お悩み別ケア
2023.7.12

パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na|両親媒性のビタミンC誘導体【美容成分大全】

パルミチン酸アスコルビン酸3Naは、ビタミンC(アスコルビン酸)にリン酸Na(ナトリウム)とパルミチン酸を結合させて安定性を高めた“両親媒性(りょうしんばいせい)ビタミンC誘導体”です。皮膚に吸収されるとパルミチン酸とリン酸Naが効率よく外れてビタミンCとして働きます。1つの分子内に、水となじみやすい部分(水溶性)と油となじみやすい部分(油溶性)をもつ両親媒性であるため、皮膚内に浸透しやすく、浸透後は皮膚内部で広がりやすいことが特徴です。医薬部外品への配合が認められていないため、化粧品にしか配合することができません。過剰につくられてしまったメラニン色素の色を薄くする働きもあります。美白効果以外に毛穴・ニキビへの効果も期待できます。日本化粧品検定協会が美容成分をくわしく解説する【美容成分大全】。成分を正しく理解して、コスメ選びの参考に!

プロフィール

成分名 パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na
表示名称 パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na(医薬部外品には配合されません)(愛称:APPS)
主な配合アイテム クレンジング・洗顔、スキンケア、UVケア、ハンドケア、ヘアケア
成分のはたらき チロシナーゼ活性阻害、メラニンの還元、コラーゲンの産生促進、皮脂分泌抑制、抗酸化
医薬部外品としての効能効果

どんな「効果・働き」があるの?

【両親媒性(水溶性+油溶性)】

水溶性の部分と油溶性の部分を両方もつ両親媒性のビタミンC誘導体です。皮膚への浸透性に優れており、皮膚の深部まで届いて、表皮の角化細胞内へ取り込まれやすいという特徴があります。

  • チロシナーゼ活性阻害
  • メラニンの還元
  • コラーゲンの産生促進
  • 皮脂分泌抑制
  • 抗酸化

美白・シミを予防する

チロシナーゼ活性阻害

シミの元となるメラニンは、表皮の基底層にあるメラノサイトという細胞内でつくられます。メラノサイトの中で、“チロシナーゼ”という酵素がアミノ酸の一種であるチロシンに働きかけることで、黒褐色の色素であるメラニンが生成されます。表皮細胞が紫外線を浴びて刺激を受けると、メラニン生成を促す情報伝達物質が放出され、メラニン生成指令を出します。この指令を受けるとチロシナーゼが活性化され、普段よりもメラニンが過剰につくられるとシミの原因となります。パルミチン酸アスコルビルリン酸3Naは、チロシナーゼの活性を阻害することで、メラニンが過剰につくられるのを抑制し、シミを予防します。

メラニンの還元

シミの元となるメラニンは黒褐色をしています。メラノサイトでつくられたメラニンは表皮角化細胞に受け渡されるため、表皮にある細胞内にも存在しています。これらのメラニンが“還元”されて色が薄くなると、結果的にシミが目立たなくなります。メラニンの還元作用によって、肌のくすみを改善したり、シミを薄くする効果が期待できます。

シワやたるみを改善する

コラーゲンの産生促進

真皮に存在する線維芽細胞は、コラーゲン繊維やエラスチン繊維を産生し、肌にハリや弾力性を与えています。ビタミンCは、コラーゲンの正常な立体構造を形成するために働く鉄イオンを還元することで、コラーゲンの産生を促進します。加齢などによって機能が低下するコラーゲンの産生を促進させることで、シワやたるみの改善などのエイジングケアに役立ちます。

ニキビや毛穴をケアする

皮脂分泌抑制

ビタミンCは炎症を抑えるだけではなく、過剰な皮脂の分泌を抑える働きがあります。ニキビケアや、過剰な皮脂分泌で毛穴が開いてしまった場合のケアにも役立ちます。

抗酸化

ビタミンCは強力な抗酸化作用があり、”フリーラジカル”という活性酸素を消去する働きがあります。

●シミ予防:紫外線を浴びて活性酸素が発生することで、メラニン生成指令物質が放出されます。活性酸素を取り除くことで、メラニン生成指令物質の発生を防ぎ、メラニンの過剰な生成を抑制します。

