お悩み別ケア
2023.7.13

ブタプラセンタエキス|豊富な栄養素と成長因子を含む胎盤由来【美容成分大全】

プラセンタとは“胎盤”のことで、ブタプラセンタエキスは“豚”の胎盤から抽出されるエキスです。赤ちゃんを育む胎盤だけに、ビタミン・ミネラル・アミノ酸などさまざまな栄養素を豊富に含んでいて、それらが総合的に肌へ働きかけていると考えられています。医薬部外品の「美白」有効成分としてだけでなく、シワや肌荒れにも効果が期待できます。日本化粧品検定協会が美容成分をくわしく解説する【美容成分大全】。成分を正しく理解して、コスメ選びの参考に!

プロフィール

成分名 ブタプラセンタエキス
表示名称 ブタプラセンタエキス(医薬部外品の表示名称:プラセンタエキス(1)、プラセンタエキス(2)、プラセンタエキス(3)、油溶性プラセンタエキス、ブタプラセンタエキス-1)
主な配合アイテム クレンジング・洗顔、スキンケア、メイクアップ、UVケア、ボディケア
成分のはたらき チロシナーゼ活性阻害、メラニンの排出促進、抗炎症、コラーゲンの産生促進、保湿
医薬部外品としての効能効果 美白、肌荒れ防止

どんな「効果・働き」があるの?

  • メラニンの排出促進
  • チロシナーゼ活性阻害
  • コラーゲンの産生促進
  • 保湿
  • 抗炎症

美白・シミを予防する

メラニンの排出促進

表皮の基底層にあるメラノサイト内で過剰にメラニンが生成されると、つくられたメラニンは、周りの角化細胞へ引き渡され、表皮にメラニンを多く含む細胞が蓄積されるとシミの原因となります。プラセンタエキスに含まれるさまざまな成分は、細胞の働きを活性化し、表皮のターンオーバーを促してメラニンの排出を促進し、メラニンが蓄積することによるシミを防ぎます。

チロシナーゼ活性阻害

シミの元となるメラニンは、表皮の基底層にあるメラノサイトという細胞内でつくられます。メラノサイトの中で、“チロシナーゼ”という酵素がアミノ酸の一種であるチロシンに働きかけることで、黒褐色の色素であるメラニンが生成されます。

表皮細胞が紫外線を浴びて刺激を受けると、メラニン生成を促す情報伝達物質が放出され、メラニン生成指令を出します。この指令を受けるとチロシナーゼが活性化され、普段よりもメラニンが過剰につくられるとシミの原因となります。プラセンタには、チロシナーゼの活性を阻害する作用があり、メラニンの過剰な生成を抑えてシミを予防します。プラセンタエキスに含まれるさまざまな成分が総合的に働いているものと考えられています。

肌荒れを防ぐ

抗炎症

日々の弱い紫外線や酸化などのストレスにより、肌内部で微弱な炎症が生じることがあります。微弱な炎症は、表皮のターンオーバーを早める原因となり、角層のバリア機能を低下させます。プラセンタエキスは、炎症を引き起こす“ヒスタミン”が肥満細胞から放出されるのを抑える働きも確認されています。皮膚内部の微弱な炎症を抑えることにより、バリア機能を保ち、肌荒れを防ぐ効果が期待できます。

シワ・たるみを改善する

コラーゲンの産生促進

真皮に存在する線維芽細胞は、コラーゲンやエラスチンを産生し、肌にハリや弾力性を与えています。プラセンタエキスは、線維芽細胞の増殖を促すことにより、コラーゲンの産生を促進します。加齢などによって機能が低下するコラーゲンの産生を促進させることで、シワやたるみの改善などのエイジングケアに役立ちます。

保湿

プラセンタエキスは約10種類のアミノ酸を含んでいるといわれています。アミノ酸は角質細胞内にある天然保湿因子(NMF)を構成する成分の1つです。化粧品などに配合された場合にも、空気中の水分や角層中の水分を“つかむ”作用により、角層の水分量を増加させるため、乾燥による小ジワへの効果も期待できます。

美容賢者からの「アドバイス」

日本化粧品検定協会代表理事

小西 さやか


関連記事をcheck ▶︎

油溶性プラセンタエキスの開発で、多くの製品へ配合可能に

プラセンタエキスは、豚もしくは馬の胎盤から精製水で抽出した“水溶性”プラセンタエキスが主に使用されています。一方、豚の胎盤からオリーブ油を用いて抽出した“油溶性”プラセンタエキス(表示名称:プラセンタ脂質)とよばれる成分が開発され、これによりファンデーションやリップクリーム、クレンジングオイルといったオイル系のアイテムにも配合が可能になりました。

