お悩み別ケア
2023.6.13

酢酸トコフェロール|「肌荒れ防止」有効成分のビタミンE誘導体!【美容成分大全】

酢酸トコフェロールは、ビタミンE(トコフェロール)に酢酸を結合させて安定性を高めた“油溶性ビタミンE誘導体”です。皮膚に吸収されると酢酸が外れてビタミンEとして働きます。抗酸化作用と血行促進作用があり、医薬部外品の「肌荒れ防止」有効成分として認められています。日本化粧品検定協会が美容成分をくわしく解説する【美容成分大全】。成分を正しく理解して、コスメ選びの参考に!

プロフィール

成分名 酢酸トコフェロール
成分の働き 血行促進、育毛、抗酸化
医薬部外品としての効能効果 肌荒れ防止、フケ・かゆみ防止
表示名称 酢酸トコフェロール(医薬部外品の表示名称:酢酸dl-α-トコフェロール)
主な配合アイテム クレンジング、洗顔、スキンケア、メイクアップ、UVケア、ヘアケア

どんな「効果」があるの?

  • 血行促進
  • 育毛
  • 抗酸化

肌荒れを防ぐ

ビタミンEには毛細血管を拡張する作用や血管を保護する働きがあり、これにより血行を促進します。

血行不良が原因で起こるくすみや青クマへの改善効果が期待できます。

また、血行を促進することにより皮膚の細胞の新陳代謝を促し、肌のターンオーバーを整えて肌荒れを防ぎます。酢酸トコフェロールは、医薬部外品の「肌荒れ防止」有効成分として認められています。

育毛・フケやかゆみを防ぐ

ビタミンEは、毛細血管を拡張し頭皮の血流を改善することで、毛髪の成長を担う司令塔である毛乳頭への栄養分の補給を促し、毛髪の成長を助けます。

また、頭皮の炎症は毛髪の成長に悪い影響を与えるだけでなく、フケの原因にもなります。

炎症に伴う活性酸素の発生を抑えることで、頭皮の健康な状態を保ち、フケを予防し、育毛効果が期待できます。

活性酸素を除去し、肌トラブルを防ぐ

ビタミンEは、“フリーラジカル”と、“フリーラジカルではないもの”の2種類の活性酸素に対して抗酸化作用を発揮します。抗酸化作用により、以下の働きが期待できます。

●シミ予防:紫外線を浴びて活性酸素が発生することで、メラニン生成指令物質が放出されます。活性酸素を取り除くことで、メラニン生成指令物質の発生を防ぎ、メラニンの過剰な生成を抑制します。

●シワ予防:活性酸素により、真皮のコラーゲン分解酵素が活性化し、コラーゲンの減少や変質が生じます。活性酸素を取り除くことでコラーゲンの分解を食い止め、シワを予防します。

●毛穴ケア:過剰な皮脂分泌に加え、酸化した皮脂が、毛穴まわりの皮膚に対してダメージを与え、メラニンも増加し、毛穴を目立たせてしまいます。皮脂の酸化を抑え、皮膚へのダメージやメラニン生成を抑制し、毛穴の目立ちを改善します。

●ニキビ予防:皮脂分泌が増え、アクネ菌が毛穴の中で増殖すると、活性酸素が大量に発生して炎症を引き起こし、赤ニキビとなります。活性酸素を取り除くことで炎症が抑えられるため、ニキビを予防につながります。

美容賢者からの「ひとことアドバイス」

日本化粧品検定協会代表理事

小西 さやか


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合成タイプと天然タイプがあり、化粧品には合成品が使われる

酢酸トコフェロールには、合成のビタミンEからつくられるもの(医薬部外品名称:酢酸dl-α-トコフェロール)と天然ビタミンEからつくられるもの(医薬部外品名称:酢酸d-α-トコフェロール)の2種類があります。

