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2016.12.13

【大高博幸さん連載 Vol.372 】 『 こころに剣士を 』『 幸せな ひとりぼっち 』『 皆さま、ごきげんよう 』 試写室便り No.128

エストニアを舞台に、伝説のフェンシング選手と子供たちの絆を描く、〝 実話から生まれた 〟 感動作!自治会のルールは 厳格に守る。他人の車の駐車に いちいち 口を挟む。何かと文句の多いオーヴェは 近所の鼻つまみ者。しかし 家に帰れば 孤独に苛まれて たちまち気が弱くなり、亡き妻の思い出がよみがえり 涙を流す。そんな時、オーヴェの郵便受けに車をぶつけてしまったのが、隣に引っ越してきた 主婦のパルヴァネと その家族。オーヴェは パルヴァネを罵るが、「 車の運転を教えてくれない? 」と言われたら 断れない。悪態は いつしか愛嬌となり、パルヴァネに本音を語りだす――。

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(c) 2015 MAKING MOVIES/KICK FILM GmbH/ALLFILM

エストニアを舞台に、伝説のフェンシング選手と子供たちの絆を描く、
〝 実話から生まれた 〟 感動作!

こころに剣士を
フィンランド、エストニア、ドイツ 合作/ 99 分
12.24 公開/配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
kokoronikenshi.jp

【 STORY 】 1950 年代初頭、エストニア。ソ連の秘密警察に追われる 元フェンシング選手のエンデル ( マルト・アヴァンディ ) は、小学校の体育教師として 田舎町 ハープサルに身を隠す。その町では、子供たちの多くが ソ連の圧政によって 親を奪われていた。
やがてエンデルは 課外授業として フェンシングを教えることになるが、実は 子供が苦手だった。そんなエンデルを変えたのは、学ぶことの喜びにキラキラと輝く子供たちの瞳だった。なかでも 幼い妹たちの面倒を見るマルタと、祖父と二人暮らしのヤーンは、エンデルを父親のように慕うようになる。だが、エンデルに不審を抱いた校長は、秘かに エンデルの身辺調査を始めていた。
そんな時、レニングラードで開かれる全国大会に出たいと 子供たちから せがまれたエンデルは、捕まることを恐れて躊躇うが、子供たちの夢を叶えようと決意する。果たして 彼らを待ち受ける 予想もしない出来事とは? 遂に、子供たちとエンデル それぞれの戦いが始まる――。 ( プレスブックより )

想いがけず、小学生の頃のような 純な気持ちになって、涙 ポロポロ……。観終えて席を立っても 涙腺が締まらず、かなり困りました。これは、逆境にも 決して くじけない剣士の心で 人生を切り開こうとしたフェンシングの元スター選手と、生徒である子供たちとの絆を描いた物語。子供たちを指導するうちに「 逃げ回るだけの人生なんて、もう まっぴらだ 」と覚悟を決めたエンデルと 一所懸命な子供たちの姿に胸を打たれ、勇気づけられもする、実話から生まれた感動作です。

物語の舞台は、かつて滞在したチャイコフスキーが「 ハープサルの想い出 」というピアノ曲を残したコトで有名な エストニアの田舎町 ハープサル。現在では 美しく のどかなリゾート地として ヨーロッパの人々に愛されている町ですが、第二次世界大戦中は ナチス・ドイツに、その末期からは ソ連に占領されていた……。本作は、ヒトラーからスターリンへと支配者が替わった時代の物語。

画面は、ブルーがかった彩度の低いトーンや、柔らかなオレンジベージュの色合いが美しい。また、当時の電話ブース ( 電話局の受付で通話を申し込み、通話時間分の料金を先に支払い、呼ばれたら電話に出て話す。時間になると自動的に切れるという仕組み ) のシーンや、エストニア流 ( ? ) の遠慮深いキスの仕方なども興味をそゝります。

