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2023.1.23

ゲスト・RIKACOさん|作家LiLyの対談連載「生きるセンス」第2話「今の自分を創った時代とブレない理想像」

その時々で訪れる人生の岐路。女性として、妻として、母として、社会の中のひとりとして、どうにもこうにも答えがでない時、先輩たちからの生きるヒントが役立ちます。憧れの女性とLiLyの対談エッセイ。【作家LiLy対談連載「生きるセンス」第5回ゲスト・RIKACOさん 】

育児にひと段落がついた今、
青春時代とはまた違うかたちで改めて「自分自身」を探している。
「今の私」をつくった「背景」はなにか。

テレビでふと『探偵物語』の再放送を目にしたことをきっかけに、RIKACOさんは「自分でも不思議なくらい」松田優作さんへの興味が止まらなくなったという。
自分でも理由がわからないのにとても引きつけられることって、ある。そう多くない。そう何度もはない。でも、時々ある。だからこそ、探究心によって導かれるそのドアの先には今後の人生のヒントになるようなものがあるんじゃないかという予感まで生まれてきて、だからこそどんどん夢中になる。
「まさに昨日、松田さんについて書かれた本を読み終えたところで、夢中になっている自分にビックリしているくらい。『探偵物語』ももちろん最初から見直して、松田優作という一人のスターを通して昭和という時代について考えている真っ最中なのね。自分でもどうしてここまで引きつけられるのか、が分からないから、何故? という気持ちを自分の中で紐解いていく作業に夢中になっているのも確かにあると思う。
昭和という時代が今の私を創ったことは間違いないんだなって、改めて感じながらその奥を探っていっている感じ。
当時の芸能界を生き延びた方たちは、どんなに苦労をしてでも這い上がっていくパッションがもの凄い! そこにも、今の時代にはないものを感じて。そこは過去から今また呼び戻してもいいものなのかもしれないって思ったり。
要は、情熱だよね! パッション!
ただ、あの時代って嫌なこともたくさんあったのね。それこそ今では考えられないような嫌のこと。作品を観ていても、内容もすごく過激だしね……」
昭和56年生まれの私の記憶の中にある(リアルな体感として知っている)昭和は、とても限られたものではあるけれど、それでも子供ながらに目にしたテレビの中の過激さをよく覚えている。小学校から帰ってテレビをつけると刑事ドラマがやっていて、まだ夕方なのに女の人のおっぱいが丸出しのラブシーンがあったり。
「ヌードもそうだし、女性の扱われ方も、今では考えられないくらい差別的だったと思う。もちろんそれは作品の中だけではなくて、現場での女優さんの扱われ方だってそうだったと思う。作品を観ていて、切なくなったりするのよ。そういう面では今はいい時代になってきていると思う。

ただ、過酷な時代を経ての今、なんだよね。

そんな時代にトップで活躍している女優さんたちは、それはもうとても強くって。倍賞千恵子さんや桃井かおりさん。もう、本当にかっこよくてね。肝の座り方が違う! タフさに痺れるのね」

育児第一優先で生きてきた
約20年もの時間を経て、
もう一度、「魂」に
火をつけてくれる
カッコイイ女性像。

過酷な時代を生き抜いた
強くてタフで肝の座った
昭和の女優/女性たち。

「そんなふうに昭和の作品を観ていると、自分の中にパッションが蘇ってくる感覚があるの。過激さの中にある昭和独特の熱さというか。ああ、そこに、私がこれから生きるべき60代のヒントがあるかもしれないって思ってる」

自分自身が最も影響を受けた時代(昭和)を現在(令和)から冷静に振り返る/新たな視点から更に深掘りすることで、次のライフステージに必要な情熱の引火剤を得ているというRIKACOさんのお話を聞いて、「平成ギャル」について考えながら『オトナ白書』というエッセイ本を作っていた今年のはじめのことを思い出した。

私自身も、二十年前の自分を振り返りながら、大人にも男にも媚びない「ギャル」の出現がどう時代の流れを変えていったのかを改めて考えることで、まさにRIKACOさんと似たような体験をした。

十代の頃のヒリヒリとした情熱を当時の時代の空気感ごと思い出すことで、次のライフステージに必要なもの/失いそうになっていたけれど今こそ再び蘇らせるべきもの、が自分の中で明確に見え始めたのだ。

キーワードは、「青春」。

特に、母親になる前の自分自身を創った時代/場所を今いる場所(現在)からもう一度深く遡ってみると、育児期間中に忘れていた/母親としての顔が濃くなることで自然と薄れていた「自分自身の顔」を思い出し、若き日の熱が自分の中でふたたび引火する。――――と、同時に、ふたたび火が灯った今の自分は当然あの頃よりも進化しているので、「過去」×「現在」の掛け合わせが「未来」へと人生の新たなコマをすすめる導入材になっていく感覚。

