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2013.12.5

大高博幸の美的.com通信(192) 『ファイア by ルブタン』『フォンターナ広場』『皇帝と公爵』 試写室便り Vol.57

(C) Antoine Poupel
(C) Antoine Poupel

世界中のセレブを虜にするパリ・ナイトショーの最高峰、クレイジーホース。
その舞台で80日間のみ上演、クリスチャン・ルブタンが手掛けた伝説のショー<FIRE>。
日本では叶わなかった陶酔への招待状が、今、あなたの手に――。
ファイア by ルブタン』 (フランス映画、81分)
12.21 ロードショー。fire.gaga.ne.jp

パリで1951年に創立されて以来、入場者数が600万人を超えた<クレイジーホース>。2012年、史上初のゲストアーティストとして、世界的シューズデザイナー、クリスチャン・ルブタンが招かれた。クレイジーホースにインスパイアされてデザインを始めたというルブタンにとって、これは宿命のプロジェクト。華麗な靴、厳しい審査に合格したダンサーたちの完璧な肉体、ルブタンたっての希望で実現したデイヴィッド・リンチの妖しい音楽――類希なる才能が溶け合い<FIRE>が誕生。パリ・エンタメの最高峰を、その場にいるような臨場感で体感する、感動の映像体験。 (試写招待状より)

ルブタンの演出による舞台を、ブルノ・ユラン監督が再構築した作品。僕は3D版を試写で観ましたが、劇場によっては2D版で上映されるようです。
昨年の夏に公開されたドキュメンタリー映画、『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』(通信(113)に紹介文あり)のような楽屋裏の映像はなく、ショーそのものとルブタンのトークによって構成されています。彼の話の内容は あまり憶えられませんでしたが、一番印象的だったのは、「演出するに当たって、僕はお客を意識するコトは なかった。意識するとすれば、自分自身をお客だと思うコト」という言葉で、コレはルブタンならでは。
その他、ショー場面に重ねて、ダンサー達の つぶやく声が幾つか流れていました。たとえば、「裸で踊るコトに抵抗はありません。美しい照明という衣装を まとっているのだから」。「脚だけの演技であっても、メークしていないとダメ。演技に自信が持てなくて」。「メークの のりが悪いと落ち込んでしまいます」etc、etc。
3Dの効果は…、ダンサー達のバストやヒップの丸み&立体感が強調されて見えるコトはモチロンで、特に踊りながらカメラに向かって手を伸ばす瞬間など、その手が前の客席を乗り越えて、自分の顔や肩に触れてくるような錯覚を与えます。ただし、ひとつ気になったのは、浮き上がって見える日本語字幕。定位置がない感じで、見ていて落ち着けないコトと、文字の白さが かなり まぶしく感じられたコトです。コレは3Dの、解決が難しい問題のひとつなのかもしれません。

 

フォンターナ
© 2012 Cattleya S.r.l. – Babe Films S.A.S

イタリアを震撼させ、未解決のまま葬られた<フォンターナ広場爆破事件>。
大胆な仮説。衝撃の真実。操っていたのは誰?
フォンターナ広場 イタリアの陰謀』 (イタリア・フランス合作映画、129分)
12.21 ロードショー。www.moviola-jp/fontana/

【STORY】  1969年12月12日 16時37分。ミラノ。大聖堂ドゥオモの裏側にあるフォンターナ広場に面した銀行が爆破される。死者17人、負傷者88人。国家を揺るがす大事件である。左翼の関与を疑う捜査当局は、アナキストたちを次々に連行する。だが現場の指揮をとるカラブレージ警視は、アナキストのリーダー的存在であるピネッリの人間性を信頼し、今回の爆破が彼らの犯行だとは信じられなかった。そして、ある夜、アクシデントが起こる。ピネッリが、3日間の不法拘留の末、カラブレージが取調室を離れた隙に 転落死を遂げてしまったのだ。自殺か、事故死か、殺人か。爆破事件の真相は? イタリア政府、情報局、軍警察、極右組織、ネオファシスト、共産活動家、アナキスト、さらにはNATO軍、CIAといった海外の組織も関与する闇が大きく広がり、カラブレージは次第に その闇に近づいて行くのだった…。 (プレス資料より。一部省略)

