クエン酸|化粧品としての効果は?【美容成分大全】
クエン酸はレモンなどの柑橘類に含まれています。レモンを食べて「酸っぱい」と感じるのはクエン酸によるものです。酸性であることから余分な角質を取り除くピーリング作用をもっていますが、作用は弱く、化粧品には製品の品質保持の目的でpH調整剤として配合されることが多いです。
プロフィール
成分名 | クエン酸 |
---|---|
表示名称 | クエン酸(医薬部外品の表示名称:クエン酸) |
主な配合アイテム | スキンケア、メイクアップ、ヘアケア、ハンドケア、ボディケア |
成分のはたらき | ピーリング、収れん(引き締め) |
医薬部外品としての効能効果 | ― |
どんな「効果・働き」がある?
- ピーリング
- 収れん(引き締め)
くすみを改善する(ピーリング)
ピーリング成分として有名なAHA(α-ヒドロキシ酸)の1つです。古くなった角層をはがすことでくすみを改善する効果が期待できますが、グリコール酸や乳酸などの他のAHAと比べると分子量が大きいことから肌への作用が強くなく、ピーリング作用も弱いです。
肌のキメを整える(収れん・引き締め)
角層細胞のタンパク質を一時的にかためて縮める収れん(引き締め)作用がありますが、作用は穏やかです。皮膚を穏やかに引き締めることで、肌のきめを整えます。
美容賢者からの「ひとこと」
開発者的マメ知識~こんな風にも役立っている~
水に溶けると酸性になるため、製品のpHを酸性側に調整する目的で配合されます。化粧品にはpHが変化すると、効果を発揮できなくなる成分があったり、製品自体の安定性を保てなくなる場合があります。そのためpHが大きく変化することを防ぐ目的で他のアルカリ剤と一緒に配合されることもあります。
また、化粧品に微量の金属イオンやミネラルが存在すると、酸化などにより品質が低下したり、化粧品に含まれる別
の成分と結びつくことで製品の機能を低下させることがあります。クエン酸はキレート剤として金属イオンと結合し、金属イオンの悪い影響を封鎖するために使われています。
クエン酸を化粧品に配合する場合は、ピーリング目的よりも、pHが大きく変化することを防ぐ「pH調整剤」や、金属イオンの悪い影響を封鎖する「キレート剤」として、化粧品の品質を保持する目的で使われています。
「歴史・由来」その他の雑学
AHA(α-ヒドロキシ酸:フルーツ酸ともよばれる)の一種です。分子が大きいため、ピーリング作用は強くありません。
天然に広く存在する酸の一種で、レモンなどの柑橘類や梅などに含まれる酸味成分です。私たちの体内では、細胞がエネルギーをつくり出すためのシステムである”クエン酸回路”という反応が必要不可欠です。
“クエン酸回路”は生体にとって非常に重要な機能で、ハンガリー・セゲド大学のアルバート・シェント‐ギョルギと英国・シェフィールド大学のハンス・アドルフ・クレブスにより発見、その反応系が解明され、それぞれ1937年と1953年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。水によく溶けて、水溶液は酸性(2%水溶液で約pH2程度)です。
歴史
1784年、スウェーデン系ドイツ人の化学者カール・ヴィルヘルム・シェーレがレモン果汁からクエン酸を分離しました。その後、他の柑橘類やパイナップル、動物の組織にも含まれていることが確認されました。
アメリカの製薬企業ファイザーが、1880年にレモンとライムの濃縮液を使ってクエン酸を製造、さらに1919年には発酵プロセスによるクエン酸の量産に成功しました。
現在では、ほとんどがデンプンあるいは糖を、コウジカビの一種であるAspergilus niger(アスペルギルス・ニゲル)で発酵させる方法により製造されています。クエン酸は化粧品だけでなく、薬品、食品、ソフトドリンク、洗剤、工業用などに幅広く利用されています。
主な原料の由来
発酵(デンプン類を発酵)
医薬品やサプリメントには?
医薬品の飲みやすさや安定性の向上を目的とした医薬品添加剤として、経口剤、注射剤、外用剤などに用いられています。
食品添加物として認められているため、酸味料として果汁、菓子類、乳製品に使用されます。また清涼飲料水には酸味料またはpH調整剤としても使用されています。
注意事項
特にありません。
<引用元>
工業化学雑誌, 67(5), 680-683 (1964)
日光ケミカルズ株式会社他, 新化粧品ハンドブック, 2006, p.41
鈴木一成, 化粧品成分用語事典2008, 中央書院, 2008, p.366
宇山侊男他, 化粧品成分ガイド 第7版, フレグランスジャーナル社, 2020, p.206-207
小西さやか, 知れば知るほどキレイになれる!美容成分キャラ図鑑, 西東社, 2019, p.145
ACS(アメリカ化学会) Webサイト (Molecule of the Week)
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 Webサイト (医薬品添加剤)
ファイザー製薬株式会社 Webサイト (ファイザー日本法人の歴史)
昭和化学株式会社 安全データシート (クエン酸無水)
化粧品成分ジャーナル Webサイト (化粧品成分オンライン)
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
日本化粧品検定協会代表理事、日本薬科大学客員准教授、北海道文教大学客員教授、東京農業大学食香粧化学科客員准教授、各種協会の顧問、学会幹事を歴任。化粧品開発者として科学的視点から美容、コスメを評価できる専門家「コスメコンシェルジュ」。最短最適な美容で無駄を省く「時短美容家」としても活躍中。著書は『美容成分キャラ図鑑(西東社)』など13冊、累計56万部を超える。