塩化ベンザルコニウム|化粧品としての効果は?【美容成分大全】
コンテンツ提供:日本化粧品検定協会
概要
成分名 | 塩化ベンザルコニウム |
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成分の働き | 抗菌、防腐 |
医薬部外品としての効能効果 | 殺菌・消毒、腋臭防止、ニキビ予防、フケ・かゆみ防止 |
表示名称 | 【化粧品】ベンザルコニウムクロリド【医薬部外品】塩化ベンザルコニウム、または塩化ベンザルコニウム液 |
主な配合アイテム | 【化粧品】【医薬部外品】スキンケア・ボディケア |
効能効果・はたらき
「化粧品」に配合したときの働き
- 殺菌・消毒
- 腋臭防止
- ニキビ予防
- フケ、かゆみ防止
- 防腐
医薬部外品に対して、ニキビ予防、腋臭防止、フケ防止、薬用歯磨き類の有効成分として使用されています。
殺菌・消毒
塩化ベンザルコニウムは、細菌の細胞膜のタンパク質を変性させることで細胞膜を破壊したり、細胞膜の機能を不活性化させることで菌の活動を抑え、殺菌作用を発揮すると言われています。
腋臭防止
腋臭や体臭は、主にアポクリン腺から分泌される汗の成分を常在菌がエサとして分解することで発生します。常在菌を殺菌することで、腋臭防止効果があります。
ニキビ予防
毛包内の角化異常により出口付近が狭くなり、分泌される皮脂が毛包内に滞り、毛穴の出口がふさがれた状態が白ニキビです。その結果アクネ菌が増殖し、毛包内で炎症が起きて赤ニキビになってしまいます。塩化ベンザルコニウムは、アクネ菌の繁殖を抑えることでニキビを予防します。また、毛包炎の一種である「背中ニキビ」の原因菌の1つであるマラセチア菌の増殖を抑える効果もあるため、「背中ニキビ」の予防効果も期待できます。
ニキビ予防の医薬部外品の有効成分として、クリーム、乳液、ハンドクリームは0.05%、石けん・洗顔料は0.1%、新指定医薬部外品:0.05%(手指の洗浄消毒)を上限として配合されます。
フケ、かゆみ防止
フケ、かゆみは、頭皮に存在する常在菌が多く繁殖してしまうことが原因の1つです。このような常在菌の増殖を抑えることで、フケ、かゆみを予防します。シャンプー、トリートメントには1%を上限として配合されます。
防腐
化粧品を使用している間に微生物により汚染されて変質してしまうこと(二次汚染)を防ぐ目的で配合することもあります。防腐目的で配合される場合の配合上限は、粘膜に使用される化粧品に0.05%と決められています。
「医薬品」としての効能効果
医薬品や新指定医薬部外品の殺菌製品の有効成分としても使用されています。殺菌作用の範囲はグラム陽性、グラム陰性菌、また芽胞のない細菌、マラセチアなどの真菌類、エンベロープ(脂溶性の外膜)を有するウイルスの一部と幅広く殺菌することが知られています。
「食品、サプリメント」に配合したときの働き
食品工場で使用される器具類の殺菌に使用することはありますが、食品に直接使用することはありません。
注意点
特にありません。
由来・歴史
主な原料の由来
合成
歴史
1935年、サルファ剤の発見者G. Domagk博士が、初めてカチオン型界面活性剤の一種である長鎖アルキル第四級アンモニウム塩に殺菌作用や防腐作用があることを発見しました。これ以降、この種のカチオン型界面活性剤に対する殺菌作用に関する研究が行われ、カチオン型界面活性剤の中では塩化ベンザルコニウムのタイプが最も強い殺菌性をもつことが知られています。
昔から手指・皮膚の消毒、手術時の手術部位の消毒、医療機器の消毒、感染部位の消毒、手術室・病室の消毒などで使われています。水溶液として手指を浸して使用する塩化ベンザルコニウムは、水に溶けると親水基が陰イオンになる(マイナスのイオンをもつ)アニオン型界面活性剤である石けん成分とは逆の、プラスのイオンをもつカチオン型界面活性剤のため、「逆性石けん」とよばれることもあります。
その他成分情報
炭素数が12~14のアルキル鎖を有する第四級アンモニウム塩です。カチオン型界面活性剤に分類されます。幅広い微生物に対して効果があり、殺菌作用も強いのが特徴です。ほぼ無臭で水にもよく溶け、安定性も高く、殺菌剤の中でも刺激性が高くないという長所をもっています。
一方、金属イオンが一緒にある状態では効果が下がってしまいます。これは、カチオン型界面活性剤であることから、水に溶けると親水基の部分が陽イオンになることでタンパク質に吸着しやすくなり、陰イオンをもつ金属イオンと結合してしまうことが原因です。(水に溶けると陰イオンになるアニオン型界面活性剤とも結合してしまうので、塩化ベンザルコニウムの効果も下がってしまいます。)
塩化ベンザルコニウムで手指を殺菌する際には、石けん成分などを十分に洗い流した方が良いでしょう。
またpHの影響を受けやすく、アルカリ性の方が効果が高くなります。同じ仲間の塩化ベンゼトニウムとともに日本薬局方に収載され、医薬品としても長年利用されています。
豆知識
日本化粧品検定協会代表理事:小西 さやか
「新型コロナウイルス対策として手指の消毒にはアルコール(濃度70~95%エタノール)が有効とされていますが、物の消毒に対して塩化ベンザルコニウム0.05%以上配合されているものは、新型コロナウィルスに対しても効果があると報告されています。アルコールに過敏な方は、塩化ベンザルコニウムが配合されたアイテムを使用するとよいでしょう」
小西さやかさんの記事一覧
<引用元>
医薬部外品原料規格2021
油化学, 29(8), 536-542 (1980)
大阪府立衛生研究所報, 47, 47-52 (2009)
日本化粧品技術者会, 化粧品事典, 丸善出版株式会社, p.360
宮地良樹他, 美容皮膚科学 改訂2版, 南山堂, 2009, p.334, 404
小西さやか, 知れば知るほどキレイになれる!美容成分キャラ図鑑, 西東社, 2019, p.132-133
日光ケミカルズ, NIKKOL CA-101, 原料資料
日油株式会社カチオン, M2-100R, 原料資料
厚生労働省 Webサイト(新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ))
吉田製薬株式会社 Webサイト (Y’s Square, 各種消毒薬の特性)
花王株式会社 Webサイト (製品情報)
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。