大高博幸さんの 肌・心 塾
2017.8.15

『 ハイジ 』『 パターソン 』『 ボブという名の猫 』『 エル 』『 幼な子われらに生まれ 』 試写室便り 【 大高博幸さん連載 Vol.408 】

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©2015 Zodiac Pictures Ltd / Claussen+Putz Filmproduktion GmbH / Studiocanal Film GmbH

不朽の名作が実写映画になりました!

かわいいヤギたち、とろけるチーズ、
干し草のベッド…。
ようこそ、アルプスへ!

ハイジ
アルプスの物語
スイス、ドイツ/ 111 分
8.26 公開/配給:キノフィルムズ
heidimovie.jp

【 STORY 】 アルプスの山の大自然に囲まれ、ガンコだけれど優しい祖父と楽しく暮らしていたハイジ。ところが ある日、大富豪のお嬢様のクララの話し相手として、フランクフルトの都会へ連れていかれることに。足が悪く 車いす生活を送っていたクララは、明るく素直なハイジに励まされ、元気を取り戻していきます。ハイジとクララは固い友情で結ばれますが、ハイジは日に日に おんじの待つアルプスの山が恋しくなってしかたないのでした…。 ( チラシより )

誰もが知っている ヨハンナ・シュピリ原作の「 アルプスの少女ハイジ 」を、本国スイスで実写映画化した作品で、文部科学省特別選定 一般映画 ( 少年・家庭向き ) 、及び 文部科学省選定 一般映画 ( 幼児・青年向き ) の〝 お墨付き 〟を得ています。

小学 4 年生の時に読んだ原作本の中で 僕が一番好きだったのは、とろけて金色に光り輝くチーズを作る場面…。それがなかったコトは残念至極ですが、19 世紀のスイスとフランクフルトの景観が見事に映像化されている上、レーティッシュ鉄道 G 4 / 5 形 蒸気機関車 107 号機も登場し、大いに眼を楽しませてくれました。

多くの候補者から選ばれた ハイジ役 アヌーク・シュテフェンは勿論ですが、ペーター役の クイリン・アグリッピが正に適役。さらに クララ役 イザベル・オットマンのデリケートな表情と、ごく自然に溢れ出るノーブルな雰囲気が最高でした。

P.S. 本作を観て鮮明に想い出したのは、ハイジのおじいさん ( ブルーノ・ガンツ ) とクララのおばあさま ( ハンネローレ・ホーガー ) が異口同音に言う「 自分の眼で見て、自分の心で判断する 」という教えでした。この物語を愛している皆さんなら、こゝは 決して忘れずにいてください。

 

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@2016 Inkjet Inc.All Rights Reserved.

自分らしい生き方をつかむ手がかりは
日々の生活にある。

バス運転手で詩を愛するパターソン。
ドラマティックな事件が起きなくても、
彼の目には 毎日が いつも新しい。

パターソン
アメリカ/ 118 分
8.26 公開/配給:ロングライド
paterson-movie.com

【 STORY 】 ニュージャージー州 パターソン市で バスの運転手をしているパターソン。彼は 日々 こんなふうに暮らしている。朝起きて、妻 ローラにキスをし、バスを走らせる。仕事が終わると家へ戻り、愛犬 マーヴィンと散歩に出て、バーで 1 杯だけビールを飲む。そして就寝。それは 代わり映えしない毎日のように思えるかもしれない。しかし 彼はバス運転手であると同時に詩人でもある。詩を愛するパターソンにとって、日々は決して単調ではない。ありふれたマッチ箱、バスのフロントガラスに広がる景色、乗客たちが交わす会話。そういった些細な物事が、彼の目には とても美しく、まばゆいものに見える。周囲には、ぼやいてばかりの同僚もいれば、自分の流儀で生きるバーテンダーも、失恋から立ち直れないバーの常連客もいる。ユニークな人々との交流が、パターソンの毎日を明るく、にぎやかにする。ちょっとした騒動が起きて落胆しても、元気づけてくれるのはローラだ。夢にひたむきな彼女と一緒なら 世界は可笑しさや愛しさで溢れ、毎日が新たな幸せで彩られていく。そう、目を凝らし 耳を澄ませば、昨日と同じ日は 1 日としてないのだ。パターソンだけでなく、誰にとっても。( プレス資料より。一部省略 )

