ナイアシンアミドって、具体的にどんな効果が?【美容成分大全】
「シワ改善」の有効成分として注目を集めるナイアシンアミド。実はビタミンB群の一つです。シワ改善の他にも「美白」と「肌荒れを防ぐ」効果でも医薬部外品の有効成分として認められています。日本化粧品検定協会が美容成分をくわしく解説する【美容成分大全】。成分を正しく理解して、コスメ選びの参考に!
成分概要
成分名 | ナイアシンアミド |
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表示名称 | ナイアシンアミド(医薬部外品の表示名称:ニコチン酸アミド、ナイアシンアミド) |
主な配合アイテム | スキンケア、UVケア、ヘアケア |
成分のはたらき | コラーゲン産生促進、メラニン受け渡し抑制、セラミド合成促進、細胞の活性化、血行促進 |
医薬部外品としての効能効果 | シワ改善、美白、肌荒れ防止 |
効果
- シワ改善
- 美白
- 肌荒れ予防
- ターンオーバーを整える効果
- ニキビの改善効果
「シワ改善」の効能効果が認められている数少ない有効成分の1つ
コラーゲン産生促進
真皮のコラーゲン産生を促進する作用と、角層の形成を促進し皮膚のバリア機能を改善する作用により、「シワ改善」効果が認められています。
肌は、コラーゲン線維やエラスチン線維といった真皮内のタンパク質によってハリや弾力を保っていますが、これらのタンパク質が紫外線や加齢により変性したり減少してしまうとシワの原因となるため、これらに働きかけることで効果を発揮します。
「シワ改善」の有効成分として認められているのは、2022年12月現在、「ニールワン」、「レチノール」と、この「ナイアシンアミド」の3成分のみです。
「美白」や「肌荒れ防止」の有効成分でもある
メラニン受け渡し抑制
紫外線により表皮のメラノサイト内で過剰につくられたメラニンは、メラノサイトの突起を通じてまわりにあるケラチノサイト(表皮角化細胞)に受け渡されます。ナイアシンアミドは、メラニンの表皮角化細胞への受け渡しを抑制する作用により、シミ・そばかすを防ぎます。
「美白」の有効成分として配合された場合、「メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ」という効能効果が訴求されます。
セラミド合成促進
ニキビができやすい肌では角層の水分蒸散量が多いことが知られています。ナイアシンアミドは、細胞間脂質の主成分であるセラミドやコレステロールの合成を促進することが分かっており、これによって角層からの水分の蒸散を防ぐため、肌荒れやニキビの改善効果も期待できます。
細胞の活性化
ナイアシンアミドを含む「ビタミンB3」は、細胞がエネルギーをつくり出すために必要なビタミンであることから、皮膚の細胞を活性化することが期待でき、「肌荒れ防止」の有効成分としても認められています。
血行促進
血行を促進する働きもあります。その結果、皮膚の細胞の新陳代謝を促し、ターンオーバーを整える効果も期待できます。
美容賢者からの「アドバイス」
ナイアシンアミドのここがスゴイ!
「シワ改善」「美白」「肌荒れを防ぐ」の3つで医薬部外品の有効成分として認められています。医薬部外品の有効成分の多くは、認められた効能効果は一つなのですが、同じ濃度で3つの効能効果が認められているナイアシンアミドはすごく稀で、幅広い効果が期待できます。
ナイアシンアミドは化粧水にも配合できる!
「シワ改善」が認められている他の有効成分は“水に溶かして配合できない”成分であるため、乳液やクリームなどにしか配合することができません。
一方、ナイアシンアミドは“水溶性”で安定的に配合できるため開発しやすく、化粧水や乳液、ジェル、水系の美容液などさまざまなアイテムが多くのメーカーから発売されています。
「歴史・由来」その他の雑学
ニコチン酸とニコチン酸アミド(ナイアシンアミド)を合わせて「ナイアシン(ビタミンB3)」と呼びますが、体内では細胞内でグルコースなどの糖質、脂肪酸、タンパク質(アミノ酸)からエネルギーをつくり出す反応に必要不可欠です。
人体において必須アミノ酸のトリプトファンからつくることができますが、必要量に対して十分ではないため、食事などから摂取する必要があります。ナイアシンを多く含む食品としては、レバー、米ぬか、酵母、豚肉、魚肉、落花生などがあります。ナイアシンの欠乏症として”皮膚が荒れる”という症状があることから、ナイアシンアミドに「肌荒れ防止」の効果を期待して、医薬部外品の有効成分として、化粧水に0.1~5%、クリーム・乳液に0.1~3.5%配合することができます。
歴史
1867年にC. Huberが、タバコに含まれる有毒成分の1つであるニコチンを硝酸で酸化することでつくられる物質として発見し、ニコチンを酸化した物質であることから「ニコチン酸」と名づけました。1935年にはWarburgらが、赤血球の脱水素酵素の補酵素にニコチン酸アミドが含まれていることを示し、1937年にはC.A. Elvehjemらが、ニコチン酸アミドで犬の黒舌病を治せることから、ニコチン酸アミドにビタミンとしての働きがあることを発見しました。
主な原料の由来
合成
医薬品やサプリメントには?
ニコチン酸の欠乏症やその予防を目的とした内服薬に使用されます。また、栄養補助を目的に栄養機能食品などに使用されており、栄養機能食品に配合した場合、「ナイアシンは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。」などと表示することができます。
注意事項
人によっては、ほてりやヒリヒリ感など刺激を感じる場合があります。特に高配合されている場合は気を付けましょう。
<引用元>
Fragrance Journal, 280(32), 35-39, 2004
British Journal of Dermatology, 147(1), 20-31, 2002
薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会 議事録, 2017年1月20日
日光ケミカルズ株式会社他, 新化粧品ハンドブック, 2006, p.548
宇山侊男他, 化粧品成分ガイド 第7版, フレグランスジャーナル社, 2020, p.131-132,163
小西さやか, 知れば知るほどキレイになれる!美容成分キャラ図鑑, 西東社, 2019, p.92-93
日本ビタミン学会 Webサイト (ビタミンQ&A)
財団法人食品分析開発センターSUNATEC Webサイト (水溶性ビタミン(3))
マツモト交商 Webサイト (コンセプトシート 美白原料)
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
日本化粧品検定協会代表理事、日本薬科大学客員准教授、北海道文教大学客員教授、東京農業大学食香粧化学科客員准教授、各種協会の顧問、学会幹事を歴任。化粧品開発者として科学的視点から美容、コスメを評価できる専門家「コスメコンシェルジュ」。最短最適な美容で無駄を省く「時短美容家」としても活躍中。著書は『美容成分キャラ図鑑(西東社)』など13冊、累計56万部を超える。