コスメ業界注目! 行政、企業、大学が連携し「佐賀」でキレイが生まれている?!

みなさん、「佐賀」のイメージって何ですか?自然豊かな土地で、今、コスメティック業界で最も注目されている県なのです!行政、企業、大学が連携して、サステナブルなコスメ開発から最先端アイテムの研究者育成、教育まで、“産官学”が一体となってさまざまなキレイ作りが始まっています。
新たなキレイは“佐賀”で生まれる!
産官学連携の佐賀は日本の「コスメティックバレー」になる!
沖縄を除く九州7県で最も面積が狭く、人口の少ない佐賀県。福岡県と長崎県に挟まれたこの小さな県で今、コスメティック産業が大きな盛り上がりを見せています。そもそもなぜ佐賀でコスメなのでしょう――発端は2012年、フランスにある世界最大級のコスメ産業集積地「コスメティックバレー」の前会長、アルバン・ミュラー氏が、佐賀県唐津市を訪れたことでした。
元々唐津には、化粧品の製造や物流関連の企業が集まる小規模なエリア(現・唐津コスメパーク)がありました。しかも、唐津に限らず佐賀県全体は、豊かな自然環境や化粧品の原料となる良質な資源に恵まれ、地理的にもアジア圏への輸出入に有利。そんな佐賀に魅了されたミュラー氏が「佐賀は日本版のコスメティックバレーになれる」と、唐津市とパートナーシップを結んだことでコスメティック産業を推進する動きが始まったのです。
翌年、自治体と企業、及び大学の研究機関をつなぐ「ジャパン・コスメティックセンター」が唐津に創業。産官学連携で、①佐賀を基点とした北部九州にコスメティック産業を集積させる、②佐賀県を化粧品原料の供給地にすることを目指した「コスメティック構想」を立ち上げました。その後、県庁にコスメティック構想推進グループを創設、国立大学における化粧品分野の人材育成や素材研究を支援しているのも、全国で唯一、佐賀県のみ! 佐賀県産の化粧品原料や商品の全国展開も増える中、「コスメ県」として佐賀が認知される日が着実に近づいています。
佐賀県「コスメティック構想」の歩み
2012 仏・コスメティックバレーの前会長が唐津を訪れ、パートナーシップを結ぶ。
2013 唐津で「ジャパン・コスメティックセンター(JCC)」が創業。産官学連携で「コスメティック構想」を立ち上げる。
2014 県庁に「コスメティック構想推進グループ」(現コスメティック産業推進室)ができる。
2021 佐賀大学に「化粧品科学共同研究講座」を開設。
2024 佐賀大学に「コスメティックサイエンス学環(仮名)」設立を計画。オープンキャンパス開催。
2025 これまでにコスメ関連企業16社を誘致。
産・官・学 連携 SAGAn BEAUTY コスメティック構想
佐賀の自治体、企業、大学が共に目指す「コスメティック構想」は、“SAGAn BEAUTY(サガンビューティ)”をキャッチフレーズに、コスメに関わるすべての人を応援するプロジェクトです
【産】コスメを通して企業をつなぎ、地元産業を活性化
「玄海灘に面した唐津には、以前から化粧品の輸入代行、製造、物流などの企業が集まるエリアがありました。その強みを背景に、『ジャパン・コスメティックセンター(JCC)』が唐津に創設され、県、唐津市、玄海町の自治体や大学と連携しながら佐賀の“コスメティックバレー化”を目指しています。事業の大きな柱は、化粧品に関する国際的な取引の促進と、地元の天然原料や商品の供給による地域活性。JCCは全国の企業や地元の農林漁業者、海外の企業団体などをつなぐコーディネーターや、プロモーターとしての役割を担っています」(藤岡継美さん)
風土と自然に恵まれた「唐津コスメパーク」は、コスメ関連企業5社がひとつの敷地に集まる「コスメティック構想」の始まりの地。
【官】大学の研究推進や人材育成、企業のスタートアップを支援