唯一無二の作風で知られる名匠 ジム・ジャームッシュの最新作。バスが故障したり、エヴェレット ( 失恋した青年 ) がハタ迷惑な騒ぎを起こしたりはするものの、パターソンとローラには特別な出来事など何も起こらない、平穏な 7 日間が描かれています。しかし、そんな 118 分が 少しも退屈に感じられず、画面に 100 % 引き込まれるのは何故なのか…。
J・ジャームッシュ監督は「 ディティールやバリエーション、日々のやりとりに内在する詩を賛美し、ダークで やたらとドラマティックな映画や アクション志向の作品に対する 一種の解毒剤となることを意図している 」と述べています。

繊細かつ素朴で、しかも飄々とした演技を観せるパターソン役の アダム・ドライバーと、優しくて快活で美しいローラ役の ゴルシフテ・ファラハニ ( 『 チキンとプラム 』( Vol.125 ) 以来、僕にとっては約 5 年振りの おめもじ ) の何気ない やりとりが、感動的に いとおしい。

詳しくは説明できませんが、僕は ふたりの姿に、友人 & 知人夫妻、さらに 僕と家内の日常生活の一部分が 何度か重なって、今まで経験したコトのない類の 幸福な気持ちを味わいました。「 こんな何でもない日常こそが、何よりも貴いのだ 」と素直に実感できたコトが嬉しく、パターソンとローラ、そしてジャームッシュ監督に 感謝したい気持ちでいっぱいです。

ぜひともオススメしたいのは、「 毎日をアクセク過ごしていて、いたわりや感謝の心を忘れているみたい… 」と自覚している皆さん。自覚もしていないようであれば 重症なので、少くとも 2 回は観ましょうね。パルムドッグ賞を授与されたマーヴィン役のブルドッグ、ネリーの演技 ( 特に、郵便受けにイタズラをする場面は 爆笑モノ! ) も必見です。

 

© 2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
© 2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

なけなしのお金をはたいて野良猫を助けたはずが、本当に救われたのは、どん底生活を送っていたストリート・ミュージシャンだった――。

『 英国王のスピーチ 』の製作陣が贈る、世界で一番心温まる奇跡の実話!

ボブという名の猫
幸せのハイタッチ
イギリス/ 103 分
8.26 公開/配給:コムストック・グループ
bobthecat.jp

【 STORY 】 ストリート・ミュージシャンとして生計を立てていた、ホームレスのジェームズ。ドラッグ常用者で親にも見放され、生きる希望も持てずにいた彼の前に現れたのが 一匹の茶トラの猫、ボブだった。出会った瞬間から不思議とジェームズに懐いたボブは、ジェームズに生きる希望とチャンスをもたらす。( プレス資料より )

猫好きなら知らない人はいないという ベストセラー実話小説の映画版で、想像していた以上に良かったです。ボブが愛らしいだけの話ではなく、ジェームズがドン底の生活から 如何にして立ち直ったか、どれだけ努力したかを、リアルに 率直に、誠実に描いた映画です。

心ない人間が多数通りすぎていく一方、更生中のジェームズに再出発のチャンスを何とかして与えようとする NGO 団体のヴァルと、怪我をしたボブを助けようとしているジェームズに力を貸し、やがて親友となる猫アレルギーのベティが重要な脇役として登場。ジェームズから離れようとしないボブを守るために、更生薬 ( 麻薬を断ち切るための薬で、これにもマイナスの要素がある ) とも縁を切ろうと固く決心した彼が、ヴァルいわく「 最悪の風邪を 100 倍 悪くしたような苦しみ 」の数日間を乗り超えて 完全な更生を成しとげる姿には、誰しも胸を締めつけられずにはいられないと思います。

ボブはモチロン、全ての場面で愛らしい。特に印象的だったのは、走り出したバスに跳び乗ってまで ジェームズについて行こうとする いじらしい場面、そして 路上コンサート終了時に ジェームズとハイタッチする お得意ワザの場面。
ジェームズ役の ルーク・トレッダウェイ、ヴァル役の ジョアンヌ・フロガット、ベティ役の ルタ・ゲドミンタスは揃って適役を好演。ボブ役は、ほとんどの場面を 本物のボブ自身が演じています。
監督は『 007 /トゥモロー・ネバー・ダイ 』のベテラン、ロジャー・スポティスウッド。
本作は、2017 年 ナショナル・フィルム・アワーズ UK の最優秀英国作品賞を受賞しました。猫アレルギーのあなたにも、コレだけはオススメします。

 

 © 2015 SBS PRODUCTIONS – SBS FILMS– TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION – FRANCE 2 CINÉMA – ENTRE CHIEN ET LOUP
© 2015 SBS PRODUCTIONS – SBS FILMS– TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION – FRANCE 2 CINÉMA – ENTRE CHIEN ET LOUP

