エルメスのアイシャドウで宿す、奥に秘めたる強さ|美的GRAND
美容エディター・松本千登世さんが厳選。『このコスメが、すごい!~モードなアイカラー編~』
奥に秘めたる強さ
Brand / エルメス
Item / オンブル ドゥ エルメス パレット クワテュール
それぞれ異なる濃淡の3つのパウダーにアクセントを与える力強いカラーを加えた4色がパレットに。繊細な美しさに、思わず息を飲む。右上から時計回りに/01・04・06・05・02・03 各¥14,300
色彩、質感、濃淡……、視線の「しぐさ」が放つ美の残像
エルメスのビューティが誕生したのは、長く続くパンデミックに突入したばかりの、2020年のこと。序章として「美しさ、それはしぐさ」というコピーと共に生まれたルージュ エルメス、それはそれは美しい24色のリップスティックに、衝撃を受けた人も多いはずです。世の中も自分の心も大きく揺れ動いているそのときだったからこそ、本質的でタイムレスなメッセージがまっすぐに届き、美しさとは何か、その力はどれほどのものかを教えられた気がして、私にとっては、未曽有の出来事を乗り越える大きな支えになりました。決して大げさでなく、メイクアップと心の密接な関係を再認識させられたのです。
あれから4年、その最終章の幕開けとして登場したのはアイメイクアップコレクション、ルガール エルメス。「眼差し、それは一瞬のひらめき」というキャッチコピーに、またも心をつかまれました。どぎまぎするような強い眼差し、ふわんと包み込むような柔らかい眼差し……。年齢を重ねると共に、その人の「すべて」が眼差しに表れて、決してうそがつけない気がしていたから。だから、目が生むしぐさまでも美しく彩るエルメスのコレクションに心躍ったのです。中でも、まるでオブジェのようなオンブル ドゥ エルメスは、調和のとれた色合いのパーフェクトな美しさにはっとして、手にした瞬間から表情が華やぐのを感じるはずです。ナチュラルなカラーをまぶたにすーっとのばすと、内側から静かに光を放つように整って120%の立体感と奥行きが瞬時に生まれるし、遊び心のある印象的な色をアイラインのように入れると、目を伏せる度、色の残像が揺らめいて瞳が艶やかに見え、不思議と表情が生き生きとする。濃淡やコントラストの加減で、どんな目元も自由自在。きっと夢中になるはずです。
もう一度、アイメイクで自分を語り出す挑戦をしてみたいと思うのです。たくさんの経験を重ねてきた大人ならではの奥に秘めたる強さは、その目元に宿ると信じて。
『美的GRAND』2024春号掲載
撮影/シバサキフミト(DONNA) スタイリング/高橋尚美 美術製作/南 志保・KANTA(ガリネル) 構成/松本千登世、三井三奈子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。