佐賀県産業労働部 ものづくり産業課 コスメティック産業推進室 室長
東 泰史さん
ひがしやすふみ/佐賀県政策部政策企画監を経て、’24年7月、コスメティック産業推進室室長に就任。
「コスメティック構想の軸となる、コスメ関連企業の誘致やコスメ原料の探索・供給は、県で予算を組み、JCCと連携して行っています。産業クラスター形成を促すために、年に10件程、スタートアップの伴走支援も行います。佐賀大学とは’21年から6年計画で『コスメ技術開発・人材育成拠点整備事業』を展開。大学と県内外のコスメ企業との共同研究講座を設置し、コスメ業界の未来を担う人材の育成を図っています。さらに、コスメティック構想の認知を広げるイベント開催、WebやSNSでの情報発信に、県を上げて取り組んでいます」(東 泰史さん)
「コスメティック産業推進室」の設置からわずか10年で企業の誘致も大幅に進み(16企業)、佐賀県の化粧品の生産額は倍増。
【学】地元素材の研究&製品化をサポート。人材育成も!

佐賀大学 教育研究院理工学系 教授
徳留嘉寛先生
とくどめよしひろ/薬学博士。大手化粧品メーカーの研究所を経て、武蔵野大学、城西大学で教鞭をとる。’21年より佐賀大学(化粧品科学共同研究講座)に着任。
「佐賀大学は教育・研究・社会貢献を使命に、地域社会から期待、信頼される大学を目指しています。私が受けもつ『化粧品科学共同研究講座』は、化粧品科学分野におけるリソースを地域貢献につなげるため、県との連携で作られました。県が資金面でも応援してくれています。原料の科学研究を究めるだけでなく、コスメ業界で活躍し、県を支える人材の育成にも力を入れていきたいです」(徳留嘉寛先生)
OPEN CAMPUS|’26年4月に日本初の「コスメティックサイエンス学環(仮名)」を設置予定
佐賀大学は、国公立大学初となる化粧品科学に特化した学部「コスメティックサイエンス学環(仮称)」の設置を計画中。’24年11月、高校2年生以下を対象にオープンキャンパスが開かれ、全国各地から130名を超える参加者が集まりました。
キレイを作る佐賀の今&未来の挑戦
佐賀発コスメを全国、海外へ展開
自然が豊かな佐賀は農産物や植物が多彩で、コスメの原料に適した素材も豊富。コスメティック構想が進む中、化粧品原料の調達地に佐賀を選ぶ県外のメーカーも増えてきました。一方、佐賀県内のスタートアップ企業からも斬新な化粧品が続々と生まれています。
佐賀の企業が作った個性派コスメ
A スキンケアをしながら肌の色も整える。
三省製薬 IROIKU スキンチューンナップ セラム各18ml ¥2,200
B 明治40年創業の製薬会社発。肌フローラを整える。
大石膏盛堂 Satta オールインワン化粧水 150ml ¥2,480
C ナイアシンアミド配合でシミ・シワ改善。
YOKO・JAPAN GO COSMETICS 薬用リンクルクリームN[医薬部外品]50g ¥4,180
D 天然由来成分100%。
エッセンス スキンハプティクス デリケート オイル セラム 30ml ¥8,910
佐賀の素材を使ったスキンケアコスメ
E 洗い流した後は湯上がりのようなツルスベ肌に。
三省製薬 DERMED ホットジェルパック 80g ¥4,400
F グレープフルーツとレモンのフレッシュな香り。
イグニス サニーサワー ローション 150ml ¥4,400
G 2層が溶け合い、肌も心も健やかに整える。
シンシア・ガーデン ネロリラ ボタニカ インテンシブ ビューティーセラム 32ml ¥8,250
H 保湿力の高いオレイン酸が豊富。
バーズ・プランニング TBK ナチュラルスキンローション 150ml ¥3,850
有明ノリ、白イチゴ、白いキクラゲ…佐賀素材の新たな可能性を探り、製品開発への橋渡し
一次産業が盛んな佐賀県は、化粧品原料としての可能性を秘めた素材の宝庫。「有明ノリ、白イチゴ、白いキクラゲなど、研究心をくすぐる面白い素材が多いです。私の研究は、肌に有効な成分をいかに経皮吸収させて、効果感を高められるかがテーマ。研究成果を学会で発表したり、企業の商品開発へつなげたり…ということを担当しています。佐賀の自然から採取した良質な素材でも、肌に塗ったときに浸透性や安全性が優れていなければ却下。商品につなげるまでには根気が必要です」(徳留先生)
ひとつの素材から多様な成分がとれる
写真はどれも有明ノリから抽出された成分(エキス)。種類ごとに分けて特徴を分析し、肌への親和性などを比較研究する。
分析結果を製品に生かすには、産学連携が必須
「実は化粧品の素材としていい研究結果が出ても、すぐに製品化につながらないケースも多々あります。産学連携で研究機関と製造業との距離をもっと縮めていくことが今後の課題ですね」(徳留先生)
大手化粧品メーカーはコスメの原料を佐賀で栽培
【ACRO】佐賀の「THREE Herb Garden」で育てたハーブを精油に

