大高博幸さんの 肌・心 塾
2017.1.17

『 ホームレス ニューヨークと寝た男 』『 未来を花束にして 』『 ショコラ 』『 スノーデン 』『 キム・ソンダル 』 試写室便り No.130 【大高博幸さん連載 Vol.378】

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(c)2014 Schatzi Productions/Filmhaus Films. All rights reserved

究極のミニマリスト?
ニューヨークで家を持たずに暮らす方法とは?

ホームレス ニューヨークと寝た男
オーストリア、アメリカ 合作/ 83 分
1.28 公開/配給:ミモザフィルムズ
www.homme-less.jp

【 INTRODUCTION 】 マーク・レイ、52 歳。ファッションモデル兼フォトグラファー。高級スーツを着こなすハンサムな彼は、一見 誰もが羨む〝 勝ち組 〟だが、実は 6 年近くもマンハッタンのアパートメントの〝 屋上 〟に 秘密で寝泊まりしている。家族や恋人を持たず、厳しい競争社会で生き残るために編み出した「 家を持たない 」ライフスタイルとは? ( 試写招待状より )

こんなにカッコいゝ男が ホームレス? 寝起きする部屋もないというのに、どうしてモデルやカメラマンの仕事が務まるのかと興味津々。試写初日に張り切って観に行ったドキュメンタリー。

試写招待状の画像で見る以上に M・レイはハンサム。どちらかと言えば 人なつっこい性格で、それが顔に表れている印象。しかも堂々としていて、だらしなさは少しも感じられず、適度に繊細な神経の持ち主。自分自身を 平然と さらけ出しながら、冗談と本音が入り混じったような話しかたをする男。少し気になったのは「 3 年前に 本気で自殺を考えた。以来、誰にも 愛していると言ったコトがない 」とツブやいたコト。さらに、故郷で ひとり暮らしをしている母親を、本気で気にかけている様子だったコト。

どんな所で寝て、どんな風にグルーミングしているのかは 観てのお楽しみですが、マンハッタンの街角やショーのバックステージ etc 、カメラマンとして働く彼の姿がイキイキと映し出されます。彼自身がモデルの仕事をしているシーンがなかったコトは残念。But、チョイ役で映画に出演するために撮影所に入って行くところなど、まるでトップスターの到着の瞬間のようでした。
彼のホームレスライフは、特に女性の皆さんは 真似するワケには いかないでしょうが、その暮らしかた・生きかたには 共感させられるモノがあるはずです。

監督は M・レイの元モデル仲間で、今は一流企業の PV 等を手掛けている トーマス・ヴィルテンゾーン。音楽は、クリント・イーストウッドの長男で ジャズベーシストの カイル・イーストウッドが、マット・マクガイヤと共に担当しています。

◆現在、マーク・レイの日本での就職活動を支援するクラウドファンディングを実施中!
詳しくはココをチェック>>https://motion-gallery.net/projects/hommeless

 

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© Pathe Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2015. All rights reserved.

百年後の今も存在する さまざまな差別。
これは、女性の参政権を求めて立ち上がった〝名もなき花〟の、真実に基づく物語。

未来を花束にして
イギリス/ 106 分
1.27 公開/配給:ロングライド
mirai-hanataba.com

【 STORY 】 1912 年、ロンドン。劣悪な環境の洗濯工場で働くモードは、同じ職場の夫サニーと 幼い息子ジョージの 3 人で暮らしている。貧しいが 夫はやさしく、あどけないジョージの存在は 彼女の大きな支えだった。
ある日、洗濯物を届ける途中で モードが洋品店のショーウィンドウを のぞき込んでいると、いきなりガラスに石が投げ込まれる。女性参政権運動を展開する WSPU ( 女性社会政治同盟 ) の行動現場にぶつかったのだ。それが彼女と〝 サフラジェット 〟との出会いだった。
同じ頃、女性参政権運動への警察の取り締まりが強化され、アイルランドでテロ対策に辣腕をふるったスティード警部が赴任してくる。彼は 歴史上初となる カメラによる市民監視システムを導入し、無関係だったモードも ターゲットの 1 人として認識されてしまう。やがて モードに 大きな転機が訪れる――。 ( プレス資料より抜粋 )

