尿素は化粧品としてどんな効果がある?【美容成分大全】
尿素は天然保湿因子(NMF)を構成する成分の一つ。水分を引き寄せる作用があるため、多くの保湿アイテムに配合されており、「肌荒れ防止」効果で医薬部外品の有効成分として認められています。かたくなった角質をやわらかくする作用もあり、ハンドクリームやボディクリームにも配合されていることでも有名です。日本化粧品検定協会が美容成分をくわしく解説する【美容成分大全】。成分を正しく理解して、コスメ選びの参考に!
プロフィール
成分名 | 尿素 |
---|---|
表示名称 | 尿素(医薬部外品の表示名称:尿素) |
主な配合アイテム | クレンジング・洗顔、スキンケア、ヘアケア、ハンドケア、ボディケア |
成分のはたらき | 角質柔軟化、保湿 |
医薬部外品としての効能効果 | 肌荒れ防止 |
どんな「効果」がある?
- かたくなった角質を柔らかくする。カカトにも効果が期待できる。
- もともと皮膚にある成分。皮膚に浸透し、水分を引き寄せて保湿する。
- 「肌荒れ防止」の有効成分として認められている
余分な角質をやわらかくする
角層細胞はターンオーバーによって顆粒細胞から変化した核のない細胞で、「ケラチン」というタンパク質を多く含んでいます。尿素はこのタンパク質を分解する作用があるので、かたくなった角質をやわらかくする効果があります。
たとえば、角層が厚い“ひじ”や“かかと”など、乾燥した冬場にかたくなりやすい部位に尿素を高濃度配合したクリームを塗ると、徐々にやわらかくなるのはこの作用によるものです。また、肌が柔軟になることで新陳代謝が高まり、ターンオーバーが正常化することも期待できます。
皮膚に浸透して保湿し、バリア機能も保つ「肌荒れ防止」の有効成分
保湿
尿素は角質細胞内にある天然保湿因子(NMF)を構成する成分の一つです。化粧品などに配合された場合にも、水分を引き寄せる作用により肌のバリア機能をサポートします。この働きにより、「肌荒れ防止」の効能効果のある医薬部外品の有効成分としても認められています。
尿素配合のハンドクリームは、皮膚に浸透した尿素に体の中の水分が引き寄せられて手の表面に水分が集まり、水分量が増えることでうるおいを与える仕組みを利用しています。
美容賢者からの「ひとこと」
医薬品・薬用化粧品では配合上限あり!
医薬品では10~20%、指定医薬部外品では10%、薬用化粧品では3%の配合上限があります。
「歴史・由来」その他の雑学
もともとは、肝臓でタンパク質や核酸を分解した際に作られる窒素分を安全に排出するために働く物質で、「ウレア」ともよばれます。ヒトの皮膚では天然保湿因子(NMF)の構成成分として角層にも含まれており、天然の保湿成分として角層の水分保持に役立っています。
また、ほぼ全身の皮膚に存在し、体温調節を担っているエクリン汗腺からの汗にも含まれています。一般化学工業においては窒素肥料として、また尿素樹脂などの工業原料として大量に使用されています。
他には、航空機の機体や滑走路に散布する凍結防止剤として、尿素を主成分とした防氷剤が使用されています。一般的に使用される塩化カルシウムと異なり金属への腐食性がないため、微細な腐食から重大事故へつながる可能性が排除できない航空機に散布できるとして使用されています。
歴史
ヒトの尿に含まれる成分の一つで、1828年、Friedrich Wöhlerがシアン酸アンモニウムから合成に成功しました。この尿素の合成は、生物の体内で作られる有機物質を無機物質から合成した最初の実験として知られています。日本においては、1977年に角化症治療剤として尿素製剤が発売されました。化粧品においては、1950年代にNMF成分が皮膚の保湿に関係することが明らかになったことで、アミノ酸やピロリドンカルボン酸(PCA)などの他のNMF成分とともに使用されるようになりました。
主な原料の由来
合成
医薬品やサプリメントには?
外用剤として、アトピー皮膚や進行性指掌角皮症(主婦湿疹の乾燥型)、重度の乾燥をともなう皮膚疾患などの治療に用いられます。食品やサプリメントには使用されません。
注意事項
特にありません。
<引用元>
有機合成化学, 14(2), 75-79 (1956)
日本香粧品学会誌, 42(2), 109–124 (2018)
鈴木一成, 化粧品成分用語事典2008, 中央書院, 2008, p.103
日光ケミカルズ株式会社他, 新化粧品ハンドブック, 2006, p.510
宇山侊男他, 化粧品成分ガイド 第7版, フレグランスジャーナル社, 2020, p.133
浦部晶夫他, 今日の治療薬2021: 解説と便覧, 南江堂, 2021, p.1105
ファイザー株式会社:尿素クリーム20%「SN」, インタビューフォーム
独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構 Webサイト (尿素合成)
一般社団法人くすりの適正使用協議会 Webサイト (くすりのしおり)
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
日本化粧品検定協会代表理事、日本薬科大学客員准教授、北海道文教大学客員教授、東京農業大学食香粧化学科客員准教授、各種協会の顧問、学会幹事を歴任。化粧品開発者として科学的視点から美容、コスメを評価できる専門家「コスメコンシェルジュ」。最短最適な美容で無駄を省く「時短美容家」としても活躍中。著書は『美容成分キャラ図鑑(西東社)』など13冊、累計56万部を超える。