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2017.12.5

『 ユダヤ人を救った動物園 』『 ルージュの手紙 』『 はじまりのボーイミーツガール 』『 新世紀、パリ・オペラ座 』 試写室便り 【 大高博幸さんの 肌・心塾 Vol.424 】

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Ⓒ2017 ZOOKEEPER’S WIFE LP. ALL RIGHTS RESERVED.

決して知られてはならない
秘密の隠れ場所。

ユダヤ人 300 名を匿い、その命を救った勇気ある女性の知られざる実話。

ユダヤ人を救った動物園
アントニーナが愛した命
アメリカ/ 127 分
12.13 公開/配給:ファントム・フィルム
zookeepers-wife.jp

【 STORY 】 1939 年、ポーランド・ワルシャワ。ヤンとアントニーナ夫妻は、当時 ヨーロッパ最大の規模を誇る ワルシャワ動物園を営んでいた。アントニーナの日課は、毎朝、園内を自転車で巡り 動物たちに声をかけること。時には動物たちのお産を手伝うほど、献身的な愛を注いでいた。しかし その年の秋、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発。動物園の存続も危うくなる中、夫のヤンから「 この動物園を隠れ家にする 」という驚くべき提案をされる。人間も動物も、生きとし生けるものへ深い愛情を持つアントニーナは、すぐさま その言葉を受け入れた。しかし この〝 救出活動 〟がドイツ兵に見つかったら、自分たちだけでなく 我が子の命すら狙われてしまう。夫のヤンが不在になることも多い中、アントニーナは ひとり〝 隠れ家 〟を守り、ひるむことなく果敢に立ち向かっていった。いくつもの危険を冒しながら、いかにして 300 もの命を救ったのか――。( チラシより )

オスカー・シンドラー、杉原千畝、ニコラス・ウィントンらと同様に、自らの命の危険を冒しながら、多くのユダヤ人の命を救ったジャビンスキ夫妻。原作は ダイアン・アッカーマンのノンフィクション「 ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語 」( 亜紀書房 ) で、こんな話が 実際にあったというコトに、僕は とても驚かされました。

映画は、動物と親しく接し、来園者を迎えるアントニーナ役の ジェシカ・チャステインが、非常に明るく新鮮な表情を観せる 夏の朝の場面に始まります。しかし、この楽園のような動物園が 突然 空襲に見舞われたのは、それから間もない 9 月 1 日。ドイツとソ連という大国の間に位置するポーランドは、一気に 暗雲に包まれます。
ジャビンスキ夫妻は、まず 親友のユダヤ人女性 ひとりを地下に匿いますが、ヤン ( マイケル・マケルハットン ) の提案で 動物園を養豚場 ( ナチスの兵士たちの食料とするための ) にして、ゲットー ( ユダヤ人の強制収容所 ) から生ゴミ ( 豚の飼料とする ) をトラックで運ぶコトを、ナチス直属の動物学者 ヘック ( ダニエル・ブリュール ) に交渉…。その生ゴミの中に ユダヤ人を紛れ込ませて、ゲットーから救い出す策を練る…。

その計画を実行に移す最初のシーンは、スリリングそのもの。兵士ふたりに暴行された まだ幼い少女を助け出すプロセスに 激しい憤りも加わるため、こゝは 観ていて息が苦しくなります ( But、皆さん ガンバって、ヤンの行動を見守ってください。少くとも、少女が暴行されているシーンは 映し出されません ) 。

後半には また、非常に複雑かつデリケートな場面があります。それは、地下活動に出向いたまゝ戻らない ヤンの消息を知るために、アントニーナが 意を決して ヘックの部屋を訪れる場面 ( アントニーナは、ヘックが 自分に惹かれているコトを知っている ) 。こゝは カットの積み重ねで、アントニーナの勇気、自尊心、そして恐怖の全てを表現する重要な場面なので、全神経を集中して ふたりの やり取りを見つめていてほしいです。

最終的に、動物園の地下に匿われた 300 人は、全員が助かります。しかも ワルシャワ動物園は 戦後 再建され、現在に至っているとのコト…。その事実を拠りどころとして、気の弱い方々にも、ぜひ観て頂きたい力作です。
監督は、『 クジラの島の少女 』『 スタンドアップ 』『 約束の葡萄畑 』の ニキ・カーロ。