変わっていく時代と、変わっていく自分。
だけどその中でも、変わらない自分の軸。

これは、既出のエッセイ本のイントロダクションに書いた文章だけど、目の前でハキハキと自分の言葉をテンポ良く話すRIKACOさんをみていると、「軸」がブレないとはこういうことなのか! とその気持ちの良さを体感する。
「それこそ昭和の時代にモデルとして若い年齢から仕事をしてきて、バブルの時代も経験したから、本当にいろんなことを“見すぎてしまった”と思うほどに見てきた、見てきてしまった……」とRIKACOさんは話す。

バブルの異常な景気の良さはもちろん、まだWEBもない時代のファッション雑誌のステイタスの高さは今とは比べものにならないだろう。そんな中、大人気雑誌でカバーガールを務めるモデル=当時のRIKACOさんの爆イケ/爆モテっぷりは、今でも伝説のように語られ続けている。

初めてそれを聞いた時、私はその場で「うわぁぁッ!」って声を漏らした。羨望を抱くとともにハートが痺れたのだ。それこそ、当時の自分はまだ子供すぎて全く味わうことのできなかった昭和のリッチな煌びやかさと、当時のド派手な東京のど真ん中にいたRIKACOという存在に「いいなぁ、それはマジでヤバイなぁ」って声を出しながら憧れた。私の耳に入ってきたセリフをほぼそのまんまここに引用するとする。それが一番伝わると思う。

「とにかくまず、モデルという人種が、クッソほどカッコよかった。もちろんモデルはいつの時代も綺麗だよ? でも当時はもう、ファッション誌の影響力もピークってくらいに凄まじかったし、中でもRIKACOはカリスマすぎた!

全身をブランドでかためたとしても、オーラがあるから、どんなに若くっても1ミリも服に負けてない。抜群スタイルでトップメゾンの新作を完璧に着こなして、撮影が終わると、高級スポーツカーですんごいカッコイイ彼氏が迎えにくるのが当たり前、それでこそモデル、みたいなそんな時代。

バブルで誰もがギラギラしていて、だけどそれを極めている不良たちは最強にカッコよかった。特にRIKACOは最高にイケてて、もう二度とあそこまでのカリスマオーラは、モデルからは出ないんじゃないかなぁ、日本からは。とにかく、そのくらいのレベル! 」

――――が、私の目の前にいる当の本人は過去を振り返って、こう語る。

「まだ10代にしていろんなファッションを見せられて、世間もバブルで浮ついていたから、本当のカッコ良さってなんだろうってずっと考えさせられていて。自分探し、とも言えるんだけど、自分が理想とするカッコよさってなんだろうってずっと探していたんだよね。
流行りの服を着て、ブランド物を持って、ある程度稼いで、というのが人間をカッコよくするのか? って考えたら“違うな”ってハッキリと思ったの。10代からずっと業界を見てきたから、21歳になった頃には自分の中でもう結論が出ていたのね。

もう、中身を磨いていくしかないなって。
素の自分で堂々と生きるしかないなって。
それが本当の意味でカッコイイ人だって。

もちろん、その時その時の自分を大切にして、素敵だと思う服も着るしヘアもメイクもするんだけど、どんな時でも“正直な心のまなざし”をちゃんと人に向けられる人でいたいって強く思ったの。それが本当のカッコよさだって分かったから」

 

>>次回2月1日公開
第3話「白Tデニムにスッピンで生きられる精神力」

 

PROFILE
RIKACO:タレント。,66年生まれ。横浜市出身。13歳でスカウトされモデルデビュー。その後、育児をきっかけにオーガニックアドバイザー、ビューティースーパーフードマイスターの資格も取得。フードやアロマを通しメッセージを発信している。YouTubeはこちら。 プロデュースするライフスタイルブランド「LOVE GIVES LOVE」のほかinstagram @rikaco_official も大好評。

LiLy:作家。’81年生まれ。神奈川県出身。N.Y.、フロリダでの海外生活を経て上智大学卒。25歳でデビューして以来、女性心理と時代を鋭く描き出す作風に定評がある。著作多数。instagram @lilylilylilycom noteはこちら

文/LiLy 撮影/太田隆生 ヘア&メイク/高取篤史(SPEC)(RIKACOさん)、伊藤有香(LiLyさん) スタイリング/鈴木仁美(RIKAKOさん)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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