杉野遥亮さん「よけいな力を抜いて、ありのままの自分で生きたい」|『美的』ベストビューティマン2024受賞

主演作が続き、幅広い役柄に挑戦し、実力派俳優として輝きを放つ。迷いながらも、自らを振り返り続ける、美しく気高いその姿はまさに、読者が選ぶベスト・ビューティ・マン!
杉野遥亮|ひたむきに求める美しさ。
自分を振り返ることが、僕にとっての美容のひとつ
ニット/スタイリスト私物
運転免許を更新して、今の顔の方が好きだと感じたとき、悩みながらも成長できていると思えた。
ジャケット¥195,800、シャツ¥148,500、パンツ¥129,800、シューズ¥151,800(ジョルジオ アルマーニ ジャパン〈エンポリオ アルマーニ〉) ベルト/スタイリスト私物
Tips for Beautiful Life
毎日、青汁
効率良く野菜をとるために始めました。ペットボトルにスティックタイプを入れて飲んでいます。
朝はバナナ
1〜2本食べています。反町隆史さんに勧められて、なるべく無農薬のものを選んでいます。
ランニング
お気に入りのウエアをそろえたのですが、まだ始められていません(笑)。来年は習慣にしたい。
時々、神社
気持ちがリセットされる場所。長野の戸隠神社や、箱根元宮も好き。
画家の浅野順子さん
浅野忠信さんの母である順子さん、何にも縛られない自由な感じが素敵。自分にとって大事なことを知る人は輝いているなと思います。
ニュージーランドに行きたい
来年は海外を旅したい。語学留学もしたい。広い世界を見て、自分を知りたいです。
ニキビは頑張っている証。そう思うといとおしく思える。よけいな力を抜いて、ありのままの自分で生きたい
シャツ¥269,500、ハイネックトップ[参考色]¥154,000、パンツ¥864,600(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン〈ボッテガ・ヴェネタ〉)
「今日撮影なので、昨日、少し良さそうなクリームをつけてみたんです」
そう話してくれた杉野さんの端正な肌は日々のケアの賜物かと思いきや、スキンケアには「ほぼ無頓着」。でも少し前、スチーマーやシートマスクを買いそろえたことがあるのだそう。
化粧水が乾くまでの時間が苦手。体の中からのケアは継続中
「何かひとつ、自分に自信をつけたかったんだと思います。肌を褒めていただいたことがあって、だったらとことんキレイにしてみようと思ったんです。車での移動中もシートマスクをする勢いで。やはり、肌がキレイだと自信につながります。でも結局、3日坊主で終わりました(笑)。元々、化粧水をつけて肌になじむまで待つ時間が苦手なんです。前髪が額にくっつくのも嫌で、クリームを塗って終わりということもあれば、やるときはとことん派なのでたくさんつけてみたりと、お手入れする時期にムラがあって。スキンケアが適当になりがちな分、栄養面を意識したりと体の中からのケアは続けています。お芝居は体が資本でもあるし、健康を意識することが芝居への自信にもつながったらいいなと。というレベルなので、今回ベスト・ビューティ・マンという賞をいただくのが申し訳なくて…」
そう打ち明けてくれた杉野さんの実直で誠実な人柄も、俳優としての活躍を導いている。今年も多くの作品に出演し、山岳医を演じたドラマ『マウンテンドクター』から、『オクラ〜迷宮入り事件捜査〜』と2クール続けて主演。特に『オクラ〜』では、役でバディを組んだ反町隆史さんから多くの薫陶を受けた。
「今後人生を振り返ったときにとても大きな出会いだったと確信できる程、反町さんには多くのことを教えていただきました。その中で、僕自身が背負いすぎているものやよけいな考えを下ろせたような感覚があります。芝居を人にどう思われるかということよりも、自分がどう思うか、何を楽しいと思うのかを大事にするべきだということに改めて気づかされました。積み上げてきたものをいったんくずしてフラットにした中から大切なものを見つけられたようで、仕事に対しても少し楽になれた1年だったように思います」