 

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© CURIOSA FILMS – VERSUS PRODUCTION – France 3 CINEMA

フラリと現れた血のつながらない母と、
ストイックで真面目すぎる娘。
30 年ぶりに再会した二人が 見つけたものとは――

フランスを代表する 2 大女優が、
人生を彩るメッセージを届けてくれる。

ルージュの手紙
フランス/ 117 分
12.9 公開/配給:キノフィルムズ
rouge-letter.com

【 STORY 】 助産婦として働きながら 女手ひとつで息子を育てあげ、地道な生活を送っていたクレール。そんな彼女のもとに、30 年前に突然姿を消した血のつながらない母親ベアトリスから「 今すぐ、あなたの父親に会いたい 」と電話が入る。ベアトリスと再会したクレールは、自分とは真逆の生活を送ってきた自由奔放な継母のペースに巻き込まれ、反発を繰り返しながらも、人生の扉を少しずつ開きはじめる――。( 試写招待状より )

ふたりのカトリーヌ、C・ドヌーヴ ( ベアトリス役 ) と C・フロ ( クレール役 ) の豪華初競演が 大人の映画ファンの話題をさらう、ほろ苦くも ほゝえましいヒューマンドラマ。

ベアトリスは 多分 B 型、クレールは 多分 A 型…、誤解を恐れず 血液型に たとえて言えば、ふたりは そんな風に対照的なキャラクター ( 脚本・監督の マルタン・プロヴォは、「 極端に言えば、ふたりはアリとキリギリスに近い 」と述べています ) 。どちらも自分の生き方を貫いてはいるものの、互いに相手を尊重する気持ちを持っているため ( ベアトリスは 一応 セーフ ) 、一度 会って それで終わりとは ならないところが、この映画の いゝところ。何とか 互いを理解し 補い合っていくうちに、ふたりの関係性が変化して、不思議な絆が生まれてくるのです。
こういうコトって、私たちの人生の中にも 少なからず ありますよね。特に 大人になってからは…。

ドヌーヴもフロも 今までとは タッチの大きく異なる演技を観せていて、終始 眼が離せません。その中で、ふたりが最も可愛らしい表情を浮かべたのが、化粧品が重要な役割を担っているシーンだったコトを、僕は特別に嬉しく思いました。
それは、① フロが ドヌーブの口紅を ちょっと拝借し、洗面所の鏡の前で塗って、少女のように微笑するシーン。② ドヌーブが 何日振りかでシャンプーした髪を、フロに乾かしてもらいながら、最高に気持ちよさそうな顔をするシーンでした ( よく観ていないと気づけません ) 。

フロが ひとりで育て上げた 息子のシモンを演じているのは、カンタン・ドルメール。『 あの頃 エッフェル塔の下で 』( Vol.319 ) から約 2 年、魅力的な青年に成長していて、近い将来 有望です。

 

© 2016 GAUMONT - AJOZ FILMS - NEXUS FACTORY
© 2016 GAUMONT – AJOZ FILMS – NEXUS FACTORY

チェリストを夢見る少女と落ちこぼれ少年の、
12 歳版『 ( 500 ) 日のサマー 』!?

嘘も秘密も、まるごと君が好き。

はじまりのボーイミーツガール
フランス/ 89 分
12.16 公開/配給:キノフィルムズ
hajimari-bmg.com

【 STORY 】 ヴィクトールは、母の死から立ち直れない父親に悩む 12 歳。恋するマリーには 相手にされていなかったはずが、近ごろ 急接近され 変な感じ。マリーからプロのチェリストになる夢を打ち明けられ 舞い上がるが、誰も知らないマリーの秘密を知ってしまう。その秘密を守るため 利用されていたことに気付くが、マリーの夢に対する情熱に動かされ、彼女を助けることを決意する――。( 試写招待状より )

アムールの国 = フランスのベストセラー青春小説を映画化、幾つかの国際映画祭で観客賞を受賞した ハートフルなコメディです。主役は 思春期の入り口に立つ 少年と少女。