●シワ予防:活性酸素により、真皮のコラーゲン分解酵素が活性化し、コラーゲンの減少や変質が生じます。活性酸素を取り除くことでコラーゲンの分解を食い止め、シワの発生を予防します。

●毛穴ケア:過剰な皮脂分泌に加え、酸化した皮脂が、毛穴まわりの皮膚に対してダメージを与え、メラニンも増加し、毛穴を目立たせてしまいます。皮脂の酸化を抑え、皮膚へのダメージやメラニン生成を抑制し、毛穴の目立ちを改善します。

●ニキビ予防:皮脂分泌が増え、アクネ菌が毛穴の中で増殖し、さらに活性酸素が発生し、炎症が引き起こされると赤ニキビとなります。活性酸素を取り除くことで炎症が抑えられるため、ニキビを予防につながります。

さらに、抗酸化成分として知られるビタミンEが作用を発揮した後には、酸化されて力を失ったビタミンEを還元して元のビタミンEに戻し、再び抗酸化力を発揮できるようにする作用もあるため、併用すると相乗効果が期待できます。

美容賢者からの「アドバイス」

日本化粧品検定協会代表理事

小西 さやか


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水溶性と油溶性の性質を合わせ持つ「両親媒性」

皮膚の角層はラメラ構造をもっているため、油に溶けやすい“油溶性”の成分の方がバリアを通過しやすく、内部に吸収されやすいとされています。一方、真皮層の水分量は70%ともいわれ、皮膚内に吸収された後は、逆に“水溶性”の成分の方が皮膚内部で広がりやすいとされています。そのため、油溶性と水溶性の性質を合わせもつ“両親媒性”であるパルミチン酸アスコルビルリン酸3Naは、皮膚に吸収されやすいだけでなく皮膚内部にも広がって効果を発揮するため、「進化型ビタミンC誘導体」あるいは「高浸透型ビタミンC誘導体」とよばれています。

新しい成分として、化粧品に配合

パルミチン酸アスコルビルリン酸3Naは、新しいビタミンC誘導体として注目され、多くの化粧品に配合されています。2023年3月現在、医薬部外品への配合が認められた薬用化粧品はありません。

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ビタミンC誘導体の種類一覧

「歴史・由来」その他の雑学

ビタミンCのさまざまな機能は、抗酸化作用によるものです。抗酸化成分は、自らが酸化されることで相手を酸化から守ります。ビタミンCにはその化学構造の中に、抗酸化作用を発揮するところが2カ所あります。化粧品に配合した場合、その部分があることで逆に酸化されやすく安定性が悪くなるというデメリットもあります。そのため、これらをふさぐことで酸化からビタミンC本体を守る誘導体がたくさん開発されています。パルミチン酸アスコルビルリン酸3Naは、水溶性ビタミンC誘導体のアスコルビルリン酸Naにパルミチン酸を結合させることにより、親油性を付与した新しいビタミンC誘導体です。皮膚内で吸収されたパルミチン酸アスコルビルリン酸3Naは、“ホスファターゼ”と“エラスターゼ”の2つの酵素の働きによりビタミンCとなり、さまざまな効果を発揮します。

歴史

1928年にA.Szent がウシ副腎から分離したのが、ビタミンCの発見とされています。また、ほとんど同じ時期にC.G. Kingらによってレモンから分離されビタミンCと同じものであると確認されました。ビタミンCの化学名はアスコルビン酸(ascorbic acid)ですが、これは抗壊血病効果をもつ酸、抗(anti-)、壊血病(scorbutic)、酸(acid)に由来します。1933年には、ライヒシュタインがビタミンCの化学合成に成功しました。化粧品においては、ビタミンCや油溶性にした誘導体(モノステアリン酸アスコルビルやモノパルミチン酸アスコルビル)が1980年以前から医薬部外品の「美白」有効成分として使用されていました。しかし、安定性や効果の面で十分ではなかったことから、1980年代以降に、さまざまな誘導体の開発が盛んに行われました。パルミチン酸アスコルビルリン酸3Naは、すでに販売していたアスコルビルリン酸Naの改良版として昭和電工社により開発され、2005年に市場投入されました。

主な原料の由来

合成

医薬品やサプリメントには?

医薬品や化粧品には使用されません。

注意事項

特にありません。

 

<引用元>
油化学, 34(6), 413-419 (1985)
昭和電工株式会社 Webサイト (アプレシエ®製品情報)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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