「ハット」がもたらす、圧倒的な美容効果！【松本千登世「へーっ、美容って自由なんだ！」vol.20】

年齢とともに常識という枠にとらわれがち。美容も例に漏れず。そんな私の凝り固まった価値観や美意識をがらりと変えた「ひと」「もの」「こと」をひとつひとつ丁寧に綴りたいと思います。第20回は、ハードルが高いとされるファッションアイテム「ハット」と大人の関係。じつは思い切って髪を切るのと同等の、いやそれ以上の美容効果あり!?

ハットを主役にしたら、新しい顔に出会える

さまざまな過去最高を塗り替え、圧倒的な暑さを記録した2023年夏。多くの人が「早く過ぎ去ってほしい」と溜め息をつきながら過ごしていたに違いありません。もちろん、私もそのひとり。でも、でも……、本音を言うと、「結構、楽しかった」のです。それは、人生で初めて手に入れた、大好きなハットと過ごしたから。ナチュラルでいてクラシカル、ほんのりモードなオフホワイトのパナマハット。毎日、このハットを「主役」にしたら、服もメイクもヘアもアレンジが楽しくて楽しくて、結果、自分自身が日々、新鮮に映ったのです。さらに驚かされたのは、会う人、会う人、声をかけてくれたこと。中でもいちばん多かったのは「いいね、ハットが似合って」。そのあとに必ず「私は似合わない」のひと言を添えて。あまりにそう言われるので、そのたび、逆に「なぜ、似合わないと思うの？」と問いかけることにしました。すると「背が高いから」「背が低いから」「いかり肩だから」「なで肩だから」「顔が丸いから」「首が短いから」……、その人なりの理由が出てくる、出てくる！　裏返せば、多くの人がハットと自分との関係性を意識した経験があるという証に違いないと確信しました。以前の私が、そうだったように。ただ、今年の夏はラッキーにも命の危険を感じるほどの陽射しが続いたから、似合わない、かぶれない、を軽々と超えることができた。私にとっては、今年の猛暑が都合のいい「言い訳」になったのです。

そうだ、秋冬のハットに挑戦してみよう。今度は言い訳を探さず、純粋に自分がときめくために。酷暑を楽しみに変えるほどの、圧倒的な力を持つファッションアイテム、せっかくなら「一生もの」を手に入れたいと、男性誌に携わる友人の勧めもあって、「THE FAT HATTER」を訪ねました。

古きよき時代のN.Y.、その帽子屋をイメージしたという、都会の喧騒を忘れさせるショップ。扉を開けた途端、「男性たちの聖地」に足を踏み入れたような不思議な感覚に。「HAT MAKES A MAN（男は帽子で決まる）」がコンセプトのハットショップ。写真は代表の菊地章仁さん。THE FAT HATTER HPはこちら

ハットが顔の一部のように、自身の一部のようにマッチして、それはそれは素敵な菊地さんの知識と感性と思いに導かれ、ハットをオーダー。素材、色、サイズ、クラウン（山の部分）の形や高さ、ブリム（つばの部分）の幅や肩さ、リボン、ライニング……、私だけのひとつが出来上がっていく過程に、心底わくわくさせられました。そして、サンプルをかぶったときの昂揚たるや！　「菊地さん、私、今日眠れないかもしれません」。それは、思い切って髪をカットしたときに、眠れなかったほどの何とも言えないあの感覚にそっくりだったのです。まだ見ぬ新しい自分に出会えた、あの昂揚に……。こうして完成した「私だけのハット」は、すでに私の表情も顔色も明るくしてくれています。

黒を中心にモノトーンがほとんどの私のワードローブに自然に溶け込みながら、ほどよいアクセントにもなって全体を軽やかに見せてくれる、サンドベージュをセレクト。よりマニッシュな雰囲気にしたいと、同系色の細いリボンに。

この記事を読んでくださった、ハットに少しでも興味がある方、一緒に挑戦してみませんか？　菊地さんがおっしゃる「ハットを堂々とかぶる、格好いい女性が増えてほしい」に、皆で挑戦したいと思うのです。くたくたになるまで、いや、くたくたになっても、一生大切にして、いつか自分の一部に見えるくらいになったら、このうえなく素敵。未来の自分が変わる予感がして、今、私は、マックスの興奮に包まれています。

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