おまえ女子の味方する気かよ【中年男性、トキメキ美容沼へ vol.19】

こんにちは、ライターの伊藤聡と申します。私は男性のためのスキンケア本『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました』(平凡社)を出しました。みなさんは、スキンケアに興味がありますか。スキンケアという言葉から、どんなことをイメージしますか? こちらの連載では、スキンケアに親しんでいく上で役に立つかもしれないあれこれをテーマに書いていきます。トライしてみれば楽しくて奥が深い、スキンケアの世界を一緒に探求していきましょう。
親切は下心?
『ちびまる子ちゃん』の原作マンガ(7巻)に、クラスの男子と女子が激しい抗争を繰り広げる回があります。読めばたちまち小学校時代の記憶が鮮明によみがえってくる『ちびまる子ちゃん』ですが、この回は特に忘れがたい内容でした。同級生の男子がある悪いことをして、それをまる子が学級会で指摘したことをきっかけに関係が悪化、男子が報復を開始するというあらすじです。告げ口に腹を立て、女子にあれこれと嫌がらせする男子。困った女子は学級委員長の丸尾君に相談し、嫌がらせをやめるよう丸尾君経由で男子に伝えてもらうのですが、男子は話を聞くどころか、説得を買って出た丸尾君をからかってこう言い返すのです。「なんだよ、おまえ女子の味方する気かよ」「こいつ女たらしじゃねェのか」「スバリ女にモテたいでしょう」。丸尾君は顔を真っ赤にして怒り、和平交渉はあえなく決裂。まる子のクラスは男女が分断され、公園の砂場を戦場とする全面抗争へと突入していくのでした……。
こうした展開を見ながら、複雑な気持ちになった私です。いやこれ、本当によくあるんですよ。男性が女性に迷惑をかける状況はたくさんあって、同じ男性として「さすがに見てられない」と思うわけですが、そこで男性が、同性である男性の行動をたしなめると、かならず「こいつ女たらしじゃねェのか」「スバリ女にモテたいでしょう」という反応が、毎回セットのように返ってくるのです。例外はありません。ビヨンセが旅行に出かけるとき、横にかならずジェイ・Zがいるように、女性にわけへだてなく親切な態度を取ろうとする男性は、かならず「下心あり」の扱いをされます。このように幼稚な物言いをするのは、『ちびまる子ちゃん』に出てくる昭和49年の小3男子だけではなく、令和7年の成人男性でも変わらないのですから、このままだと人類は永遠に進歩できないのではと悲観的になってしまいます。
見返りを求めない善意
もうすっかり大人になり、区民税を支払ったり、積み立てNISAをしているような成人男性が、「女の味方なんかしやがって、あわよくばワンチャン狙ってるのか」などと平気で言ってくるのですからたまりません。個人的な印象ですが、思ったより多くの男性が「困っている女性を助けようとしたり、女性の立場から発言しようとする男性」にうっすらとした嫌悪を抱いているように感じます。そういう軟弱な態度を取る男性は信用ならない、なにか裏があるはずだと警戒する傾向があるのです。これはいったいなぜでしょうか。かくいう私はジェンダーに関する文章を書くことが多いのですが、記事を通して男性のふるまいをたしなめるたびに「そこまでして女にモテたいのか」「立派なこと言ってる風だけど下心がみえみえだぞ」などと言われ続け、いまでは自分は丸尾君の生まれ変わりだという気がしています。こうした揶揄をする男性は、自分が小3の思考から脱却できていないことを自覚しているのでしょうか。それともまだ子ども気分が抜け切らず、近所の駄菓子屋で買ったビックリマンチョコのシールだけを取って、チョコを捨てたりしているのでしょうか。
なぜこのような物言いはなくならないのか、私なりにその理由を考えてみますと、まずなにより「男女間で、純粋な善意や見返りを求めない協力が成立するはずがない」という男性側の思い込みが挙げられそうです。なんの見返りもなしに、つまりは恋愛関係や性行為といったリターンなしに、男性が女性に親切にするわけがないと、少なくない男性が思っています。だからこそ「単なる親切」が、どこかいびつなものに見えてしまうのではないでしょうか。この男性心理を別の面から見れば、リターンのない純粋な親切は「お人好し」「無害ないい人」の証明であり、ある種の男性はそのポジションに陥ることを極端に嫌がります。「いい人は、どうでもいい人」という言葉がなにより怖い男性は、なんとしても爪痕を残さねばと躍起になって、気がつけば「チョイ悪オヤジ」を目指していたりするのです。男たるもの、少し悪いくらいがちょうどいいというわけです。個人的に、無害さは女性に迷惑をかけないのだから理想的ではと思うのですが、多くの男性にとって「無害な人」と思われることほどみっともない状態はありません。つまり、男性から女性へ向けてなんらかの行動を起こす場合、それに見合ったリターンを取れないのは、男として恥ずべきことなのです。
思いやりでつながる友情関係を
書いていて情けなくなってきました。いずれにせよ「男性は女性からなにかを奪う必要がある」という固定観念があるような気がしてなりません。女性と関わる以上、性行為や特別な好意、男性への奉仕といったかたちで、相手からなんらかのリターンを取ろうとします。なにかを奪うって、山賊や追いはぎの考え方です。野蛮すぎてついていけません。そう考えると「スバリ女にモテたいでしょう」とは、その男性本人の自己紹介のようなものにも思えてきますね。「自分は下心なしで女性へ親切にするなどあり得ない、だからこそオマエだって同じはずだ」という投影があるような気がしてなりません。しかし、このような考え方では幸福になれないと思います。他人に親切にするというのはそれだけで気分がいいものですし、性別にかかわらず、親切でつながる友情関係は長く続いていく可能性が高いように思います。ただ単に親切にする、ということはごく普通にあり得るし、なにもおかしくはないのです。もう大人なのですから、小3の男子みたいな考え方はもうやめませんか。
さて、人間関係や女性への親切にリターンを求めるのは下品ですが、スキンケア製品はリターンを期待してもまったく問題のない、楽しい製品ばかりです。「これを使えば肌がキレイになるのでは」という下心にも、結果で応えてくれます。スキンケアほど結果が出やすいジャンルはありません。ぜひ、期待を胸にチャレンジしてみてください。SUQQUの「クリアリング スクラブ」は、肌のきらめきを取り戻してくれるスグレモノの洗顔料。ジャータイプの容器のフタを開ければ、さわやかな香りがただよってきます。スクラブ状の洗顔料を手に取って泡立てて使用すれば、古い角質や余分な皮脂がスッキリと取れた上に、洗い上がりもつっぱらずにしっとりとした感触に仕上がります。きらめく肌になれば、女性に親切にしたいという気持ちだって湧いてくるかもしれません。親切心を大切に、まわりの人びとと豊かな人間関係を作っていきましょう。ワンチャン狙うのは、スキンケアだけにしておきましょうね。

イラスト/green K
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