松本若菜さん「笑いジワには“福”を感じる。服や時計がなじむように、シワも慈しみたい」|美的GRAND
春の息吹を感じるメイク、シックなモードメイクを纏い、さまざまな表情を見せてくれた。作品や年齢ごとにその存在感はより深みを増し、華やかな世界にあっても、ナチュラルな素地は変わらない。焦らなくても、抗わなくてもいい。強くなるために優しく、優しくなるために強く。実力派俳優の活躍は、私たちをいつもエンパワメントしてくれる。
松本若菜|心と体、凪ぐ。


ニット¥242,000、スカート¥286,000、ファー¥792,000、シューズ¥181,500/予定価格(ミュウミュウ クライアントサービス〈ミュウミュウ〉)
Profile
まつもと・わかな/1984年鳥取県出身。2007年に俳優デビュー。’17年の映画『愚行録』で第39回ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞。’22年のドラマ『やんごとなき一族』での演技も高く評価される。主な出演作に、大河ドラマ『どうする家康』、ドラマ『西園寺さんは家事をしない』『わたしの宝物『』Dr. アシュラ『』ザ・ロイヤルファミリー』、映画『室町無頼』など。映画『正直不動産』が5月15日に公開予定。
「濃い色のリップは、大人にこそ似合う素敵な色ですよね」
ベージュのコートに合わせたブラウンカラーのリップが印象的だったという松本若菜さん。その肌は艶やかで、プライベート同様に、役でもナチュラルメイクが多い。スーパー救命医、生産牧場の立て直しに奔走するシングルマザーと、昨年も仕事に奮闘する女性を多く演じてきた。そして、今春の主演ドラマ『対決』で演じるのは、初めての新聞記者役。松本さん演じる菊乃が、ある医大の入試で女子の点数が下げられているという疑惑を追及する中で、医大理事の晴海と対決する。男性優位の社会で理不尽な差別に遭いながらも、それぞれの立場で強く生きてきたふたりの姿は、多くの女性の心に響く。

「女性差別というテーマは、私自身も避けては通れないものでした。菊乃は強い信念をもつパワフルな女性ですが、だからこそ耐えてきた部分もあります。おかしいと思うことは言葉で伝えたいけれど、自分が言わなければ周囲にも迷惑をかけないのでは…と考えたりと、幸せになるために、時には自分の思いを抑えて我慢をしてきた世代。そういう彼女が、自分の正義と家族の将来、そして自分らしさの間で葛藤する姿を通して、私も自分の立場や正義とどう向き合い、何を信じるのかについて考えさせられています」
松本さんも、「女性だから無理」という理由の前に、仕事でモヤモヤとした思いを抱えた経験がある。
「『女は黙っとけ』的なことを言われたり、言外にそういうニュアンスを感じると、奥歯をグッとかみ締めていました。反論するにはとてつもないパワーが必要で、自分が我慢すれば…と諦めてしまったことも。それでも、受け流せないことはありますよね。ひとりひとりが自分を押し殺さなくていい環境にしていかなくてはと思うと同時に、“女だから”と無意識に甘えていた部分も気をつけていかなくてはと感じています」

一方で、女性の力を感じることも多い。「夢のひとつだった」日曜劇場のドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』や今作で女性監督と仕事をする中で、そのしなやかな姿勢には学びが多いと言う。
「とにかく妥協をしないおふたりですが、信念を押しつけるのではなく、『こういう演出だとどういう感情になりますか』など、演者やスタッフに寄り添いながら柔軟に対応してくださるので、私も冷静に芝居と向き合うことができ、新たな感情を引き出していただきました。『黙ってついてこい!』だけではない優しい力強さや頼もしさ、柔らかな現場作りは勉強になります」
今や映像作品に不可欠な存在となり、その芝居は豊かな情緒をもたらしてくれる。存在の重みが増す程、現場でのあり方も変化する中で、後輩に相談されることも増えてきた。
「『大変だよね、でも頑張ろうね』だけでなく、解決策も一緒に探れる存在であれたらと思います。若い世代の声を聞き、困っている状況を改善できるように寄り添うことが年齢やキャリア的にもしやすい立場になってきたと思うので、私自身も声を上げる勇気をもちたいと思っています」
笑いジワには“福”を感じる。その表情は、10代、20代の自分には出せなかったもの。服や時計がなじむように、シワも慈しみたい

