美的GRAND
スキンケアニュース
2025.8.9

エイジングの根源『細胞老化』をを防ぐには?|美的GRAND

この先も元気に美しく生きていくために。シミ、シワ、たるみ…肌の変化を引き起こす要因について知っておきたい。

肌や体の老化の根源「細胞老化」に今、注目が集まっています

肌はもちろん体のすべての細胞は、日々増殖を繰り返し、組織の成長や修復、維持を行っています。しかし、細胞はやがて役目を終えて分裂を停止し、増殖能力を失います。この現象が「細胞老化」で、分裂を止めた細胞は「老化細胞」と呼ばれます。若くても細胞老化は起こりますが、老化細胞ができても体内の自浄作用によって除去されます。しかし年齢を重ねると自浄作用が衰え、老化細胞が蓄積してしまいます。そして、さまざまな炎症性たんぱく質を分泌。周囲の細胞に悪影響を伝播し、さらなる細胞老化を招いてしまうのです。

右)細胞老化は若い肌でも起こるが、できた老化細胞は肌内の特定のたんぱく質によって認識され、表皮基底細胞や真皮のマクロファージの自浄作用によって除去される。
左)加齢した肌は、老化細胞を認識する力が衰えるため、老化細胞が除去されにくい状態に。蓄積した老化細胞がさまざまな炎症性たんぱく質を分泌し、周囲の細胞に伝播して、さらなる細胞老化を引き起こす原因となる。
(イラスト提供/メナード)


右)老化細胞が除去されやすく、健やかな状態。
左)3角形で指した部分が老化細胞。表皮にも真皮にも存在。
(画像提供/メナード)

老化細胞にまつわるQ&A

Q. 疾病にも関係がある話?

加齢した体内に蓄積する老化細胞が分泌する炎症性たんぱく質が慢性炎症を引き起こし、それが加齢によるさまざまな疾患の原因になることが近年注目されています。肌のエイジングと老化細胞との関わりは、この疾病のメカニズムに着目して各メーカーが研究を始めたものです。

Q. 細胞老化を促す要因は?

細胞は種類に応じて分裂できる回数が決まっているとされ、その回数を終えると増殖能力を失って老化細胞になります。さらに最近では、酸化ストレスなどが細胞老化を加速させることもわかってきています。

Q. 老化細胞による炎症は見た目にわかる?

老化細胞が分泌する炎症性たんぱく質による、肌内部の微弱な炎症は、日焼けによるほてりや接触性皮膚炎、ストレスによる肌あれなどといった見た目にわかる炎症とは異なります。周辺の細胞へ、慢性的に悪影響を与え続けている状態で、その微弱な炎症自体を自覚できるサインはありません。

Q. 「SASP因子」とは?

細胞老化にまつわる美容の記事で「SASP因子」という言葉を目にしたことがある人もいるかもしれません。これは、老化細胞が分泌する炎症性たんぱく質などの総称です。

細胞老化や老化細胞による悪影響を防ぐために。化粧品会社の研究も進んでいる!

【資生堂】ボストンの皮膚科学研究所との共同研究により、老化細胞を除去する新メカニズムを見いだした

資生堂は米国ボストンにあるマサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所と、30年以上前から肌の免疫機能に関する研究に取り組んでいます。その過程で、長寿の人に多いとされる免疫細胞の一種が老化細胞内で活性化したウイルスを認識し、選択的に除去していることを世界で初めて発見。スキンケアの未来に大きな影響を与えそうです。


老化細胞内で活性化した「HCMV」というウイルスを、免疫細胞の一種であり健康長寿の人が多くもつ「CD4 CTL」が認識し、老化細胞を選択的に除去。健康寿命を延ばすカギともなりうる大きな発見。(イラスト提供/資生堂)


正常な細胞と老化細胞を、ヒトの皮膚から分離した免疫細胞と一緒に培養し、免疫細胞の一種「CD4 CTL」によって老化細胞が選択的に除去されることを確認。(画像提供/資生堂)

【メナード】愛知県の大学と老化細胞の共同研究を行い、新知見を発表し続けている

メナードは、本拠地である愛知県にある藤田医科大学と、20年以上皮膚の基礎研究を共同で行っています。これまでに、表皮と真皮それぞれにおける老化細胞の除去メカニズムや、皮膚の老化細胞の蓄積は30歳頃から加速していく、などの研究成果を発表してきました。2023年には、老化細胞から分泌される2種のたんぱく質が肌の再生を阻害することを発見。


老化細胞が分泌する炎症性たんぱく質の中に、メナードが長年研究を進めてきた「幹細胞」に悪影響を及ぼす物質が存在するのではないかと考えて研究を進めたところ、2種のたんぱく質に幹細胞の増殖と分化を抑える働きを発見。つまり老化細胞が、幹細胞による肌の再生を阻害する一因になる。(イラスト提供/メナード)

【ファンケル】インナーケアで老化細胞の除去を促す植物由来成分を新発見

化粧品だけでなくインナーケアの研究でも注目されているファンケル。体内に蓄積する老化細胞にアプローチする物質を探索する中で、バラ科のキンミズヒキという植物に含まれるポリフェノールの一種に、老化細胞を除去する作用を発見。摂取により人の血液中の老化細胞が減少したというデータと共に今年発表し、美容・健康業界で大きな話題を呼んでいます。


キンミズヒキとは、龍牙草や仙鶴草とも呼ばれ、中国医学でも伝統的に使用されているバラ科の食品素材。(画像提供/ファンケル)

長い人生を健康で美しくあり続けるために知っておきたい研究

WHOの2025年の発表によると、世界185か国の平均寿命は71・4歳だそうです。ちなみに日本女性の場合、厚生労働省が2024年に発表したデータで87・14歳。グラン世代はようやく人生折り返し地点の付近にいます。

誰もがひょっとしたら100年生きるかもしれない時代、健康で自由に過ごせる時間を少しでも長くという願いから、近年研究が進んでいる分野が「細胞老化」。人の体は何十兆個という細胞の集合体で、体内では常に新しい細胞が生まれており、老化して役目を終えた細胞は除去されていきます。この入れ替わりがスローダウンし、さらに役目を終えた「老化細胞」が除去されず体内に蓄積すると、周囲の細胞や組織にも悪影響を及ぼして、それが老化や疾病につながる。このメカニズムの詳細が解明され、老化細胞による悪影響を抑える、さらには老化細胞を除去する、などのアプローチが盛んに研究されています。

ビューティのサイエンスは医療と密接な関係にあり、スキンケアの記事でも「細胞の老化」や「老化細胞」という言葉を目にしたことがある人も多いと思います。体で起きていることは、同じように肌の表皮でも真皮でも起きています。これまでのシミやシワ、たるみといった見た目にわかるエイジングの現象をケアする研究とは異なり、細胞老化にアプローチする化粧品会社の新たなサイエンスは、エイジングケアの根幹。長い人生、健康なだけでなく美しくもあり続けたいと願う欲張りなグラン世代なら、ここで一度理解を深めておくのが得策です。

\こちらもチェック!/
『細胞老化』防止&除去コスメで、肌の経年美化を促そう サプリメントや生活習慣で、老化細胞をため込まない体に!

『美的GRAND』2025夏号掲載
構成/大塚真里

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

この記事をシェアする

twitter LINE Threads

関連記事を読む

あなたにおすすめの記事