繊細かつ少々センチメンタルな日本題名が〝 女性映画 〟そのものといったニュアンスを漂わせているものの、実際は相当に骨太で、差別のない社会の実現を 真剣に訴えかけてくる内容です。
原題の『 SUFFRAGETTE 』 ( サフラジェット ) とは 女性参政権論者の中でも過激な活動家を意味し、物語は 主役のモードが サフラジェットに変貌してゆく過程を軸に展開します。

英国のような文化水準の高い国でも、一世紀前には 随分 酷いコトが行われていたものだと驚かされる場面も多く、特に警官による暴力シーンには『 ストーンウォール 』 ( vol.373 ) のそれと重なるところがありました。それでもなお 権利を求めて立ち上がるサフラジェットたちの姿に、観る者は 一様に 心を動かされずにはいられないでしょう。

主役の キャリー・マリガンは、ゴテゴテ趣味に飾り立てられた『 華麗なるギャツビー 』( ’12 ) のデイジー役とは 別人のようで、はかなげな容姿の内に秘めた芯の強さを 説得力を持って好演。その夫役の ベン・ウィショーも『 追憶と、踊りながら 』 ( ’14 ) や『 リリーのすべて 』 ( Vol.330 ) での固定されたに等しいイメージとは全く異質なキャラクターを演じて、これこそが 真の適役と感じさせたから立派です。
また、モードと行動を共にする先輩格のサフラジェットを演ずるのは、ヘレナ・ボナム = カーター、アンヌ = マリー・ダフ、ナタリー・プレス。さらに、WSPU の実在のカリスマ的リーダーには メリル・ストリープが扮しています ( たゞし、ビーフステーキの食べすぎのような雰囲気を 全身から発しているのは いかゞなものかと、僕は 正直に言って感じました ) 。
唖然とさせられたのは ラスト近く、国王の持ち馬も出走するダービー競馬場のシーン。N・プレス演ずるエミリーが、突然「 あきらめずに闘い続けて 」とモードに告げた後、いったい 何を どうするのか……。そこは 特に、まばたきもせずに観ていてください。
監督は、注目の実力派、サラ・ガヴロン。

 

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(C)2016 Gaumont / Mandarin Cinema / Korokoro / M6 Films

フランス史上初の黒人芸人ショコラと、
彼を支え続けた相方の白人芸人フティット。
万人を魅了した彼らの、
愛と涙に満ちた感動の実話。

ショコラ ~ 君がいて、僕がいる ~
フランス/ 119 分/ PG-12
1.21 公開/配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
chocolat-movie.jp

【 STORY 】 20 世紀初頭のフランス。田舎のサーカスで大衆の人気を集めていた白人芸人フティットと黒人芸人ショコラによるコンビは、パリの名門 ヌーヴォー・シルクの専属となり 一世を風靡する。だが 人種差別の根は深く、ショコラは 偏見の目から逃れるように ギャンブルに狂い、堕ちてゆく――。 ( 試写招待状より。一部省略 )

戸籍も持たずに生まれ育ちながら、フランス史上初の黒人芸人としてスターの座に登りつめたショコラと、彼に そのチャンスを与え、支え続けもした白人芸人 フティットの人生模様。華麗なる ベル・エポック期のフランスを舞台に、差別や偏見のない愛情 ( ショコラに対する フティットの 仲間としての愛、及び 上流階級の白人女性 マリーの 女としての愛 )、そして ギャンブルに狂って破滅に向かうショコラの姿が描かれています。
配役は、ショコラ役を『 最強のふたり 』で黒人として初めてセザール賞の最優秀男優賞を獲得した オマール・シー、フティット役を チャップリンの実の孫である ジェームス・ティエレ、マリー役を『 黒いスーツを着た男 』 ( vol.172 ) の クロチルド・エム。監督は、これが 4 作目となる ロシュディ・ゼム。