ボディスーツ¥470,800/参考価格、デニムパンツ¥313,500、シューズ¥207,900、ブレスレット/参考商品(リシュモン ジャパン アライア〈アライア〉) ネックレス¥2,838,000、イヤリング[左耳]¥410,300、イヤーカフ[右耳]¥336,600、リング[左手中指]¥865,700、リング[右手中指]¥2,090,000(レポシ日本橋三越本店〈レポシ〉)
奥歯をかみ締めながら、我慢をしてきたことも。時には声を上げる勇気をもちながら、自分の信じるものと柔軟に向き合っていきたい

コート¥646,800、ベルト¥52,800(マックスマーラ ジャパン〈マックスマーラ〉) 時計¥2,013,000(オメガ) イヤリング[右耳]¥873,400、リング¥2,244,000(レポシ日本橋三越本店〈レポシ〉) シューズ¥187,00(0 セルジオ ロッシジャパン〈セルジオ ロッシ〉)



今号の特集である「透明感のある肌」の印象を尋ねると、「潤っていて、艶のある肌」と答えた。
「透明感のあるメイクも素敵ですが、肌をしっかりケアしないと下地やファンデーションも生かせないと教えていただいてからは、保湿を丁寧に行うようになりました。そうして、その時々の自分に合う透明感を出せたらと思いますが、シワをなくしたいとは思わないんです。笑いジワがなければ“福”な感じがなくなる気がするし、笑いジワのある表情は10代、20代の自分では出せなかったものでもあるから、服や時計が自分になじんでいくように、シワも育てていけたらなと思います」
「どんなに忙しくても、『大変だ』とは絶対に口にしない方。そして、いつも自然体」。ある俳優が松本さんのことをそう語っていた。いつも明るく、こちらを穏やかな気分にさせてくれる。とはいえ、時に多忙は優しさをそぎ、他人への眼差しを頑なにすることがある。作品が途切れず、緊張感ある撮影が続く中で、気持ちに余裕がなくなることはないのだろうか。
「年末年始など、ふと気が緩んだ瞬間に体調をくずすことがあるので、“無理をしないこと”を心掛けるようになりました。絶対に楽しいだろうなと思う食事会でも、行けば翌日つらくなると予想できるなら、断る勇気を出すことも。無理をすると肌や体は正直に反応するし、それは画面を通しても伝わるので、コップの表面張力が最大まで行かないように、日々、当たり前のケアを積み重ねていくことの大切さを感じています。今の季節だと花粉症がひどいので、ロケが続くときは普段より念入りに洗顔をしたり、食事面では、王道ですが納豆卵かけごはんを毎日食べたり。1回150gずつストックしているごはんに納豆と卵を混ぜてかけるのですが、空気を入れるようにして混ぜると白身がメレンゲみたいになり、満腹感が増すんです(笑)」

旅をするよりも「家で過ごす時間が至福」なのは今も変わらない。手芸好きな松本さん、最近は編み物にハマっている。
「最近、かわいい毛糸が多いんですよね。動画を参考にかぎ針編みに挑戦してみたら、すっかりハマりました。無心に編んでいるとオンとオフが自然と切り替えられるんです。撮影に入ると編めなくなりますが、たまっていく毛糸を眺めながら、次に編むものを想像するのも楽しいんです(笑)」
「今日はアイスを買って良し」。気持ちが落ち込む日は、そんな風に、自分にちょっとしたご褒美を贈る。頑張る人程自分にOKを出せないことも多いけれど、最近は考え方にも変化が。
「ひとつの作品が終わった後、『やり切った!』とやっと思えるようになってきました。もっとできたのではないか、こうするべきだったのではないかと反省ばかりですが、それでも、足りなかった自分も許せるようになったというか。心が少しずつほぐれてきたような感覚があり、それが次のお仕事や挑戦に向かう原動力になっている気がします。必死にやってきたことは映像にも表れていると信じて、自分の頑張りも認めてあげながら前に進んでいけたらと思います」
やり切ったと、やっと思えるようになってきた。反省だらけの自分を許せるようになってきた。自分の頑張りも認めてあげようと思っています

ジャケット¥1,210,000、ニット¥286,000、カットソー¥178,000、スカート¥1,705,000、ソックス¥61,600/予定価格(ミュウミュウ クライアントサービス〈ミュウミュウ〉)
プレミアムドラマ『対決』
ある医大が入試の採点過程で女子の点数を意図的に下げているという噂を聞いた新聞記者の檜葉菊乃は、独自に取材を始め、医大理事・神林晴海と対峙する。男性優位の社会で多くの理不尽に直面してきた彼女たちの闘いの行方とは――。月村了衛の同名小説をドラマ化。出演:松本若菜、鈴木保奈美ほか 4月5日より毎週日曜22時〜、NHK BSP4K・BSにて放送(全5話)
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。