ブルジョワのマナーを持った
ワイルドなコメディ。
恐ろしいまでの才能を持つ
イザベル・ユペールの独壇場。
―― New York Times ――

エル ELLE
フランス/ 131 分/ PG 12
8.25 公開/配給:ギャガ
gaga.ne.jp/elle

【 STORY 】 新鋭ゲーム会社の社長を務めるミシェルは、一人暮らしの瀟洒な自宅で覆面の男に襲われる。その後も 送り主不明の嫌がらせのメールが届き、誰かが留守中に侵入した形跡が残される。自分の生活リズムを把握しているかのような犯行に、周囲を怪しむミシェル。父親にまつわる過去の衝撃的な事件から 警察に関わりたくない彼女は、自ら犯人を捜し始める。だが 次第に明かされていくのは、事件の真相よりも恐ろしい ミシェルの本性だった――。( チラシより。一部省略 )

フィリップ・ディジャンの同名の小説を『 氷の微笑 』の ポール・ヴァーホーヴェンが監督したサスペンス。
覆面の男にミシェルが突如レイプされるファーストシーンを含めて 性的な場面の多い作品で、最初は米国での製作が決定していたものの、ミシェル役候補の女優たち ( 一説には、シャロン・ストーンや ジュリアン・ムーア ) から断られて暗礁に乗り上げていたところ、I・ユペールが出演を希望したコトで完成にこぎつけたという話です。
犯人は中盤を過ぎた辺りで分かってくるし、ミシェルの本性こそが 事件の真相よりも恐ろしいという前評判ほどには恐くなかったので、僕自身は少々拍子抜けしたというのが正直な感想。相当に思わせぶりな展開、どちらにも取れるミシェルの心理と行動、精神的に 少々 or ひどく病んでいる登場人物たちの絡み等は 一種の寓話のようでもあり、多少誇張されていると考えれば、彼らが自分の周囲にいる人間のようにも思えてきます。

I・ユペールは、何かを考えながら次の行動へ移る瞬間の顔に、今まで観た憶えのない 複雑 or ミステリアスな表情を漂わせていて、改めて そのうまさに感服。しかし 彼女自身は現在、どんな役に取り組むべきかを模索しているのでは? という気もしてくるのです。
脇役で最も興味深かったのは、高級アパルトマンに暮らすミシェルの母 エレーヌ ( ジュディット・マーレ ) 。久し振りに会ったミシェルから「 また 整形した? 」と聞かれ、「 うるさい。今度はプチ整形しただけよ 」と答える彼女の顔には、不自然な引きつれとコブのような塊りが…。さらに、ミシェルよりも遥かに歳の若い〝 財産めあての種馬男 〟と婚約までして周囲を驚かせる…。その姿が、怪物的であるにも拘らず、あっぱれ! と思わせるのですから凄いです。

 

ⓒ2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会
ⓒ2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会

血のつながらない家族、血のつながった他人――。
つまずき、傷つきながらも 幸せを紡いでいく大人たちの、
アンサンブルムービー。

幼な子われらに生まれ
日本/ 127 分
8.26 公開/配給:ファントム・フィルム
osanago-movie.com

【 STORY 】 一見 良きパパを装いながらも 妻の連れ子と うまくいかず、悶々とした日々を過ごすサラリーマン、田中 信。専業主婦の妻・奈苗に、元妻・友佳との間にもうけた実の娘と 3 ヵ月に 1 度会うことを楽しみにしているとは 言えない。実は 信と奈苗の間には、新しい生命が生まれようとしていた。血のつがながらない長女は そのことで より辛辣になり、「 やっぱりこのウチ、嫌だ。本当のパパに会わせてよ 」と言い放つ。信は、半ば自暴自棄で 奈苗の元夫・沢田と会う決心をするが…。( 試写招待状より。一部省略 )

直木賞作家・重松 清の同名小説を、『 繕い裁つ人 』 ( Vol.269 ) の三島有紀子が監督したヒューマンドラマ。
浅野忠信演ずる主人公・信の悶々としたユーウツな日々は、観る側を息苦しくさせますが、そのまゝ悲劇として終るワケではありません。ネタバレになるので説明は避けますが、ラストのクロースアップで信の顔に浮かぶ微笑が感動的に美しく、それだけでも最後まで観た甲斐がありました。
共演者は、奈苗に田中麗奈、友佳に寺島しのぶ、沢田に宮藤官九郎という顔ぶれ。

相当 驚かされたのは、フラッシュバックのひとつとして 突然に映し出される信と友佳のセックスシーン。特に その台詞の生々しさには ビックリさせられました。

 

 

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biteki-m@shogakukan.co.jp
(個別回答はできかねますのでご了承ください。)

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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