フェンシングの稽古に一所懸命になっている時は、ツラいコトも全て忘れてしまう子供たちの姿。加えて、エンデルを応援する同僚の女性教師、エンデルの親友で 同志でもあったアレクセイの温情、さらに ヤーンの祖父を筆頭とする 町の人々の真情等も、淡々と描かれている割に 強く印象に残りました。勿論、嫉妬深く度量の狭い校長と、その腰巾着教師の 賤しさ・卑しさも……。

敢えて詳しくは書きませんが、クライマックスとなる全国大会のシークエンスでは、二重・三重のスリルが 折り重なるように押し寄せてきます。そこが 映画らしくて、僕は とても好き。さらに、しみじみとしたニュアンスに いじらしいニュアンスが入り混じる ラストのハープサル駅の場面など、監督 ( イングマール・ベルイマンから賞賛の手紙を受け取ったコトがある クラウス・ハロ ) やカメラマンをはじめとする全スタッフ + 出演者たちが 心をひとつにして作っている感じで、とても素直に感動させられました。
教育映画風な趣も少々感じられますが、押しつけがましさは 100 % ありません。大人が観ても、小学校中学年ぐらいからの子供が観ても、感動せずにはいられない作品だと思います。

 

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(C)Tre Vänner Produktion AB. All rights reserved.

きみのおかげで 僕は幸せだった。

オーヴェ、59歳 。
実は優しい? 〝 不機嫌じいさん 〟。

幸せな ひとりぼっち
スウェーデン/ 116 分
12.17 公開/配給:アンプラグド
hitori-movie.com

【 STORY 】 自治会のルールは 厳格に守る。他人の車の駐車に いちいち 口を挟む。何かと文句の多いオーヴェは 近所の鼻つまみ者。しかし 家に帰れば 孤独に苛まれて たちまち気が弱くなり、亡き妻の思い出がよみがえり 涙を流す。そんな時、オーヴェの郵便受けに車をぶつけてしまったのが、隣に引っ越してきた 主婦のパルヴァネと その家族。オーヴェは パルヴァネを罵るが、「 車の運転を教えてくれない? 」と言われたら 断れない。悪態は いつしか愛嬌となり、パルヴァネに本音を語りだす――。かつての彼は 妻を愛する優しい人間だった。ある衝撃の事件のせいで、二人の運命は 大きく変わったのだった。 ( チラシより )

世界的にヒットした愉快な小品『 100 歳の華麗なる冒険 』 ( No.253 ) 、ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いた『 さよなら、人類 』 ( No.297 ) 、ドキュメンタリーとして興行的にも大成功した『 イングリッド・バーグマン / 愛に生きた女優 』 ( No.355 ) と同じく、このところ好調の波に乗っている スウェーデン映画。その新たな注目作です。

原作は、フレドリック・バックマン ( 出版された全ての著書がベストセラーとなっている人気作家。1981 年生まれ ) が 自身の父親をモチーフにして描いた小説で、2015年の Xmas に本国で公開されるやいなや『 スター・ウォーズ / フォースの覚醒 』を抑えて観客動員のトップを独走。しかも 評判が評判を呼び、5 ヶ月を超える異例の大ロングランヒットを記録。さらに ドイツ、ノルウェー、韓国でも好成績を収め、現時点で フランス、アメリカ、ギリシャなど、世界 17 ヶ国での公開が決定しているという、珠玉のヒューマンドラマ。

