齋藤薫の馨る女 EX
2019.10.26

侮るなかれ! 色気とは違うヒト・フェロモン【齋藤 薫さん連載 vol.91】

あなたのまわりにもいないでしょうか? 「ものすごくモテる女性」。彼女たちのモテる理由は、一体どこにあるのでしょうか?女性であれば知りたいその秘密…を薫さんに教えていただきます。
201911g%e3%81%8b%e3%81%8a%e3%82%8b%e5%a5%b3ill

今最もヒト・フェロモンを感じさせる人は、意外だけれど石田ゆり子。だからもう一度定義し直したい、女にとってのフェロモンの大切さ

「マッチポイント」と言う映画、知っているだろうか。極端に言うなら、これは“女性ホルモン”というものの個体差について考えさせられる映画。主人公の男は“自分の婚約者”より、彼女の兄の恋人に心を奪われる。二組のカップルで食事をしても、男は常にウワの空、兄の恋人しか目に入らないのだ。まずその状況、想像するだに胸が痛い。自分があの婚約者の立場だったら……。なぜならそうしたシーンで私たちが感情移入するのは、もっぱら可哀想な婚約者の方。相手の女にどんな優位性があるのか、私たち女には薄々わかっているからなのだ。

客観的に見て、ふたりの女性の美しさには大差がない。決定的なのはフェロモンの差。これは目で見てもわかるほど。スカーレット・ヨハンソンが演じるフェロモンは確かに見事で、私たちもまた男の目でもってふたりの女に優劣をつけているから、胸が痛むのだ。フェロモンのない女に生まれた人の悲劇を思うから。

とは言え私たち女は、日頃このフェロモンを軽んじている。フェロモンをほぼ無視する形で、魅力づくりを考え、美容している。これは非常に危険な判断だ。本来魅力という引力の量を決めているのは、形の美しさ以上にこのフェロモンであるからだ。しかし「フェロモン=色気」と捉えてはいけない。これまた危険な捉え方。フェロモンは色気以前の、魅力の幹細胞のようなもの。それがもともとちゃんとあるかどうかで、人生さえ変わってくるほど重要なものなのだから。

ここで言うフェロモンが、色気とは別ものである証は、例えば、石田ゆり子という人の存在……。今年50代になろうとしているのに、モテまくる。世間はますます「美しい人」と讃美する。出演するコマーシャルを見れば、いずれも男たちがこの人の美しさに魅了されるという設定。もちろん、十二分に若く美しいが、それだけではさすがにこういうモテ方はしない。この人の身上である清潔感も、それだけで世間はここまでちやほやしない。それ以上の何かがあるからこそ、年齢を超えて人を惹きつけるのだ。その“何か”こそ、紛れもなく魅力の幹細胞。あくまで女性として人を魅了するための生理的物質。その分泌が人より多いのだ。

科学的に言えば、フェロモンとは体内で生成されて体外へと放出され、同種の個体に対し影響を及ぼす物質。でもその仕組みは昆虫から人間までそれぞれ異なるとされる。人間の場合、汗を出す器官である「アポクリン腺」から放出される匂いがベースになっているとも言われるが、実際は匂いなど届かなくても、見た目の印象、佇いだけで人を魅了するのが「ヒト・フェロモン」だとする説もある。

だとすれば、「女性が女性であるために」極めて重要な女性ホルモンの一種である「エストロゲン」こそ、やはりフェロモンの核なのだろう。説明するまでもなく、美肌はもちろん、女らしい身体つきの源となり、精神面でも穏やかでおおらかな心を保つ鍵となるエストロゲンの効果効能を考えれば、やはり総合的に人を惹きつける魅力の幹細胞は、女性ホルモンのスイッチと考えていい。

ただ更年期でその量が極端に減ってもフェロモンを放つ人は放つわけで、フェロモンを分けるのはエストロゲンの量ではなく質なのではないかと思う。石田ゆり子さんは、あるいはその質がとりわけ上質であるが故に、清らかなのに、しとやかなのに、同時に何だかんだみっちりと女らしい。やはり女性の匂いがプンプンするのだ。女子力なんて言葉じゃ語れない、この女性ホルモン由来のヒト・フェロモンを外して女性美は語れないのだ。

じゃあ、あなたはこのヒト・フェロモンをちゃんと備えているのか? そこをきっちり自己採点してほしい。ヒト・フェロモン抜きでは、あらゆる美容の効果は半減する。やっぱり女はいくつになっても、キレイ、カワイイ、ステキと、女としていつまでも褒め続けられたいから、石田ゆり子的な女性ホルモンの質の良さ、を絶対侮ってはいけないのである。

