土屋アンナさん母娘鼎談「女が○○なんて、の時代」|作家LiLy対談連載「生きるセンス Season.6」第4話
「年齢を重ねるって、どういうことですか?」作家・LiLyさんが人生の先輩を訪ねて歩いた人気連載『生きるセンス』がリニューアルスタート。より楽しく、より自由に、より心地よく生きるべく、人生のヒントをさらに深掘りしていきます。第6回のゲストは、土屋アンナさんと母親の眞弓さん。LiLyさんの母親の由美子さんも招き、4人の鼎談がスタート!
第1話▶▶土屋アンナさん母娘にとっての「センス」とは?
第2話▶▶土屋アンナさん母娘鼎談「繊細な人はロックンロール!?」
第3話▶▶土屋アンナさん母娘鼎談「母娘、似ている似ていない問題」
ロックに目覚めたのは、親への反抗ではなくて社会の矛盾を感じ始めたから――土屋アンナさん
LiLyさん(以下、L) 前回に引き続いて、「母原病」という言葉について話していきたいな。「母親が原因で子供に起こる異常のこと」を指す言葉だよね。ただでさえ母親は育児のことで悩んでいるのに、母の育児中にこの言葉が流行ったみたいで。全ては母親の責任だ! って酷いプレッシャーを与える言葉だって母が怒って話していたから良く知っているの。
土屋アンナさん(以下、A) うんうん。そうだよね。もちろんいろんな視点や捉え方があると思うけれど、個人的にも言えるのは、ママが私に対して抱いていた「『いい子だね』と褒めて育てたことが、逆にプレッシャーになったのでは」ということへの心配は、まったく無用だと思う。
L 本当本当! 我が子に対して「いい子だね」って声がけすら簡単にできなくなったら、どうしたらいいのって思うよ。
A 子供側の私から言わせてもらうと、私がロックに目覚めたのは、親への反抗などではなくて、社会に対して大いなる矛盾を感じ始めたからなの。
由美子さん(以下、Y) さすがアンナちゃんね。その話、詳しく聞いてみたいわ。
A 私は小さな頃から教会に通わせてもらって、聖歌隊の一員としてクラシック音楽に触れてきたのね。だけど成長するうち少しずつ世の中が見えてきて、政治家やら宗教家やら、偉い人と言われる大人たちが国同士で諍いを起こしているのがわかってきた。「人に優しく」「嘘はいけない」って言われてきたけれど、それを堂々と破っているのは大人たち。それがわかったとき、私は「ああ、狂ってる!」って。そしてその思いを大好きな音楽で表現したいと思ったの。そのとき、私に驚くほどフィットしたのがロックンロールだった、というわけ。
土屋眞弓さん(以下、M) なるほど。すごくよくわかったわ。
A 「いい子だね」って育てられたことには、すごく感謝してる。だからこそ今なおママと思い切り喧嘩ができるし、かつ助け合えているのだと思うから。
M 思い起こせば、私はアメリカで子育てをしたのよね。知り合いも少なくて、当時はまだネットもなくて、大変ではあったけれど、誰かと比べることをせずに済んだ分、それはよかったのかもしれない。だってSNSが発達している今、そうはいかないでしょう。
昔はまだ「女が東大なんて」と言われていた時代があった――LiLyさん
Y 今は何かもを報告し合う、そんな時代だものね。前回、眞弓さんが「お嬢様学校には行きたくなかった」というお話をしていたでしょう? 実は私も似た境遇だったかもしれないなと感じたの。
M 由美子さんも?
Y 私は「お嬢様学校には向いてない」と言われて、男女の比率がもうほとんど男子校みたいな進学校へと進んだの。同級生だった女子生徒たちも男子たちと同じように東大進学していたりして、仲よくしていたグループで、専業主婦になって子供を産んだのは私だけ。みんなキャリアの道を進んだから、育児中に劣等感のようなものもあったのも事実で…。主婦になる前は小学校の教員をしていて、専門は国語だったのだけど、そういえば、当時の塾の先生が明治生まれで古典を専門としていて、「最近は英語がもてはやされているけれど、あなたにはもっと日本文学を大切にしてほしい」と言われて、大学も国文科へと進んだのよね。日本文学は大好きだけどややウエットなところもあるし(笑)、海外文学への憧れはあったものの、当時は言われるがままに進路を決めてしまった。その後、夫と結婚してアメリカの駐在が決まったとき、「こういう未来が待ってたなんて!(笑)」って、そこもほんの少し後悔したのよね。
L お母さんたちの時代は、食べるもの、着るもの、住むところなど、生活のベースになるものがすべてドラスティックに変わった、そんな時代だよね。教育のことで言えば、おばあちゃんに「女で東大なんかに行ったらお嫁に行けなくなるからやめなさい」ってリアルに言われて諦めたり。お母さんはそこでの悔しさがあるから「女の子だって東大に行っていい。大学院だって行っていい!」って言ってくれてた。女の子である私への教育にすごく熱心だったよね。リベンジともいうか。一方で生まれた私は東大より渋谷に行きたがってるギャルだったけど(笑)
M うんうん(笑)。私がちょうど思春期のころだったかしら、少しずつウーマンリブなどが叫ばれるようになって、意識改革が進んでいった時代だったのよね。
A 時代は変わって、いや、母たちの歴史の影響を受け継いで、私みたいなロッカーが生まれたり、LiLyみたいなギャルが生まれたり(笑)!
L 女性の生き方、考え方は今も現在進行形で進化しているもんね。私たちの子供たちはどんな大人になるんだろう? どこまでも自由で果てしなく幸せになってくれたら何でもいいな。そして、大人になった彼らともみんなでこうして語り合いたい。世代を越えて話すって、やっぱり楽しい!

Instagram:@annatsuchiya0311

Instagram:@lilylilylilycom
次回は1月14日公開予定!
第5話「母と娘、それぞれの思い<最終章>」
お楽しみに!
イラスト/ekore 構成・文/本庄真穂
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。