化粧品に使用されるのは、ほとんどが合成タイプです。また、合成タイプと天然タイプに効果の差はありません。

開発者的マメ知識~こんな風にも役立っている~

化粧品によく使用されるビタミンEは、酢酸トコフェロールなどの誘導体やビタミンEそのままのトコフェロールがあります。誘導体は主に皮膚に対しての抗酸化作用を期待して、トコフェロールは酸化防止による製品の品質保持を目的に使用されます。

「歴史・由来」その他の雑学

油溶性のビタミンEは、強力な抗酸化成分として知られ、植物の種子などの植物油に多く含まれ、植物油の酸化を防いでいます。

ビタミンEは1つの化学物質ではなく、基本の構造が少し異なる“トコフェロール”と“トコトリエノール”の2つの系列に分けられ、それぞれに対して4種類、合わせて8種類の成分があります。

自然界ではトコフェロールが多く存在しますが、トコトリエノールの方が体内での抗酸化力が高いとされ、一時期注目を浴びましたが、化粧品を含めた使用実績はトコフェロールの方が多いです。

抗酸化成分は、自らが酸化されることにより相手が酸化されることを防ぐという働きをもっています。トコフェロールには抗酸化力を発揮する部分が1か所あり、その部分に酢酸を結合させることにより、酸化されることを抑えて、安定性を高めた誘導体が「酢酸トコフェロール」です。

「安定型ビタミンE誘導体」ともよばれています。皮膚に吸収されると、酢酸が皮膚内の酵素により切られてトコフェロールになり、抗酸化力を発揮します。油に溶ける性質のため、皮膚内の脂質、特に不飽和脂肪酸が酸化されて過酸化脂質になるのを防ぐと考えられています。

酸化されたトコフェロールは、ビタミンC(アスコルビン酸)により、元のトコフェロールに戻され、再度、抗酸化作用を発揮できるようになります。

歴史

1922年にH.M. EvansとK.S. Bishopがすでに知られたビタミンを含む飼料でラットを飼育すると不妊症になるのに、これにレタスを与えると回復することを見いだし、レタスに含まれる油溶性の未知物質をXと命名しました。

その後、1924年にB.SureによりビタミンE(tocopherol)と命名されました。

Tocopherolの語源は、Tocos(子供を産む)+pher(力を与える)+ol(水酸基)で、H.M.Evansによって命名されました。酢酸トコフェロールは、日本では1951年に医薬品として使用されるようになり、やがて化粧品にも使用されるなど、長い間使用され続けています。

主な原料の由来

合成

医薬品やサプリメントには?

医薬品には、ビタミンE欠乏症の予防および治療、末梢循環障害、過酸化脂質の増加防止に対して内服薬や、しもやけや慢性湿疹などに対して軟膏に使用されています。

食品においては、dl-α-トコフェロール酢酸エステルとして、栄養強化剤を目的とした保健機能食品のみ使用が認められています。

注意事項

医薬品成分なので、医薬部外品や化粧品に配合する場合には配合制限があります。

化粧品に配合する場合には、「酢酸dl-α-トコフェロール」は粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すものに無制限、粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないものに100g中3.03gまで、粘膜に使用されることがある化粧品に100g中3.03gまでです。

 

<引用元>
有機合成化学, 47(10), 902-915 (1989)
日医大医会誌, 9(3), 164-169 (2013)
日光ケミカルズ株式会社他, 新化粧品ハンドブック, 2006, p.434-438
鈴木一成, 化粧品成分用語事典2012, 中央書院, 2012, p.391
宇山侊男他, 化粧品成分ガイド 第7版, フレグランスジャーナル社, 2020, p.114
浦部晶夫他, 今日の治療薬2022 解説と便覧, 南江堂, p.514
薬食審査発第0524001号「化粧品に配合可能な医薬品の成分について」
薬食審査発第1225001号「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」
d-α-トコフェロール酢酸エステル及びトコフェロール酢酸エステルの食品添加物の指定に関する添加物部会報告書
日本化粧品工業会, 医薬部外品の成分表示名称リスト, 平成20年3月25日版
ニプロファーマ株式会社:ビタミンE錠50mg, インタビューフォーム

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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