片頭痛体質は遺伝するってホント？真相を医師に直撃！【美容の常識ウソ？ホント？】
日々の生活で生まれる美容の疑問を専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は片頭痛について。片頭痛体質は遺伝するって…ホント？ 東京頭痛クリニックの丹羽潔先生にお話を伺いました。
Q：片頭痛体質は遺伝するってホント？
痛みとともに吐き気やめまいを伴い、体を動かすことで悪化する片頭痛は日常生活にも支障が。はっきりとした原因は解明されていないものの、親からの遺伝で発症しやすくなるというウワサが。実際のところどうなのでしょうか？ さっそく、この疑問を丹羽先生にぶつけてみました。
A：ホント
「両親どちらもが片頭痛持ちだと85％以上の確率、母親だけでも50％以上の確率で遺伝します」（丹羽先生・以下「」内同）
片頭痛の原因は？
「特定の遺伝性疾患を除き、片頭痛の遺伝率の高さはあらゆる家族性の疾患を抑えてNo.1。糖尿病や高血圧の家系があるように、片頭痛の家系が存在するのです。
遺伝は遺伝でも片頭痛は“多因子遺伝”と呼ばれ、上記の遺伝素因に加えて、様々な環境要因が加わることにより脳が過敏に反応して誘発されるもの。環境要因とは周囲から受けるストレス、反対にストレスからの解放、寝過ぎや寝不足、ラッシュアワーの混雑した電車、騒がしい音、光、臭い、天気、生理など。これらの影響がなければ、片頭痛の遺伝子を持っていても発症しない人もいます」
幼児期の片頭痛
「片頭痛は2〜3歳の幼児でも起こり、その場合は母親が片頭痛持ちであることがほとんど。ただし幼児の片頭痛は頭が痛いと訴えるよりも、腹痛として症状が表れることが多いです。
これは脳がまだ未発達で痛みを和らげるセロトニンが上手く作用せず、腸内のセロトニンが活発になるため。また、大人に比べて体温が高く心拍数が速いので、血管が拡張している起床時に発作が起きるのも特徴です。
例えば、朝からお腹が痛いと言うので病院に連れて行ったら、着く頃には腹痛が治まってケロっとしている…といった事例は片頭痛である可能性が高いですね」
思春期の片頭痛
「小学校に通い始めてから思春期かけては、繰り返す片頭痛によってメンタル面が不安定になることも。とくに注意したいのは両親もお子さん本人も片頭痛の自覚がない場合。
片頭痛が起きやすい起床後に腹痛や頭痛がひどく、学校に遅刻する日が増えることで、単にサボりたいだけなのでは？と懐疑的に捉える親や教師が少なくありません。これが続くと本人は“学校に行きたくないから痛くなる”と思い込み、朝起きるとメンタルが落ち込んでしまい不登校になる…という可能性もあるのです」
幼児期と思春期の片頭痛治療は？
「幼児期や思春期は脳や身体も未成熟。服薬だけに頼るのではなく、片頭痛のきっかけになっている原因、とくにメンタル問題をカウンセリングする方法や自律神経を安定させるための認知行動療法（バイオフィードバック法）も効果があります。
認知行動療法はストレスの原因を探ることはもちろん、睡眠の過不足や食品、スマホやPCに触れている時間など日常生活の観点から片頭痛の改善を図る治療法です。小児の片頭痛に対しては、高い臨床効果と効果の持続性も指摘されており、その効果は成人よりも高いことが報告されています。
ストレス以外が主な誘因である場合は、血圧や心拍数などの基準値を測定しておこなう“温度バイオフィードバック・トレーニング”の導入が有効です。ストレッチや深呼吸の後、基準値に比べてどれほどリラックスできているかを数値化することでストレス軽減のコツを覚えてもらいます」
非薬物療法によるメリットは？
「脳も身体も未成熟であるお子さんに対して、なるべく服薬に頼らず治療を受けさせたいと考える親御さんは多いはず。上記で述べた認知行動療法の長所は、非薬物療法であるため薬物依存に陥る危険性がないこと、副作用がないこと、安価なこと。まさに願ったり叶ったり、といったところでしょう。
しかし、統一された治療方法ではなく施設によって方法が異なること、治療者には一定の知識・技量が求められること、即効性に乏しいことが短所として挙げられます。残念なことに治療者側が行動療法に熟練していない場合、片頭痛の臨床的改善度に関しては有意差は認められていないのです。
幼児期や思春期の片頭痛は非常に複雑なこともあり、どの診療科目を受診すれば良いか正常に判断するのは難しいと思います。内科や小児科を受診してもこれといった異常がないにも関わらず、お子さんが毎朝のように頭痛、腹痛、吐き気などを訴えるならば家系内に片頭痛持ちの人がいないかを確認してみてください。
片頭痛持ちの人がいた場合は当院のような頭痛専門外来にかかり、診察後は必要に応じて治療を受けることを検討していただきたいですね」
文／井上ハナエ
※価格表記に関して：2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
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東京頭痛クリニック理事長。東海大学医学部を卒業後、ドイツ、アメリカへ留学。大学病院で頭痛や脳卒中を中心に脳神経内科診療・研究に携わり、2005年に日本で開業医としての道を歩み始める。自身も片頭痛や群発頭痛といった頭痛症状と戦いながら頭痛外来の開設を果たし、国内外より好評を受けて2015年に「東京頭痛クリニック」を開院。頭痛のエキスパートとして講演会やメディア出演も多数。著書に『めまいを治す63のワザ+α』（保険同人社）、『神経救急・集中治療ハンドブック 第2版』（医学書院）などがある。
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