全篇を興味深く観ましたが、この映画は 重要であるはずの場面を 意図的にサラリと描こうとしているのか、僕の注意力不足のせいなのか、ポイントが十分に表現しきれていないという感を持ちました ( たとえば、不法滞在の罪で逮捕されたショコラが 牢獄の中で知り合って影響を受ける 政治的思想家 ヴィクトールに関する描写や、ショコラが「 植民地博覧会 」の見物中に 突然 パビリオンの中から現れた男に罵られて 激しいショックを受ける場面など ) 。

印象に残ったシーンと 感銘を受けたシーンは、
1 ) 冒頭の 旅回りのデルヴォー座の場面。シルク ( サーカス ) というよりも見せ物小屋的な形体で、トッド・ブラウニングの『 フリークス 』 ( 1932 ) を連想させる雰囲気があったコト。
2 ) ショコラを追って パリまで出て来た デルヴォー座の可愛い踊り子 カミーユが、愛は消えていたと知って 涙ながらに立ち去るシーン。
3 ) ヌーヴォー・シルク座のステージで、芸者に扮したフティットが「 アリガトウ 」と日本語を連発するシーン。その演目の最中に ショコラはフティットを裏切り、コンビは解消となる。
4 ) ひとり寂しく酒場に立ち寄ったフティットが、ブルーボーイ・タイプの若い男娼に誘われる場面。その男娼は『 パリよ、永遠に 』 ( vol.277 ) の一場面で「 今、眼を作っている ( アイメークをしている ) 最中よ 」と応じ、避難指示を無視した高級娼婦よりも はるかに美形 ( 男性として 普通に生きていくのは難しいだろうと想わせるほどの美形 ) 。
5 ) コンビ解消から 6 ~ 7 年後、死期が迫っているショコラを、フティットが 遠路 見舞いに訪れる ボルドーのシーン。かつてのコンビの演技が描かれている「 パラパラ漫画 」を、フティットに差し出すショコラ。それを見るフティットの 表情の変化。
6 ) 最後に映し出される、リュミエール兄弟が 1900 年に手回しカメラで撮影した、本物のフティットとショコラの映像 ( リュミエールとは、映画のカメラと映写機を発明し、1895 年に世界で初めて公開上映した〝 映画の父 〟と呼ばれる兄弟 ) 。

 

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(c)2016 SACHA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

全世界のメール、SNS、通話は、米国政府に監視されていた――。
世界を揺るがした衝撃の実話。

スノーデン
アメリカ、ドイツ、フランス 合作/ 135 分/ PG-12
1.27 公開/配給:ショウゲート
www.snowden-movie.jp

【 STORY 】 それは、まさしく世界中に激震が走った瞬間だった。2013 年 6 月、イギリスのガーディアン紙が報じたスクープで、アメリカ政府が秘密裏に構築した 国際的な監視プログラムの存在が 暴露されたのだ。さらに驚くべきは、大量の最高機密情報を提供したのが たったひとりの NSA ( 米国 国家安全保障局 ) の職員であり、ごく普通の外見をした 29 歳の若者だったことだ。
匿名ではなく 自らカメラの前に立ち、エドワード・スノーデンと名乗って 素性を明かした その青年は、なぜ NSA や CIA から得られる多額の報酬と輝かしいキャリア、恋人と築き上げた幸せな人生のすべてを捨ててまで 重大な告発を決意したのか。はたして彼は英雄なのか、国家の裏切り者なのか。 ( プレス資料より。一部省略 )

アメリカ社会の歴史の真相を描いたら ハリウッド随一と言われている オリバー・ストーン監督が、史上最大の内部告発〝 スノーデン事件 〟の全貌に迫った問題作。

2004 年、対テロ戦争を進める母国アメリカに貢献しようと 軍に志願したスノーデンは、大怪我を負って除隊を余儀なくされる。幸い CIA に採用された彼は ズバ抜けたコンピュータの知識を認められ、07 年に スイス・ジュネーブへ派遣された。しかし そこで目の当たりにしたのは、アメリカ政府が 対テロ諜報活動の名のもと、世界中のメール、チャット、SNS を監視し、膨大な情報を入手している実態だった。やがて NSA の契約スタッフとして 東京の横田基地、ハワイの CIA 工作センターへと赴任。民主主義と個人の自由を揺るがす政府への不信を さらに募らせたスノーデンは、命がけの告発に踏みきる……。
スノーデンが 英雄か 裏切り者かについては、各人の判断に委ねるしかないでしょう。しかし 少くとも彼には、英雄になってやろうという類いの野心は、全くなかったと思います。

