意喚起してください、という意味合いのものだそう。ただし、通例として“講じた措置”についての報告はされるとのこと。
意見書の提出から1か月以内に、厚労省からは都道府県の担当部署宛に「医療機器として規制されるべきHIFU機器が流通しないよう、監視指導の徹底」という通達が、経産省からは「エステティック業界団体と協力して、関係事業者に対し、人体へのリスクが高いHIFU施術の危険性について注意喚起をする」という通達が出されています。それを受け、エステティック業界の主要団体からは加入エステティックサロンへ「HIFU施術の即時中止」の文書が出されました。とはいえ、団体に加盟していないエステサロンが圧倒的に多いので、どの程度が中止へと動くのかはわからないようです。
取材後、意見書の影響が気になった私は、「使用中止になったエステのHIFU機器」をオークションサイトでチェックしてみました。
すると、明らかに業務用と思われるサイズのHIFU機器が「家庭用HIFU」とか「ホームケア用HIFU」として大量に出品されていたのです。予想通りで、そうなるよねえと思いながら、スペックなどを確認してみましたが、原産国も、アフターケアや故障時の連絡先も不明なものが多く見られました。こういう機器でやけどなどのトラブルを起こす人がいないといいなあ…。
HIFUで効果を得るには皮下に一定の熱を与えることが重要ですが、やけどや神経損傷のリスクが大きいことを改めて伝えたい。’09年以降、10数年にわたってたるみ改善効果が支持されているHIFU照射を、安全に受けるにはどうすればいいのでしょうか？ 後編（4月15日公開予定）でお伝えします。
◆関連情報／消費者庁のコラム
✱「エステサロン等でのHIFU施術にはリスクがあります」 コチラ
美容・医療ジャーナリスト
海野由利子
※価格表記に関して：2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
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