作品ごとに新しい扉を開きながら実力派俳優としてキャリアを重ねる日々で、杉野さんは常に自らを振り返り、分析し続けてきた。「仕事に対してはなかなか自信はもてず、常に不安がつきまといますし、毎日『これでいいのだろうか』と考え、悩みますが、その中でも着実に成長できているという手応えがあるんです。先日、運転免許を更新したとき、前回の写真と比べると、今の顔の方が好きだなとふと思えたんです。そう思えるような生き方をできているのだとすれば、きっと成長できているんだなと。悩みは尽きなくても、その中で自分が何を見つけていくかが大切なんだと思います。俳優が天職だと思えたことはないですし、映画を人一倍観ているわけでもなく、自分の強みもわかりませんが、まっすぐに生きていることだけは確かです」
この日の撮影前、メイクや衣装について、杉野さんは自ら編集スタッフに相談しにきてくれた。『美的』を一緒に見ながら、自分の言葉で思いを伝えてくれる姿に感激した。
実は抜けている一面も。でも頑張りすぎなくていいと思う
「なるべく自分の言葉で伝えたいと思うんです。せっかくご縁があってご一緒できたので、できるだけお互いがクリアな状態で同じ方向を向いてモノ作りしたいですし。とはいえ、上手に伝えることはなかなか難しいです。言葉が足りなかったり、言いすぎてしまったりすることもありますし。でも、人に伝えることは自分がなぜそうしたいのかを考えることでもあって、それはお芝居で役のどこに共鳴するかを考える訓練にもなっている気がします。スキンケアはズボラですが、日々自分を振り返るということが僕にとっての自分ケアなのかもしれません。最近は頑張りすぎない、気にしすぎないということも意識しています。鏡に映る自分の顔の調子が良くないとネガティブに感じることもありましたが、ストレスでニキビができることがあってもあまり気にしないんです。『ニキビができるくらい頑張っているんだな』と。そう思えるとニキビもいとおしく感じるんです」
調子が悪い自分も、自信がない自分も受け入れ、そんな自らを振り返る日々が、まっすぐな心の美しさを生む。
主演ドラマがきっかけで北アルプスの山々を登り、頂上で達成感やすがすがしさを感じてきた。その度、 「自分を知り、自分らしく生きられるような実感があった」という杉野さん。今、「ありのままの美しさ」を改めて実感している。
「子供の頃から自然の中にいることが好きで、仕事でも海や山でのロケだと芝居もより自分らしく楽にいられる感覚があるんです。ありのままというのは自分を受け入れて自分らしくいることでもあって、そういう人は美しいなと思います。化粧っ気のない“元気っ子!”みたいな人も素敵です。最近思うんですが、限界を超えて頑張る姿も美しいけれど、時には頑張らない時間があってもいいんじゃないかなと。生き方が顔に表れるし、自分がやっていることの結果が目の前に現れるのだと思うので、楽しく、心地いいと思う時間も大切にしていきたいなと。それに、誰かに憧れすぎるより、自分をちゃんと生きたい。その結果としての現実が苦しいこともあるけれど、そういうことの積み重ねでしか幸せにはなれないのだと考えると、僕が積み重ねてきたひとつの結果として、今回の『美的』の賞をいただけたことは本当にありがたかったです」
来年、30代を迎える。クールに、淡々と日々を積み重ねているように見える杉野さんだが、実はそうではない素顔にも和まされた。
「取材だと少しカッコいい感じにしていますけど(笑)、プライベートでは慌てることも多いんです。忘れ物をしたり、家の電気をつけっ放しで出かけたりとか、抜けているところも多くて。30代はもう少し落ち着いた、器の大きな大人を目指したいです(笑)」
Profile
杉野遥亮(すぎの・ようすけ)/1995年千葉県生まれ。2017年の映画『キセキ-あの日のソビト-』で俳優デビュー。’23年のドラマ『ばらかもん』でGP帯初主演、NHK大河ドラマ『どうする家康』にも出演。’24年は映画『風の奏の君へ』、ドラマ『マウンテンドクター』『磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜』『オクラ〜迷宮入り事件捜査〜』と主演作多数。
美的2025年2月号掲載
撮影/田形千紘 ヘア&メイク/宮本佳和(BE NATURAL) スタイリスト/伊藤省吾(sitor) レイアウト/稲垣章子 構成/松田亜子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。