本作中、僕が最も映画的だと感じたのは、スノーデンが 大量の情報を小さな USB ( ? ) に収めて 外へ持ち出すシークエンス。互いに手話ができるというコトで親しくなった 若い黒人のスタッフが、それを瞬間的に察して スノーデンの危機を救う場面から、ビルの出口の身体検査ゲートを 如何にして通り抜けるかという件り。演出は強調を避けているようでありながら、この一連の場面は とてもスリリングでした。

スノーデン役の ジョゼフ・ゴードン = レヴィットは 適役を好演 ( 本物のスノーデンと顔の雰囲気も似ている ) 。以下は余談ですが、ひとつ気になったのは、彼の左頬に 枯れたような 目立つ毛穴詰まりがあったコト。ビューティ エキスパートとしては、ホットジェルタイプのクレンジングアイテム & クレイマスクを使わせたいところ……。また、恋人役の シャイリーン・ウッドリーは 美少女から大人の女優への過渡期にあるのですが、カメラの角度によっては 二重アゴに見えるほど 体重を増しています。しかも 角質ケア不足のようで、肌全体が厚くオイリーに見える……。本作のメークアップアーティストは、主演者へのスキンケアに関する努力を怠ったのでしょうか?

 

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(c) 2016 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.

巨悪の最高権力に立ち向かうのは、稀代の悪党 4 人の詐欺師。

民のためなら、国さえ騙す!

キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち
韓国/ 121 分
1.20 公開/配給:CJ Entertainment Japan
kimseondal.jp

【 STORY 】 朝鮮時代。死屍累々の戦場から生き残ったソンダルは、「 一度は死んだ人生。後は自由に楽しむだけ! 」とばかりに、大胆不敵な詐欺を働き続ける。ついには、私利私欲のために民さえも売る絶対権力者との命がけの対決へと発展。〝 誰のものでもない大河を売る 〟前代未聞の計画は、やがて国家をも巻き込む戦いへと繋がっていく。 ( 試写招待状より。一部省略 )

韓国では 誰もが知っているという説話の主人公、キム・ソンダル。その説話の中でのソンダルは 経験豊富な老詐欺師だそうですが、本作では 彼を 若くセクシーな美青年にアレンジして「 全く新しい時代劇エンターテインメントに仕上げた 」とのコト。

テンポが良くてコミカル、というよりも コメディそのものの展開がワリと長く続いた後、清 ( シン ) への上納品の略奪作戦が失敗に帰す辺りから 正統的なタッチへと変調し、大河売却大作戦の実行に至って 迫力が増すという構成。これは 一種の勧善懲悪劇。

キム・ソンダル役のイケメン俳優 ユ・スンホは、今まさに若さの絶頂。本作では変装の名人という設定で、或る時は 余命いくばくもない老人に、また或る時は 男心を惑わす美しい生娘に化けるという変幻自在ぶり。その弟分的存在で 純粋な心の持ち主であるキョン役には K – POP グループ EXO のシウミン ( 映画初出演 ) が抜擢され、愛らしさに加えて熱のこもった演技を披露。ふたりとも、一重まぶたの眼が 感心するほど美しい。
彼らを支えるのは、ベテランの コ・チャンソクと ラ・ミラン。また、悪役 ソン・デリョンを演ずる チョ・ジェヒョンが、強欲の裏に隠された哀れな生い立ちを、漠然とながらも巧みに表現して印象的でした。

情景描写として夢のように美しかったのは、提灯に明かりが点った 境内のような場所で、ソンダルと妓生のキュヨン ( ソ・イェジ ) が待ち合わせするシーン。及び 1388 年の回想 ( 的 ) 場面で、軍隊の一行が 橋のない大河を渡る 暗い夜のロングショット。たゞし、CG 場面には 上出来とは言えない部分が 2 ~ 3 あり、それは少々残念でした。
監督・脚本は『 影の殺人 』の パク・デミン。

 

 

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(個別回答はできかねますのでご了承ください。)

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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