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2015.1.27

大高博幸の美的.com通信(269) 『ビッグ・アイズ』『ドラフト・デイ』『繕い裁つ人』『マエストロ!』 試写室便り Vol.84

bigeyes
ⓒ Big Eyes SPV, LLC. All Rights Reserved.

「これから、僕たちは ひとつ」。愛の言葉から 事件は始まった。
実在の画家 マーガレット・キーンと その夫 ウォルター。
60年代のアメリカ、ポップアート全盛期に衝撃を与えた<ビッグ・アイズ>シリーズを巡る ある秘密とは――?
ビッグ・アイズ』 (アメリカ/106分)
1.23 公開。bigeyes.gaga.ne.jp

【STORY】 世界中で一大ブームを巻き起こした、どこか悲しげな大きな目をした子どもたちを描いた<ビッグ・アイズ>シリーズ。ウォルター・キーンは、その作家として一躍有名人となった。しかし、実は その絵画は1枚残らず全て、内気なウォルターの妻・マーガレットが描いたものだったのだ。リッチなセレブ生活を手にした ふたり。だが、ある日、彼女は真実の公表を決意する。なぜ――? アート界を揺るがす世紀のスキャンダル――果たして、ふたりの運命は? (試写招待状より)

『チャーリーとチョコレート工場』『アリス・イン・ワンダーランド』のティム・バートン監督作品。主演は『her/世界でひとつの彼女』(通信(232)で紹介)や『ザ・マスター』(通信(145)で紹介)で好助演した エイミー・アダムスと、アカデミー賞®を2度受賞している クリストフ・ヴァルツ。他に ダニー・ヒューストン、テレンス・スタンプなどが出演。
まず、この映画には ファンタジーの要素を期待しないコトが大切。前述の T・バートンの2作の趣向とは全く異なる、現実的な内容だからです。僕は途中まで割と楽しんで観ていたのですが、アート界のパーティでウォルターが 批評家(T・スタンプ)に悪態をついて大騒ぎになる辺りから、彼が安っぽくてセコいだけの男に見えてきて、興ざめしてしまいました。もっとも、ウォルターにはマーケティングの才があり、そのためにマーガレットの絵が世に知られるようになったという経緯を考えれば、少々複雑な気持ちにもなるのですが…、結局はラスト近くの裁判の場面で、裁判官がシラケながら言った「君の芝居に付き合っているほどヒマではない」という台詞に、「100% 同感」と思ってしまいました。
マーガレットは純朴で内気、But 芯のある女性で、母親思いの娘(前夫との間に生まれた可愛い子)と いつも一緒にいたために 強くなれたという気もします。やはり、心の支えとなる人の存在は大切ですよね。演ずる A・アダムスは適役で、サンドラ・ディー風の髪形が よく似合っていました。彼女が いかにも内気そうに見える ひとつのポイントは、その小さな口。But、口を大きく横に広げて笑ったりすると、陽気な顔に見える…。頬も自然に盛り上がるので、幸せそうに見えるのです。
時代背景は1958~60年代で、当時のファッションや風俗・世相が 目に楽しく耳に楽しい。サンフランシスコの坂道のロングショット等、賑やかな街並みから行き交う人々の姿まで、あの時代を巧みに再現しています。
’30~50年代の大女優で、後にペプシ・コーラの副社長にもなった ジョーン・クローフォード(のそっくりさん)が1場面に登場。顔は それほど似ていませんでしたが、キャンディドカメラのフラッシュに向って サッとポーズを取るところなど、いかにもクローフォードらしいなぁと感じました。また ほんの端役ながら、マーガレットの家へやってくる“エホバの証人”の女性ふたりの演技(マナー、台詞、表情)が とてもとても良かったです。
P.S. マーガレットの絵のファンの方々は、マーガレット本人がカメオ出演している場面があるので、ぜひ気づいてください。“パレス・オブ・ファイン・アーツ”のシーンで、小さな本を手に ベンチに座っている老婦人(現在87歳前後)が彼女です。マーガレット(A・アダムス)が映っている後方に、マーガレット本人が ひとりで座っているので、きっと すぐに分かりますよ。たしか、レッド系のスーツか何かを着ていらしたと記憶しています。