これは、当連載での僕のコメントを、たとえ 一応でも 信じてくださっている読者の皆さん全員に 心からオススメしたい、僕の 今年度・小品中の ベストワン映画です。愛する妻に先立たれ、職場からは解雇された孤独な主人公 オーヴェ ( 演ずるのは ロルフ・ラスゴード ) の 悲哀・さみしさ・虚しさを、人間味あふれる笑いと見事に融合させた内容で、スウェーデンのアカデミー賞といわれている ゴールデン・ビートル賞の 最優秀主演男優賞、メイクアップ賞、観客賞をトリプル受賞。脚本と監督を担当した ハンネス・ホルムの語り口は、シンプルかつダイレクトで 分かりやすい上に奥深さを感じさせ、登場人物たちのキャラクターも、異国人のパルヴァネ ( バハー・パール ) を筆頭に 、若き日の回想シーンに登場するオーヴェの妻 ソーニャ ( イーダ・エングヴォル ) に至るまで、気持ち良く巧みに描写されています。

この映画の素晴らしさ・価値・詳細については、何かで読んだり調べたりする前に、実際にスクリーンで、あなた自身の眼で 観て、感じて、理解するのが 一番です ( たゞし、hitori-movie.com をクリックして 予告編を観るのは ベツです ) 。決して 華やかでも 夢のような作品でもありませんが、Xmas に最高の〝 愛 〟の映画であるコトを、100 % 保証します。親友、恋人、御家族 等々、気ごころの通じ合った どなたかと、ぜひ 一緒に観てください。
P.S. チラシ ( 右上 ) のオーヴェの顔は、苦虫をツブしたような or 干からびて感性まで請びついているようなイメージですが、スクリーン上では 親近感を抱かせもする、人間味 豊かな、とても いゝ顔をしています。チラシの画像だけで判断しないでいたゞければ、嬉しいです。

 

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(c)Pastorale Productions- Studio 99

寒い冬の後に、花咲く春が やってくるように、
明日は今日よりも 良いことが待っている。

皆さま、ごきげんよう
フランス、ジョージア 合作/ 121 分
12.17 公開/配給:ビターズ・エンド
www.bitters.co.jp/gokigenyou/

【 STORY 】 現代のパリ。アパートの管理人にして武器商人の男。骸骨集めが大好きな人類学者。ふたりは切っても切れない縁で結ばれた悪友同士。そんな彼らを取り巻く ちょっとユニークな住人たち―― 覗きが趣味の警察署長、ローラースケート強盗団、黙々と家を建てる男、没落貴族、気ままに暮らすホームレス、そして、街を闊歩する野良犬たち。そんな中、大掛かりな取り締まりがはじまり、ホームレスたちが追いやられてしまうことに。緊急事態発生! 街の住人たちは立ち上がるが……。 ( プレスブックより。一部省略 )

相当ユニークで風変わりな映画です。フランス革命時のギロチンの場面、どこかの戦場での略奪と蛮行、そして エピソディックに描かれる現代のパリ……。ここに描かれているのは、時代が移り変わっても 同じように繰り返される 人間の営みと社会の不条理……。
監督の 名匠 オタール・イオセリアーニは、D・W・グリフィス監督の一大叙事詩的映画『 イントレランス 』 ( 1916 ) にインスパイアされて 本作の構想を練ったのでは? と僕は感じました。そうかと言うと、現代の街の中の古風な煉瓦の塀が 美しい庭園へと続く魔法の扉に変わる場面など、J・コクトーの名作『 オルフェ 』 ( 1949 ) に相通ずる 不思議な夢のような雰囲気をも醸し出しているのです。

本作は、観る人によっては堪らないほど魅力的な一篇となるはず。たゞ 正直なところ、僕には この映画の意図やユーモアのセンスが、いまひとつ、よく分かりませんでした。
出演者では、武器商人役を演ずるリュファス ( 2001年の大ヒット作『 アメリ 』で、主人公の父親役を演じた男優 ) の洗練されたスマートさが秀逸。また、ひとりで黙々と家を建て続ける男の役の マチュー・アマルリックが、いつになく個性を抑えた演技を見せていて、それが かえって面白く感じられました。

次回の試写便りは、12 月 20 日の配信で、『 ストーンウォール 』『 ミルピエ 』『 ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿 』等について御紹介する予定です。では!

 

 

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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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