イタリアの名匠:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督(代表作は『輝ける青春』『ペッピーノの百歩』など)の渾身の作であり、2012 イタリア・ゴールデングローブ賞をはじめとする数々の賞を受賞した第1級のサスペンス。
巨大な力に翻弄される人間達の姿と共に、事件の真相を たぐり寄せて行くドラマとしての緊迫感が、観る者を圧倒する濃密な129分。展開は直線的で、話を精一杯 絞り込んでいるという印象を受けましたが、カラブレージ警視の妻とピネッリの妻が登場する各場面に、ドライなタッチながらイタリア的な情感が漂うところに僕は惹かれました。
部分的に少々物足りないと感じたのは撮影と照明…。銀行爆破前後等の場面がビジュアルとしても優れている割に、かなり凡庸なシーンが幾つか途中にあったコトです。

 

皇帝と公爵ナポレオンには決して勝つことができない男がいた――。
皇帝と、その永遠のライバル・知将ウェリントンの知られざる戦いが今、描かれる。
皇帝と公爵』 (ポルトガル・フランス合作映画、152分)
12.28 ロードショー。www.alcine-terran.com/koutei

【STORY】  1810年9月27日、圧倒的に不利な地形をものともせず、フランス軍第二大隊の兵士たちは激戦の末、ポルトガル・ブサコの斜面を這い上がり、アルコバ山頂に達した。しかし、やっとの思いで尾根に出たフランス兵たちの目に飛び込んできたのは、準備万端で待ち構えるイギリス軍の姿だった。ウェリントンの戦略により、イギリス軍は見事、フランス軍を追い払うことに成功した。だが、勝利を収めたにもかかわらず、イギリス軍はウェリントンが建設した要塞“トレス線”へ、いまだ数的に圧倒的有利なフランス軍を誘い込むため、南の山地へ戦略的撤退を試みる。リスボンの手前に建設された この“トレス線”は、知将ウェリントンが1年前から密かに準備を進めていた、80kmにも及ぶ防衛のための砦であった――。 (プレス資料より)

フランス軍のポルトガル征服と、その侵略に立ち向かうイギリス・ポルトガル連合軍との“ブサコの戦い”を描いた歴史物の大作。ナポレオンが登場しない作品とは知らずに観たので、少々ガッカリさせられましたが、戦乱の渦中にある兵士と民衆双方の姿を多面的に描写しており、相当興味をそそります。
主体となるのは粘り強く戦う連合軍の男達の姿ですが、混乱に乗じて私欲に走る者、追い剥ぎや娼婦となって生き延びる者、はぐれた夫と再会したものの裕福な男との再婚を急ぐ人妻、フランス兵に暴行されて正気を失う上品なポルトガルの未亡人、男装して戦場へ向かうフランスの女性etc、etc、様々な人間模様が比較的冷静なタッチで、エピソディックに綴られる2時間35分。
しかし、絵巻物的な華々しさは余り感じられず、歴史と道徳の専門家達が協力して映画化したかのような印象…。画面は曇天の日に撮影された感じのシーンが多く、史実に忠実なのかもしれませんが、抜け感orクリア感は いまひとつ。夜のシーンも暗部に深さが不足していると、僕には感じられました。
出演者中、最も魅力的だったのは、ペドロ・ド・アレンカル中尉役の若手俳優:カルルシュ・クッタ。裕福なスイス商人の館の場面に特別出演しているカトリーヌ・ドヌーヴは、なぜか驚くほど太って見えました。
とは言え、この映画は一見の価値あり、です。

 

 

ビューティ エキスパート
大高 博幸1948年生まれ、美容業界歴46年。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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