「海洋プラセンタ」「植物プラセンタ」もある

最近では、サケの卵巣膜から抽出・精製した加水分解サケ卵巣膜エキスを「海洋プラセンタ」とよんだり、メロンやサクラなどの花の胎座部分(種がめしべとつながる部分)から抽出されるエキス(表示名称:メロン胎座エキスなど)を「植物プラセンタ」とよんだりしています。ただし、これらは哺乳類の胎盤ではないため、ブタプラセンタエキスとは成分や働きは異なります。

「歴史・由来」その他の雑学

プラセンタエキスは、化粧品成分としては、豚もしくは馬の胎盤から血液を取り除き、凍結・融解などの方法によって無菌的に精製水で抽出した“水溶性”プラセンタエキスが主に使用されています。抽出する溶媒を精製水ではなく、オリーブ油にした“油溶性”プラセンタエキス(表示名称:プラセンタ脂質)も開発されています。プラセンタエキスには、アミノ酸をはじめ、核酸関連物質、ビタミン、ミネラル、酵素、ムコ多糖類などが含まれています。

さらに、プラセンタエキスを酵母・黒糖で発酵・熟成させた“発酵熟成”プラセンタエキス(表示名称:サッカロミセス/(黒砂糖/プラセンタエキス)発酵液)、プラセンタエキスを酵素により分解させた“加水分解”プラセンタエキス(表示名称:加水分解プラセンタエキス)なども使用されています。これらはプラセンタエキスをさらに処理しているため、元々のプラセンタエキスとは含まれる成分などが異なります。

プラセンタエキスは多くのメーカーにより製造されていますが、その抽出法などをそれぞれ工夫することにより、差別化が図られています。抗生物質を与えずに徹底した防疫管理の下で飼育されたSPF(Specific Pathogen Free)豚という特定のブタの胎盤を使用しているものもあります。

歴史

プラセンタは“胎盤”を意味し、古くは「医学の父」といわれるヒポクラテスの時代(紀元前400年頃)にまでさかのぼり、古代エジプトの女王クレオパトラも、若さを保つために愛用したといわれています。中国では秦の始皇帝以来、不老長寿の妙薬として強壮、発育不全、虚労などに用いたといわれています。その後、漢方では紫河車(しかしゃ)とよばれて幅広く活用されていました。

近代医学では、1933年にロシアのFilatovが、プラセンタが組織の再生能力を持つことを確認、ヨーロッパをはじめ各国でプラセンタエキスが開発され、内服や注射剤として使用されるようになりました。

日本では1940年代に、母乳分泌促進、疲労回復、強壮などの治療目的とした大衆薬が発売されました。美容分野では三省製薬が1960年代にプラセンタエキス配合の“シミ治療外用剤”の塗り薬を開発。その後、プラセンタエキス配合クリームは医薬品から医薬部外品へと分類が変更され、幅広く使われるようになりました。

当初はヒトの胎盤を使用していましたが、やがてウシの胎盤を使用したプラセンタエキスも使われるようになりました。しかし、化粧品において、ヒト由来のプラセンタエキスは倫理上の問題で、2000年にはウシ由来のプラセンタエキスは狂牛病(BSE)の問題から使用されなくなり、現在では、ブタやウマ由来のものを中心として使用されています。

主な原料の由来

動物(ブタの胎盤より抽出)

医薬品やサプリメントには?

医薬品には、配合されません。サプリメントには、美肌効果を期待して使用されます。

注意事項

特にありません。

 

<引用元>
J. Soc. Cosmet. Chem. Japan., 16(1), 10-14 (1982)
フレグランスジャーナル臨時創刊号 No.4, 98-101,167-176 (1983)
FOOD Style 21, 19(4), 65-67 (2015)
一丸ファルコス株式会社:ファルコニックスPC-1, パンフレット
一丸ファルコス株式会社:技術資料 (プラセンタの美容効果)
週刊商業, 2016年6月6日号, p6
小西さやか, 知れば知るほどキレイになれる!美容成分キャラ図鑑, 西東社, 2019, p.62-65
三省製薬株式会社 Webサイト (三省製薬の歴史)
株式会社ホルス Webサイト (原料ヒストリー)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

この記事をシェアする

facebook Pinterest twitter

関連記事を読む

あなたにおすすめの記事