ヴィクトール ( ジャン = スタン・デュ・パック ) は、0 点の答案用紙を先生から返されるコトに なれてしまっている ( らしい ) 男の子で、まだまだ子供。しかし 感受性が豊かで、何年 経っても 妻の死に向き合えずにいる父親を、何とかして立ち直らせようとしたりする健気な性格。マリー ( アリックス・ヴァイヨ ) は、広大な屋敷に住む 少々小悪魔的な 優等生ですが、両親が仕事で不在がち、家には家政婦のおばさんがいるだけという日々を送っている女の子。そんなふたりに愛が芽生えて…という、シンプルでジェントルな お話です。

台詞が とてもキビキビしていて リズミカル。But、映画としてのテンポはスロー、やゝ間のびしている編集のせいもあって、スリリングな部分が盛り上がりに欠けてしまっている気がしました。〝 小さな恋の物語 〟としては、そこがいゝのかもしれませんが。

映画の終盤に、少年と少女の父親同士が口論を始め、少女の父親が 少年の父親を殴った瞬間、少女の母親が 夫の頬に 思いっきり平手打ちを食らわすというシーンがありました。それは予想外の展開で、僕はアゼン。演出 ( ミシェル・ブジュナー。脚本も ) は その場面を 強調しては いませんでしたが、これが ラストの感動を高め、余韻を残す結果に つながっています。

ふたりの少年・少女俳優は 表情が豊か。全ての場面で 役の感情を適格に表現していて、称讃に価します。また、クラスメートの男子 ( 大柄で眼鏡をかけている子 ) の家庭の場面がユニークで印象的。宗派の異なる両親が、うまく折り合って 平穏に暮らしている感じが、心地よく伝わってきました。

 

(c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS
(c) 2017 LFP-Les Films Pelleas – Bande a part Films – France 2 Cinema – Opera national de Paris – Orange Studio – RTS

オペラ座 ドキュメンタリー映画史上、
No.1 記録樹立!

新世紀、パリ・オペラ座
フランス/ 111 分
12.9 公開/配給:ギャガ
gaga.ne.jp/parisopera

【 INTRODUCTION 】 フランスが誇る芸術の殿堂 パリ・オペラ座。350 年以上にわたる伝統を守ってきた彼らにも、時代の波は 容赦なく押し寄せる。選ぶべきは、歴史の継承か、新時代の表現か。さらにマスコミを巻き込んだバレエ団芸術監督交代劇の大騒動、そしてパリの劇場が襲撃された同時多発テロ。混迷を極めた今の時代に 彼らは自問し続ける。「 今、オペラ座に求められるものは何なのか――? 」 ( 試写招待状より )

オペラ座関連の数多いドキュメンタリーの中で、歴代 No.1 ヒットを記録。今年度のモスクワ国際映画祭で、ドキュメンタリー映画賞を受賞した作品です。

「 選ぶべきは、歴史の継承か、新時代の表現か 」という話は オペラ座モノに付きものですが、本作は 視点が新鮮かつ客観的、しかも 編集のキレ味が とても良く、時にユーモラスで 時にスリリング。冒頭の首脳会議の場面は 大真面目でいて それ故に笑いを誘い、気まずい経緯があったのだな と想わせるミルピエの辞任や、公演 初日 2 日前 ( しかも 復活祭の休日をはさんで ) の主役の降板劇など、本来ならば オペラ座としては 公表したくないはずの問題をも、現実として映し出しているところが面白い。

ちょっとした場面ながら 印象的だったのは、「 リゴレット 」のジルダ役を演じている ソプラノ歌手 オルガ・ペレチャッコが、舞台から袖に引っ込んで 再び登場するまでの間に、全身から吹き出した汗を懸命に拭ったり、付き人に スマホを手渡して 自分の演技を袖から撮影してもらったりする部分。また、テロ事件の犠牲となった人々に黙禱を捧げる ゲネプロのシーンでは、裏方も清掃係も ひとり残らず仕事の手を止めて、黙禱に加わる姿が眼に焼き付きました。

従来のオペラ座モノとは 視点もタッチも異なるので、「 この種の映画は数多く観た 」という皆さんも、見逃がすと 後悔するコトに なるのでは?
監督は ジャン = ステファヌ・ブロン。撮影は 可能な限り、カメラを固定して撮ろうとしているようで、そこにも 監督の感性の高さが表れていると、僕は僕なりに感じました。

 

 

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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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