お悩み別ケア
2023.6.1

β-カロチン|化粧品としての効果は?【美容成分大全】

栄養素としても有名なβ-カロチンは、皮膚に吸収されてビタミンA(レチノール)に変化することで、肌荒れやシワ改善効果が期待できる成分です。β-カロチン自体にも強い抗酸化作用が確認されていて、油溶性のため乳液やクリームなどに多く配合されます。

プロフィール

成分名 β-カロチン
表示名称 β-カロチン、カロチン(医薬部外品の表示名称:β-カロチン)
主な配合アイテム スキンケア、メイクアップ、ボディケア、ハンドケア、リップケア
成分のはたらき 抗酸化、細胞の増殖促進、メラニンの排出促進、表皮ヒアルロン酸の産生促進、真皮構成成分の産生促進
医薬部外品としての効能効果

どんな「効果・働き」がある?

  • 抗酸化
  • 細胞の増殖促進
  • メラニン排出促進
  • 表皮ヒアルロン酸の産生促進
  • 真皮構成成分の産生促進

活性酸素を除去し、多くのトラブルを防ぐ(抗酸化)

β-カロチンは、”フリーラジカル”と、”フリーラジカルではないもの”の2種類の活性酸素に対して抗酸化作用を発揮します。抗酸化作用により、以下の働きが期待できます。

●シミ予防:紫外線を浴びて活性酸素が発生することで、メラニン生成指令物質が放出されます。活性酸素を取り除くことで、メラニン生成指令物質の発生を防ぎ、メラニンの過剰な生成を抑制します。

●シワ予防:活性酸素により、真皮のコラーゲン分解酵素が活性化し、コラーゲンの減少や変質が生じます。活性酸素を取り除くことでコラーゲンの分解を食い止め、シワの発生を予防します。

●毛穴ケア:過剰な皮脂分泌に加え、酸化した皮脂が、毛穴まわりの皮膚に対してダメージを与え、メラニン色素も増加し、毛穴を目立たせてしまいます。皮脂の酸化を抑え、皮膚へのダメージやメラニン生成を抑制し、毛穴の目立ちを改善します。

●ニキビ予防:皮脂分泌が増え、アクネ菌が毛穴の中で増殖すると、活性酸素が大量に発生して炎症を引き起こし、赤ニキビとなります。活性酸素を取り除くことで炎症を抑えるので、ニキビを予防します。

肌荒れを防ぐ(細胞の増殖促進)

β-カロチンは皮膚内に吸収されたのち、ビタミンA(レチノール)に変化するため、レチノールとしての作用も期待できます。レチノールの作用の1つとして、表皮角化細胞を活性化しターンオーバーを促すことで、肌荒れを改善します。

シミを薄くする(メラニンの排出促進)

レチノールの作用として、シミの元となるメラニンの排出を促す効果があります。これにより、メラニンが蓄積することによるシミを防ぐ効果が期待できます。

シワを改善する

表皮ヒアルロン酸の産生促進

レチノールが表皮内でヒアルロン酸の生成を促すことで、みずみずしくハリのある肌に導きます。

真皮成分の産生促進

レチノールが真皮内の肌の弾力を保つ成分であるコラーゲン線維やエラスチン繊維の産生を促すことで、深いシワを改善する効果も期待されます。

美容賢者からの「ひとこと」

日本化粧品検定協会代表理事

小西 さやか


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開発者的マメ知識~β-カロチンはこんな風にも役立っている~

β-カロチンは天然色素であり、化粧品の中身を”薄い黄色”に着色する目的でも使われます。クリームや乳液などに配合されることがあり、配合した場合でも「合成着色剤不使用」と謳われています。

食べても必要な分だけ体内でビタミンAに変換される!

脂溶性であるビタミンAは体内に蓄積されるため、食品やサプリメントでの過剰摂取に注意が必要ですが、β-カロチンは体内で必要な分だけビタミンAに変換されます。そのため過剰摂取の心配はないとされています。野菜や果物などの食事、時にはサプリメントを用いて積極的に取り入れましょう。

「歴史・由来」その他の雑学

β-カロチンは、自然界ではニンジン、カボチャ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜に多く含まれ、ミカンなどの柑橘類、スイカなどにも含まれています。
食品で摂取したβ-カロチンは体内で分子が切断されると、2分子のビタミンA(レチノール)になり効果を発揮します。人間は体内でビタミンAを合成できないので、β-カロチンは重要なビタミンA供給源の1つです。他にも、免疫賦活作用やがん予防作用なども報告されています。

歴史

1931年H. Wackenroderにより、ニンジンからルビー色の色素が抽出され「カロチン」と名付けられましたが、その後、1933年にKarrerたちにより、化学構造が少しずつ異なるα-カロチン、β-カロチンおよびγ-カロチンの混合物であることが確認されました。1954年にはスイスF・ホフマン・ラ・ロシュ社がβ-カロチンの工業的な製法に成功し、販売されるようになりました。

1920~1930年には、カロチンがビタミンAと同様の効果があると発表され、1932年には初めて抗酸化作用が、1968年にはその抗酸化作用が一重項酸素を直接消去することによる、というメカニズムが報告されました。

その後、プロビタミンAとしての効果や、人に対する抗酸化作用の研究が盛んにおこなわれるようになり、さまざまな生活習慣病の予防に効果があることが報告されています。1960年には食品添加物として指定されました。

なお、「カロチン」はドイツ語の”Karotin”に由来し、「カロテン」は英語の”Carotene”に由来しています。専門家の中では、現在は「カロテン」を使う機会が多くなっているようです。

主な原料の由来

合成または発酵

医薬品やサプリメントには?

医薬品には着色を目的とした添加剤として、食品には着色料や栄養補助目的で使用されます。

注意事項

特にありません。

 

<引用元>
栄養学雑誌, 46(5), 203-210 (1988)
フレグランスジャーナル, 20(5), 16-59 (1992)
オレオサイエンス, 12(10), 485-494 (2012)
オレオサイエンス, 14(12), 523-530 (2014)
日光ケミカルズ株式会社他, 新化粧品ハンドブック, 2006, p.336,416
鈴木一成, 化粧品成分用語事典2008, 中央書院, 2008, p.375
宇山侊男他, 化粧品成分ガイド 第7版, フレグランスジャーナル社, 2020, p.86
小西さやか, 知れば知るほどキレイになれる!美容成分キャラ図鑑, 西東社, 2019, p.114
厚生労働省, e-ヘルスネット(カロテノイド)
日本化粧品技術者会 Webサイト(化粧品用語集)
NHK放送文化研究所 Webサイト(放送現場の疑問・視聴者の疑問)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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