「なぜか聴きたくなる人」に、今、学びたいこと。【松本千登世「へーっ、美容って自由なんだ!」vol.11】
年齢とともに常識という枠にとらわれがち。美容も例に漏れず。そんな私の凝り固まった価値観や美意識をがらりと変えた「ひと」「もの」「こと」をひとつひとつ丁寧に綴りたいと思います。第11回は、ラジオDJ、ナレーターとして活躍する秀島史香さんの著書『なぜか聴きたくなる人の話し方』に学ぶ、美しさの本質について。【松本千登世「へーっ、美容って自由なんだ!」vol.11】
この声も、この言葉も、誰かの心に届いているか?
その人との感動の出会いから、早17年あまり。「片思い」の時間をカウントするともう、20年以上が経ちます。秀島史香さん。顔は知らなくても、「ああ、この声!」という人、きっと多いはずです。じつは私、史香さんに多大な影響を受けています。決して大げさでなく、私の持って生まれたネガティブな性格を、後天的に変えてくれた人。それはなぜなのか? すべてを言葉にしてくれたのが、この一冊、『なぜか聴きたくなる人の話し方』でした。
秀島史香さんの近著『なぜか聴きたくなる人の話し方』(朝日新聞出版刊)。25年に亘り、ラジオの現場で活躍し続けている史香さんが試行錯誤してきた工夫や、たくさんの出会いから学んだことなど、私たちがコミュニケーション上手になるためのヒントがいっぱい。
ページをめくるほどに、ぐんぐん、引き込まれました。「『あなた』に意識を集中することで、伝わり方は格段にアップする。」「あなたのその喜怒哀楽は、どんな言葉に変換できますか?」「相手を観察すれば、距離感がわかる。」「相手にも自分にも『余裕』を生む『余白』。」「『もっと知りたい』は、相手の『話したい』スイッチを押す。」そして、何より「会えて嬉しいを伝えられていますか?」。そう、史香さんは、あの声で言葉を柔らかく包み込んで、丁寧に、でも軽やかに届ける人。だから、目の前にいると、それは、ラジオという媒体を通してももちろん、言葉が心にするんと溶け、じゅわっと広がるのがわかります。それだけではありません。決して否定をしない言い回しや、よりわかりやすくする言い換えによって、知らず知らずのうちにしなやかな考え方や伸びやかな生き方が「乗り移る」のです。あくまで自分比だけれど、私の性格が「好転」したのは、そのために違いない、そう確信しました。
ちなみに、史香さんはよく私に、「へーっ、それでそれで?」と言います。目をきらきらと輝かせ、表情をころころ変えながら、うんうんと穏やかに頷いて。話している私以上に、笑ったり喜んだり、怒ったり悲しんだり。そして、家に帰ると毎回気づかされるのです。会った瞬間から別れる瞬間まで「会えて嬉しい」で満たされていると……。
本の帯にある漫画家・浦沢直樹さんのコメント、「声が笑顔なんですよね、秀島史香さん。もうホントに笑ってる。」に、「ジェラシー」を感じました。そうそう、私もずっと思ってた。先に言葉にされてしまった、と(笑)。
年齢と経験を重ねてきた大人として、もしも、もしも、史香さんのように言葉を届けられたらどんなに素敵だろうと思います。特に、「人に会う」という当たり前だと思っていたことが、じつはとても特別でとても貴重だとわかった今という時代だからこそ。まずは、「なぜか聴きたくなる人」を目指して、この本のページをめくってほしいと思うのです。なぜか聴きたくなる人は、なぜか会いたくなる人。ずっと声を聴いていたい人は、ずっと一緒にいたい人。史香さんが本質的な美しさへと導いてくれるはずです。
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