ACRO THREE ホリスティックリサーチサンタ―
大村しずくさん
おおむらしずく/店頭に立つ美容部員を経て現職に。調香と佐賀県の原料開発を担当し、定期的に唐津を訪れる。


ホリスティックコスメのTHREEがオリジナル原料の栽培地のひとつに選んだのが唐津市と玄海町。「気候特性や乾いた風、水はけの良さが、香料植物の栽培に適しているんです。また、コスメティック構想に取り組む自治体やJCCなど、地元の方々のバックアップ体制も決め手でした。栽培植物の生育調査や定植・収穫など定期的にガーデンを訪れる際も、自治体やJCCをはじめ、育苗家や農家、佐賀大学の皆さんにご協力いただいています」(大村しずくさん)
ハーブガーデンの面積は現在、東京ドーム1/2個分で、今後、倍の広さまで拡大予定。日常の管理は地元の農家が協力。
収穫したローズマリーが精油や香料に
今年から佐賀で収穫したハーブの精油を一部の商品に配合する予定。現在はハーブの品種・株数を増やし追加で定植や収穫を行っている。
【KAO】回収したCO2を活用する「SMART GARDEN」で花卉(かき)栽培
昨年、花王は佐賀市と循環型未来都市を目指して協定を締結。その第一歩が資源を循環利用して植物を育てる「スマートガーデン」です。「まずは市の清掃工場が回収・精製したCO2を植物栽培に利用。CO2が植物の光合成を促すので(実験結果では約20%生長速度アップ)、潤沢に使えるCO2は花卉(かき)の量産に大きく貢献します。次に、水耕栽培の水を循環させて水資源の使用量を削減。さらに使用電力をすべて地熱や水力発電など再生可能エネルギーで賄うことで、CO2の排出も減らせます」(野口雄理さん)
高純度のローマカミツレエキスが『est』にIN!
右から/メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ。潤いに満ちた浄化肌へ。
エスト G. P. セラムイン エマルジョン B[医薬部外品]120g ¥13,200
角層深くまで浸透し、透明感を引き出す。
同 ローション T 140ml ¥13,200
くすみ、シミをカバーして明るい仕上がりに。肌を覆う潤いのクッションがメイクくずれを防ぐ。
エスト ジェリオロジー プライマー B SPF50+・PA+++ 25ml ¥4,950
隣接する清掃工場から出たCO2は高純度に精製され、スマートガーデン内の「エストプラント」に運ばれて植物に供給される。照度や気温などの環境条件は常にモニタリングして管理。
この穴からCO2が噴出
『美的』2025年4月号掲載
撮影/川上輝明(bean Inc.・静物)、上端春菜(bean Inc.・取材) イラスト/別府麻衣 構成/つつみゆかり、有田智子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
ふじおかつぐみ/「からつ大学交流流通センター」勤務を経て、’17年、産学連携を担うべくJCCに入社。