モテまくる雌パンダと、全然モテない雌パンダがいる事実に、女性ホルモンの質がもたらすモテの能力を学び取るべき

フェロモンについて、非常に興味深い話がある。いわゆるパンダの繁殖所では、定期的に継続的に様々なお見合いが行われているという。言うまでもなくそれは雌と雄の間に理屈抜きの相性があるから。ところが現実には、あらゆるタイプの雄パンダにやたらにモテまくる雌パンダがいてしまう一方、ほとんど無視され、アブレてしまう雌パンダが少なくないと言われる。パンダの世界にも存在する“愛されヒエラルキー”。なんだかこれも、女としてちょっとだけ胸が痛む。

でもなぜここまで個体差がついてしまうのか? さすがに雄が雌の見た目の可愛らしさ美しさなどに目を奪われていると言う絵面は想像しにくい。専門家曰く、やはり匂いをベースにしているものの、匂いでだけではない動物同士のテレパシーも含めたフェロモンが、影響しているのだとか。パンダにも、魅力の個体差が厳然とあるということなのだ。見た目だけでは無い、匂いだけでもない、気配の魅力で異性を惹きつける、それはパンダもヒトも同じなのである。だから侮ってはいけない、女性ホルモンが牛耳るフェロモン。それこそ少女の頃から目立って魅力に溢れる女の子っているもので、もうその年齢から女性ホルモンの個人差が生まれていると考えてもいいのだから。

それはエストロゲンの質の違いと言ったが、その質の差を知るひとつの目安として、例えば香りのブランドとして一線を画す「ダウンパフューム」による“スキンタイプ診断”がある。これはフォーミュラXと言う特殊な香りを手首に塗布して湧き上がる匂いをプロがチェック、8種類に分類されるのだが、割り出されるのは体質がもたらす自分の香り。主に女性ホルモンを核とするホルモンバランスが主体となって作る匂いとされる。その診断で、ムスクなど性的誘引作用のある匂いを放った女性は、やはり魅力に溢れているという見方があるのだ。言い換えればそれは、女性ホルモンに質の違いがあることの動かぬ証拠。

ちなみに女性は排卵期、エストロゲンの分泌が高まるのに伴って、体臭そのものが芳しく美しくなり、いつもより性的誘引作用が強くなると言われる。それも肌がキレイになるのはもちろん、いつもより顔立ちまで美しく、体型まで女っぽく見えることが解明されているのだ。女性ホルモンは人間の形まで、つまり顔立ちのバランスや体形まで変えてしまう、不思議すぎる力を持っているのである。それも、排卵期の鳥が、美しい声で鳴いて異性の気を引くように、全身くまなく魅力の塊になって異性を惹きつける、神様がヒトの雌にくれた能力。妊娠の可能性が高まる排卵期、子孫を残そうとする人類の生体的仕組みがそうさせるのだ。言い換えるなら、フェロモンはもともと種の保存のための能力とも言うべきもので、モテの才能のルーツもここにあるのだ。

結局人間の女も、多くの動物の雌と同様に、雄を惹きつけるためにこそ魅力的であろうとする本能と生理が体の隅々にまで行き渡っていると言うこと。

どうかそのことをもう一度意識し直して、美容をやり直してほしい。女性ホルモンの質は生まれつきのもので、簡単には変えられないのだろうが、魅力は目に見えないようで見えている、形がないようでじつは形あるものだと言うことをもう一度肝に銘じて、毎日毎日意識して魅力づくりを始めて欲しい。

単にファンデ塗ってアイシャドウ塗って、口紅塗って終わりではない。今日のあなたは、色気とは違う、もちろん単なる生殖能力とは違う、美しく清らかな性的誘引作用をまとって外出できたのだろうか? そしてちゃんと魅力を振りまけたのだろうか? 多くの女性が女性として最も大切なことを忘れている。美しいこと以前に魅力で人を惹きつける大切さ。その魅力の有無をここでしっかりと精査してほしいのだ。自分の体中の女性ホルモンを意識して。おそらくは意識するだけで活性化するヒト・フェロモン。だからこそ、毎朝鏡を見ながら魅力の幹細胞のスイッチをオンするつもりで、全身に神経を注ぎ込みたい。そうした習慣を持つことが、女としての幸せの量を少なからず決めること、改めてココロしてほしいのである。

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫
女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)、『The コンプレッ クス 幸せもキレイも欲しい21人の女』(中公文庫)など多数。

『美的』11月号掲載
文/齋藤 薫 イラスト/緒方 環

この記事をシェアする

facebook Pinterest twitter google+ Pocket

関連記事を読む

あなたにおすすめの記事