 

©2014 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
©2014 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

ドラフト会議――それは、選手獲得を巡るGM(ゼネラルマネージャー)たちのバトル・ロイヤル!
ドラフト・デイ』 (アメリカ/110分)
1.30 公開。draft-movie.com

【STORY】 アメリカン・フットボールのプロリーグ、NFLに所属する クリーブランド・ブラウンズのGM サニーは、人生の崖っぷちに立たされていた。チームの運営と強化を担う彼は、最近の ふがいない成績に責任を感じ、今年こそは地元のファンの期待に応えたいと願っている。そのためには12時間後に迫ったドラフト会議で、超大物ルーキーを獲得することが必要不可欠だった。ところが ライバル・チームのGMに苦しい事情を見透かされ、チームの未来を売り渡す無謀なトレード話に応じてしまう。容赦ないプレッシャーの中で孤立し、キャリア最大の危機に見舞われたサニーは、誰を指名するのか。彼の人生の全てを懸けた決断は、全米を揺るがす大波乱を呼び起こす…! (試写招待状より)

ケヴィン・コスナーが『ラストミッション』(通信(226)で紹介)に引き続き、主役を務めている…。コレは観に行かねば。相手役は、親しみを感じさせる美人の ジェニファー・ガーナー。監督は『ゴーストバスター』シリーズを大ヒットさせた アイヴァン・ライトマン。フットボールやドラフトについて詳しくなくても、人間ドラマとして最初から最後まで興味をそゝります。
ドラフトで誰を指名するか…。迷い、調べ、考え抜いた末に、サニーが選んだのは…。その展開と結末が K・コスナーのスターイメージにピッタリしていて、彼のファンは大いに満足するはず。彼のファンではない人でも、情報・駆け引き・ハッタリを駆使しての展開に、のめり込むだろうと思います。
K・コスナー自身に関しては、気になったコトが2点。まずは、セリ出した丸いオナカ。シャツ姿になると、前作同様に目立つのです。エクササイズして引き締めてください。もうひとつは、右目のまぶたが重くなっていて、目が かなり小さく見えるコト。それは それでいいのですが、鏡の前に立ったバストショットで、左右が逆になっている顔を カメラが右目寄りの角度から捉えているため、それが極端に目立って見えました。今後、同じようなショットを撮影する必要が生じた場合は、大きいほうの左目が鏡に近い位置に来るように撮ってもらってほしい。その程度の要求は、彼ほどのスターなら、断固 通していいはずです。それはともかく、実在の陸上チームの物語だという次回作、『McFarland』も ガンバってください。

 

©2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
©2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

『しあわせのパン』の三島有紀子監督が 中谷美紀を主演に迎え、
女性から圧倒的人気を誇るコミックを実写化。
繕い裁つ人』 (日本/104分)
1.31 公開。tsukuroi.gaga.ne.jp

【STORY】 神戸の街を見渡す坂の上に たたずむ「南洋裁店」。店主 市江が 古びたミシンで仕立てる洋服は大人気。しかし、昔ながらの職人スタイルを貫く手作りで 一点ものの洋服は量産出来ず、まるで“頑固じじい”のような市江は、デパートからのブランド化の依頼にも、全く興味を示さない。「一生、着続けられる服を――」。一代目であった祖母が作った服のサイズ直し、あとは先代のデザインを流用した新作を少しだけ。市江は それで満足だったのだが――。 (試写招待状より)

池辺葵の大人気同名コミックの映画版。神戸を中心に兵庫県でオールロケされた作品で、異国情緒漂うレトロな雰囲気が 美しく撮影されています。
脚本は、デパートの服飾部社員の藤井(三浦貴大)が 市江のもとへ繰り返し訪れる場面を中心に構成されているのですが、その展開が やゝ単調。演出は、さり気ないようでいて相当ワザとらしい演技を 俳優陣に細かく付けている という印象を受けました。それでも二度ほど、ジーンとさせられる場面があったコトは確かです。そのジーンのひとつは、店じまいを ほのめかしていた同業の橋本(伊武雅刀)に、市江が「引導を渡されるまでは、自分から仕事を投げ出したり しないでください」と訴える場面…。
市江役の中谷美紀は適役です。But、やはり綺麗に映るコトに こだわりすぎている感じ(この通信で紹介した『ゼロの焦点』でも、『利休にたずねよ』でも、そう感じました)。たとえば、日本映画史上最高の美人女優である原節子さんは、嫉妬や憎悪といった負の感情を含め、抑制された演技をとうして、役の微妙な心理を鋭くも美しく印象的に表現していました。真の美人は、綺麗に映るコトに こだわらなくても、美しく映る…。そして 人間の体温や匂いをも含めて、観客に美を感じさせるコトが可能なのです。中谷さんには、そろそろ その壁を破って、より深い感動を与える女優になってほしいと願っています。

 

(C)2015『マエストロ!』製作委員会 (C)さそうあきら/双葉社
(C)2015『マエストロ!』製作委員会 (C)さそうあきら/双葉社

<謎の指揮者>と<負け組楽団員>で名門オーケストラ再結成!?
マエストロ!』 (日本/129分)
1.31 公開。maestro-movie.com

【STORY】 若きヴァイオリニスト 香坂のもとに、解散した名門オーケストラ再結成の話が舞い込む。だが集まったメンバーは 再就職先も決まらない「負け組」楽団員たちと、アマチュアフルート奏者の あまね。そこに現れた謎の指揮者、天道。彼の自分勝手な進め方に、楽団員 誰もが猛反発。しかし次第に、彼が導く音の深さに 皆 引き込まれていく。ただ一人、香坂を除いて。そして迎えた復活コンサート当日、楽団員たち全員が知らなかった、天道が仕掛けた“本当”の秘密が明らかになる――。 (試写招待状より)

上映時間129分は長すぎるのでは? と想像しながら試写会に行ったのですが、そんな心配は無用でした。
『運命』を演奏するコンサートのシークエンスが 見応え・聞き応え充分だったのは、そこへ行き着くまでのプロセスが良かったからで、音楽そのものと、香坂をはじめとする楽団員たちの「指揮のテンポが いつもと違う…」「ついて行かなくては…」などという心の台詞とを、僕は全神経を集中して聞きました。
この見事なクライマックスに続く『未完成交響曲』のシークエンスは、構成・演出ともに 必然的ながら やゝ弱く、蛇足的に感じられたコトが残念でした。しかし、今どき珍しいほど しっかりとした作品に仕上げられています。説明上 不可欠な回想シーン等も、それなりの効果を上げていました(特に あまねの回想シーンは、涙なしには観られません)。
香坂役の松坂桃李は、顔だけでなく手指まで見惚れるほど美しい。あまね役のmiwaは、役の感性を素直な演技で表現。天道役の西田敏行は、適役なのか どうなのか…(彼は NHKラジオの『新 日曜名作座』での語りが最高です。僕は聞き逃したりすると、クヤシくて たまらなくなるほどです。ファンではない方も、ぜひ一度、聞いてみてください)。その他、第1ヴァイオリン役の大石吾朗のうまさ、第2ヴァイオリン役の濱田マリ、ホルン役の斉藤暁らの個性的な助演が、作品に豊かさを与えています。
監督は、1971年生まれ、『毎日かあさん』(’12)の 小林聖太郎。

次回の試写室便りは、2月上旬に配信の予定です。では!

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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